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[SEM20-17] Réunion正磁極亜帯周辺における古地磁気変動記録の復元
キーワード:古地磁気学、レユニオン、極性反転
千葉県房総半島南端地域には,上部鮮新統から下部更新統の千倉層群が分布している.千倉層群は海溝陸側斜面堆積盆を充填した海成層である. 岡田ほか(2012)では同層群の布良層及び南朝夷層において古地磁気・酸素同位体層序の構築を行った.その結果,約2.3~3.5Ma間での連続した古地磁気・酸素同位体記録を得ることができた.本研究ルート最下部及び,岡田ほか(2012)での研究ルート最上部に対比可能なテフラを狭在しているため,本研究ルートの年代が2.3Ma以降であることがわかっている.そこで我々は,布良層及び同層群最上部である畑層を対象に,年代モデルとして酸素同位体曲線を用いた古地磁気変動記録の復元を試みた.その結果,松山逆磁極帯中のRéunion正磁極亜帯上下境界及びOlduvai正磁極亜帯下部境界に相当すると考えられる層準を検出した.Réunion正磁極亜期に関しては,複数の正磁極亜期から構成されているという報告もある.そこで,より詳細にRéunion正磁極亜帯を含むその周辺における古地磁気変動記録を復元したので,その結果を報告する.古地磁気学的測定用試料として層厚間隔が約1~4mになるように, 3本ずつのミニコアを採取した.そして,Reunion正磁極亜帯上下反転境界を記録している層準付近では,層厚間隔が約10cmになるように1本ずつのミニコアを採取し, 古地磁気学的測定を行った.また,酸素同位体用の試料を同層準において採取した. 古地磁気測定として,段階交流消磁(5mTごと5~80mTまで)と段階熱消磁(50℃ごと150~600℃まで)及びそれらを組み合わせた消磁(250℃+5~80mT)を行った.その結果,組み合わせ消磁法のみで逆転テストを通過し,初生的な磁化を抽出することが出来ることが分かった.算出した松山逆磁極帯中の平均磁化方位の偏角は, 11.1(±5.7) °の東偏を示した.千倉・豊房両層群において,構造回転の結果,古地磁気偏角が東偏を示すと報告されている(小竹ほか,1995).本研究結果においても,磁化獲得後の構造回転を示すと考え,得られた偏角を平均偏角を基準に補正した.その結果,VGP緯度が0°を超えた時点で逆転と定義すると、層厚間隔約4.7m においてRéunion正磁極亜帯を検出することができた.また,その間にエクスカーションと考えられる変動を検出した.本ルートにおいて,その周辺に削剥面が認められないことから,本研究では,Réunion正磁極亜期は単一の正磁極亜期から構成されていると判断した. 極性反転中のVGP経路を見ると, 下部境界においてアフリカ大陸を通過,上部境界において南アメリカ大陸南部に滞在している.また,間のエクスカーションは東アジアに滞在している.ODP Site 981 (Channell et al.,2003) により報告されている同極性反転境界中のVGP経路と比較すると,本研究結果とは異なる経路を示したが,両者ともVGP卓越経度帯を通過しているという共通点を認めることができた.今後は,Olduvai正磁極亜帯下部境界においても詳細に地磁気変動を復元していく.参考文献岡田 ほか, 2012, 地質学雑誌, 118, 97–108.小竹 ほか, 1995, 地質学雑誌, 101, 515-531.Channell et al., 2003, Earth Planet. Sci. Letters, 215, 1-12.