[SMP44-P06] 温度可変AFMその場観察法による10−40℃でのbariteの結晶成長ナノスケール解析
キーワード:重晶石、結晶成長、原子間力顕微鏡
bariteは地球で最も豊富なBa鉱物であり、その生成と溶解作用は地球の表層水におけるBaの地球化学的サイクルをコントロールする。また、Baイオンと放射性元素であるRaイオンはイオン半径と電気陰性度が似ているので、bariteの成長・溶解はRaイオンの挙動にも影響を及ぼす。bariteは、主要なスケール鉱物でもあり、水に対するその著しい低溶解度(Ksp = 10-9.99 at 25°C)のため、石油、ガス、水などの生産システムにとってやっかいな鉱物とされている。このようにバライトの結晶成長と溶解に関する反応過程、成長速度、成長機構を明らかにすることは重要である。ただし、バライトの結晶成長の詳細については不明な点が多い。一般に、鉱物の成長は顕微的な表面形状に支配される。したがって、結晶成長の詳細を理解するためには、成長反応を顕微的に捉える必要がある。これには原子間力顕微鏡(AFM)その場観察法が有効である。ただし、この方法は、特に、室温以下の低温条件でのその場観察が難しいという問題点があって、そのような条件での結晶成長その場観察に関する研究が遅れている。以上のような重要性や問題点を踏まえて、我々は、新しいAFM走査法である温度可変AFM法を用いて、barite(001)表面で起こる結晶成長のその場観察を10℃から40℃までの溶液温度条件で試みた。ここでは、これまでに得られた結果を報告する。
barite試料は、アメリカ・コロラド州ストーンヘム鉱床産で、やや青みがかった透明の結晶である。AFM実験開始直前にナイフで新たな(001)劈開面を露出させ、AFM試料台に固定した。BaSO4過飽和溶液もまた、AFM観察直前に、分析用高純度Na2SO4 およびBa(NO3)2 試薬と純水により調整した。過飽和度は、プログロムソフトPHREEQCにより計算した。 AFM観察は、Digital Instruments社製のMultimode SPMユニットを搭載したNanoscope IIIで行った。結晶成長実験は Bruker AXS社製のair/fluid heater/coolerを搭載した液中セルを用いてフロースルー法で行い、溶液をシリンジポンプで約0.6 ml/hの流速で流した。実験温度は10(±0.3)、25(±0.2)、40(±0.3)℃で、温度制御はBio-HeaterとThermal Applications Controllerで行い、また、液中セル内にセットした熱電対温度計(Cole Parmer社製)で溶液温度を監視した。走査法はコンタクト・モードを用い、カンチレバーはSi3N4製、スキャナーは温度可変対応J-headを用い、走査速度は1〜4 Hzを選択した。
各温度における異なる過飽和度溶液でのバライト(001)表面の成長機構は、主にラセン転位点から形成される菱形のスパイラル成長丘と半層分の高さを持つ[120]方向のステップと[010]方向に接する湾曲ステップからなる扇形の二次元核の各成長機構で特徴付けられる。両者は、その成長速度に異方性を持つことも確認された。
バライト(001)表面で起こる結晶成長の速度則は、結晶方位と成長機構によって異なる。 [uv0]方向の成長に関しては、スパイラル成長丘上の極めて狭いステップ間隔を持つ平行ステップの前進速度は過飽和度指数の二乗に比例する。それに対して、二次元核の二つのステップは、過飽和度指数に比例する。一方、[001]方向の成長に関しては、スパイラル成長丘の成長速度が過飽和度指数に比例するのに対し、二次元核の成長速度は高過飽和度条件で指数関数的に増加するような速度則を示した。また、10℃実験を除けば、二次元核の核生成速度の過飽和度依存性は成長速度と同様に指数関数的であった。
バライトの結晶成長機構・速度に対する温度変化の影響については、以下の二つのことが明らかとなった。一つ目は、主要結晶成長機構の変化が起こる臨界過飽和度及びその時の成長速度が、溶液温度の低下とともに減少することである。最も低い温度条件の10℃実験では、主要成長機構が二次元核成長機構から付着成長機構に変化する第2臨界過飽和度が確認できるほど、両者が低下した可能性を指摘する。二つ目は、結晶成長機構の変化の影響が少ない低過飽和度条件(Si ≤ 3)では、[uv0]方向のステップの前進速度の温度依存性が確認でき、同じ過飽和度条件では、溶液温度が高いほどステップの前進速度が大きくなることを突き止めた。また、それらの反応に対する活性化エネルギーを決定し、単独で存在するステップの前進と後退反応の活性化エネルギーがほぼ等しいことも解った。
barite試料は、アメリカ・コロラド州ストーンヘム鉱床産で、やや青みがかった透明の結晶である。AFM実験開始直前にナイフで新たな(001)劈開面を露出させ、AFM試料台に固定した。BaSO4過飽和溶液もまた、AFM観察直前に、分析用高純度Na2SO4 およびBa(NO3)2 試薬と純水により調整した。過飽和度は、プログロムソフトPHREEQCにより計算した。 AFM観察は、Digital Instruments社製のMultimode SPMユニットを搭載したNanoscope IIIで行った。結晶成長実験は Bruker AXS社製のair/fluid heater/coolerを搭載した液中セルを用いてフロースルー法で行い、溶液をシリンジポンプで約0.6 ml/hの流速で流した。実験温度は10(±0.3)、25(±0.2)、40(±0.3)℃で、温度制御はBio-HeaterとThermal Applications Controllerで行い、また、液中セル内にセットした熱電対温度計(Cole Parmer社製)で溶液温度を監視した。走査法はコンタクト・モードを用い、カンチレバーはSi3N4製、スキャナーは温度可変対応J-headを用い、走査速度は1〜4 Hzを選択した。
各温度における異なる過飽和度溶液でのバライト(001)表面の成長機構は、主にラセン転位点から形成される菱形のスパイラル成長丘と半層分の高さを持つ[120]方向のステップと[010]方向に接する湾曲ステップからなる扇形の二次元核の各成長機構で特徴付けられる。両者は、その成長速度に異方性を持つことも確認された。
バライト(001)表面で起こる結晶成長の速度則は、結晶方位と成長機構によって異なる。 [uv0]方向の成長に関しては、スパイラル成長丘上の極めて狭いステップ間隔を持つ平行ステップの前進速度は過飽和度指数の二乗に比例する。それに対して、二次元核の二つのステップは、過飽和度指数に比例する。一方、[001]方向の成長に関しては、スパイラル成長丘の成長速度が過飽和度指数に比例するのに対し、二次元核の成長速度は高過飽和度条件で指数関数的に増加するような速度則を示した。また、10℃実験を除けば、二次元核の核生成速度の過飽和度依存性は成長速度と同様に指数関数的であった。
バライトの結晶成長機構・速度に対する温度変化の影響については、以下の二つのことが明らかとなった。一つ目は、主要結晶成長機構の変化が起こる臨界過飽和度及びその時の成長速度が、溶液温度の低下とともに減少することである。最も低い温度条件の10℃実験では、主要成長機構が二次元核成長機構から付着成長機構に変化する第2臨界過飽和度が確認できるほど、両者が低下した可能性を指摘する。二つ目は、結晶成長機構の変化の影響が少ない低過飽和度条件(Si ≤ 3)では、[uv0]方向のステップの前進速度の温度依存性が確認でき、同じ過飽和度条件では、溶液温度が高いほどステップの前進速度が大きくなることを突き止めた。また、それらの反応に対する活性化エネルギーを決定し、単独で存在するステップの前進と後退反応の活性化エネルギーがほぼ等しいことも解った。