JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS04] [EE] Subduction zone dynamics from regular earthquakes through slow earthquakes to creep

2017年5月24日(水) 10:45 〜 12:15 A10 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:金川 久一(千葉大学大学院理学研究科)、小原 一成(東京大学地震研究所)、Demian M Saffer(Pennsylvania State University)、Wallace Laura(University of Texas Institute for Geophysics)、座長:望月 公廣(東京大学地震研究所)、座長:Saffer Demian(Department of Geosciences, Pennsylvania State University)

11:15 〜 11:30

[SSS04-09] 3D地震探査データリフォームによる新たな地震発生帯浅部活構造の描出

*木下 正高1,2白石 和也2Moore Greg3山田 泰広2木村 学4 (1.東京大学地震研究所、2.海洋研究開発機構、3.ハワイ大学、4.東京海洋大学)

キーワード:Nankai Trough seismogenic zone, IODP, 3D seismic survey

南海トラフ地震発生帯の固着域および付加体内部の詳細な地質構造を理解するために,地下の構造探査は欠かせない.ライザー掘削により固着域からの断層資料採取と地震準備状況の原位置モニタリングが計画されているが,孔というピンポイントの情報を100㎞におよぶ固着域・あるいは沈み込み帯wedgeに拡張するためには,断層当の反射面の形状や音響特性,その周囲の正確なVp構造が必要である.
2006年にCDEXが主体となって日米協力の下,熊野沖南海トラフにおいて三次元マルチチャンネル地震探査データを取得した.しかしながら,ストリーマー長が4.5㎞と限定(ライザー掘削サイトでは固着域までの深度が海面下7㎞)されていたこと,黒潮によりストリーマーが下流に流されたこと等の困難により,当時の解析結果からは深部反射面形状,特に外縁隆起帯下でデコルマや分岐断層がどこにあり,どうつながっているのか,明瞭に特定できなかった.また速度モデルにも恣意性があり断層までの深度に不確定性が残った.
そこで掘削ターゲットとなる深部高構造を明瞭化するため、最新技術を用いた解析を行った(詳細は2016年AGUおよび本大会で白石ほかの発表を参照).ゴーストや多重反射の除去等により,浅部から深部まで明瞭な反射断面イメージが得られた.新たに得られた3D速度構造と合わせて,これまでとは大きく異なる特徴が明らかになってきた.現時点ではデータが処理業者から届いたばかりであるので,今後の検討を待つものであるが,3Dデータ全体を俯瞰して気づいた点は以下の通りである.
付加体浅部の変形構造が明瞭に描像された(分岐断層が浅部で枝分かれする様子,下部四国海盆堆積物と思われる層が衝上する様子.BSRなど).
Parkらにより指摘された,前弧斜面下の下部四国海盆層の低速度構造が確認されるとともに,デコルマより上に反射面が所々確認された.
熊野海盆下の南東端では,分岐断層の形状が南東側にくぼんでいる.その直上に5km/s超の高速度帯が厚さ1㎞にわたって存在する可能性があり,それは分岐断層下の低速度層(4km/s以下)と対比をなすようである.分岐断層の形状とその上の高速度ゾーンとの間に何等かの関連があると推測される.
3次元構造が得られたことで,プレート沈み込みダイナミクスや堆積物の圧密構造・熱水理構造の推定に重要な示唆を与えると期待される.
速度構造の信頼性評価は今後も継続して行うが,今回の速度モデルによれば,C0002下の分岐断層までの深度は海底下5200m程度と見積もられる.一方 3500mbsfあたりから,陸側傾斜の反射面が数層検出される.多重反射等ノイズの可能性は今後も検討する必要があるが,3000mbsf付近の無構造とは明瞭に異なる特徴であり,5km/sを超える高速度と合わせて,固着域の歪分配などの性質を推定する重要な情報を与えるものと期待される.