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[SSS10-10] 過去20年間のGNSSデータに基づく西南日本の上下速度プロファイルと速度変化の有意性
キーワード:上下速度
GNSS(Global Nvigation Satellite System 全地球航法衛星システム)の観測は,地殻変動の研究において大きな役割を果たしている.GNSSを用いて観測された地殻変動から,地震の断層運動や震源メカニズムが解明されており,火山活動に伴う地殻変動は火山防災にも寄与している.またプレート境界地域に置ける歪の蓄積を表す地震間地殻変動は,プレート間の力学的な結合(カップリング)に関する情報を与えてくれる.しかしそれらの研究成果の多くは,地殻変動のうち主に水平成分の解析に基づいており,本来3次元的情報であるGNSSの観測量の全てを有効に利用できていない.これは上下成分が水平成分と比べて信号対雑音比が低いためである.プレート境界領域では,地殻変動の水平成分が剛体プレートの動きとプレート間カップリングの双方を含むのに対して,上下成分には後者の情報のみが含まれており,プレート間カップリングの議論をする上で扱いやすい.Aoki and Scholz (2003)は1996ー1999の3年間のデータを用いて日本列島の地殻上下変動を解析しているが,我が国のGNSS連続観測システムGEONET(GNSS Earth Observation Network)ではすでに20年を越える期間のデータが蓄積しており,長期のデータにより上下速度が高精度で推定できる.本研究では,1996ー2016の局位置の時系列データを用いて,地殻上下速度の推定した.特に、西南日本の室戸岬から隠岐諸島にかけて得られた上下速度のプロファイルを用いて,西南日本のプレート間カップリングについて解析を行った.その結果を用いて,南海トラフのフィリピン海プレート上面を五つのセグメントに分け,それぞれのカップリング係数を推定した.2011年東北沖地震の数年前から日本海溝におけるプレート間カップリングが段階的に弱くなっていたことが知られており,また粘弾性効果によって島弧の地殻変動が地震サイクルの位相に依存するという古典的な研究もある.南海トラフはフィリピン海プレートが沈み込むプレート境界であるが,そこを震源域とする超巨大地震が,数年から数十年以内に発生することが予想されている.本研究では,上下位置を時間の二次式でモデル化することにより,カップリングの時間変化の有無を議論した.南海トラフに近いGNSS局は沈降,少し離れたGNSS局は隆起を示すが,カップリングの時間変化があればそれらの局に現れる加速度の大きさや符号は様々になるはずである.一方,加速度が単に基準点の動きによる見かけのものであれば,二次の項はすべての局に一様な値として現れる.本研究では,GNSS局の上下の動きに関し,推定された一次のトレンドと二次の加速度成分の関係から,時間の二次の項が実際の変化なのか見かけの変化なのかを検証した.その結果,基準点の動きによる可能性が高いという結論を得た.