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[SSS12-11] 平成28年(2016年)熊本地震において新たな干渉SAR解析によって見出された地表変状
キーワード:2016年熊本地震、干渉SAR、地表地震断層、コヒーレンス、だいち2号
合成開口レーダの干渉SAR解析による干渉縞画像を使用することで,内陸直下型地震によって生じる広域の地殻変動が把握することができるようになってきた(例えば,雨貝ほか,2008).また,干渉SAR解析による干渉位相の不連続と,現地調査によって確認された地表変位とをあわせて地表地震断層の検討がなされるようになってきた(例えば,中埜ほか,2015).
私たちは,干渉SARによる干渉縞,低コヒーレンス値分布図,およびDEMデータによる傾斜量図を重ねることにより,地表地震断層を検出する手法を提案してきた(三五ほか,2016,小俣ほか,2016).この手法を用いると,干渉縞による広域の地殻変動とあわせて,干渉縞の位相不連続位置と低コヒーレンス値を示す位置との一致から地表地震断層が検出可能となる.低コヒーレンス値が連続するにも関わらず干渉縞に不連続が生じていない位置では,地表地震断層ではない地表変状が生じている可能性があり,その位置が傾斜地であれば地すべりや崩壊,平坦地であれば液状化等の地盤変状の可能性が考えられる.
今回,平成28年(2016年)熊本地震の震源域で検討を行った.干渉SAR解析では,だいち2号(ALOS-2)によって取得した2016年4月15日と2016年4月29日とのデータを使用して,干渉縞,低コヒーレンス値が高い部分を着色した図,および傾斜量図を重ねた.平成28年(2016年)熊本地震は,2016年4月14日21時26分のMj6.5の地震,および4月16日1時25分のMj7.3の地震として発生した.これらの地震に伴って布田川断層帯および日奈久断層帯の一部で既往報告による活断層トレース(池田ほか,2001;中田・今泉,2002)に沿うように地表地震断層が出現した.益城町三竹付近の水田では,既往活断層図による布田川断層の活断層トレース付近に見られる地表地震断層に加えて,木山川右岸に連続する地表地震断層が確認された(熊原ほか,2016,郡谷ほか,2016等).益城町三竹付近の水田で干渉縞の不連続と低コヒーレンス値の連続とが確認され,この位置は地震直後に確認された地表地震断層の位置と非常に良く一致している.この地点のほか,福原でも水田に連続する地表地震断層と低コヒーレンスの連続が一致しているのが確認された.
一方で,地震直後の現地調査では地表地震断層として確認されなかった地点において,干渉縞が不連続で低コヒーレンスが連続するのが確認される箇所がある.この干渉SARの解析結果は地表地震断層が分布する場合と同様の解析結果である.益城町市街地の南側水田および益城町砥川付近に連続する干渉縞の不連続と低コヒーレンスが連続する地点は、地震後の現地調査で地表地震断層が報告されていない.この地点を干渉SARの解析結果を基にして現地調査を行ったところ,明瞭な地表地震断層は確認できないものの道路や水路にはわずかな亀裂が確認された.低コヒーレンスが連続する線と直交する直線道路と並走する水路を見通すと,わずかに右横ずれを示しているのが確認された.この付近は厚い沖積層が分布していることから基盤内の断層変位を軟弱な地層が吸収し,地表地震断層として地表面に亀裂を生じさせることなく,地表面にブロードな変形を生じさせた可能性が高い.干渉SAR解析で干渉縞と低コヒーレンス図を重ねて検討することで,地表地震断層の分布位置を明らかにすることが出来る.あわせて,地表地震断層として認識することが困難な微小でブロードな地表面の変形を捉えることが出来ることが明らかとなった.
本発表による干渉SARの解析検討方法は特許出願中である(特願2016-175628).
本研究に用いたALOS-2データは,ALOS-2 PIプロジェクト(PI No.1410)の下,JAXAよりALOS-2データ提供を受けたものである.
【引用文献】
雨貝ほか(2008)国土地理院時報 ,117,15-20.
郡谷ほか(2016)地球惑星科学連合大会講演要旨,MIS34-P49
熊原ほか(2016)地球惑星科学連合大会講演要旨,MIS34-05
中埜ほか(2015)活断層研究,43,69-82.
中田・今泉編(2002)「活断層詳細デジタルマップ」東京大学出版会.
小俣ほか(2016)日本活断層学会2016年度秋季学術大会講演予稿集,
三五ほか(2016)日本リモートセンシング学会(平成28年度秋季)学術講演会論文集
私たちは,干渉SARによる干渉縞,低コヒーレンス値分布図,およびDEMデータによる傾斜量図を重ねることにより,地表地震断層を検出する手法を提案してきた(三五ほか,2016,小俣ほか,2016).この手法を用いると,干渉縞による広域の地殻変動とあわせて,干渉縞の位相不連続位置と低コヒーレンス値を示す位置との一致から地表地震断層が検出可能となる.低コヒーレンス値が連続するにも関わらず干渉縞に不連続が生じていない位置では,地表地震断層ではない地表変状が生じている可能性があり,その位置が傾斜地であれば地すべりや崩壊,平坦地であれば液状化等の地盤変状の可能性が考えられる.
今回,平成28年(2016年)熊本地震の震源域で検討を行った.干渉SAR解析では,だいち2号(ALOS-2)によって取得した2016年4月15日と2016年4月29日とのデータを使用して,干渉縞,低コヒーレンス値が高い部分を着色した図,および傾斜量図を重ねた.平成28年(2016年)熊本地震は,2016年4月14日21時26分のMj6.5の地震,および4月16日1時25分のMj7.3の地震として発生した.これらの地震に伴って布田川断層帯および日奈久断層帯の一部で既往報告による活断層トレース(池田ほか,2001;中田・今泉,2002)に沿うように地表地震断層が出現した.益城町三竹付近の水田では,既往活断層図による布田川断層の活断層トレース付近に見られる地表地震断層に加えて,木山川右岸に連続する地表地震断層が確認された(熊原ほか,2016,郡谷ほか,2016等).益城町三竹付近の水田で干渉縞の不連続と低コヒーレンス値の連続とが確認され,この位置は地震直後に確認された地表地震断層の位置と非常に良く一致している.この地点のほか,福原でも水田に連続する地表地震断層と低コヒーレンスの連続が一致しているのが確認された.
一方で,地震直後の現地調査では地表地震断層として確認されなかった地点において,干渉縞が不連続で低コヒーレンスが連続するのが確認される箇所がある.この干渉SARの解析結果は地表地震断層が分布する場合と同様の解析結果である.益城町市街地の南側水田および益城町砥川付近に連続する干渉縞の不連続と低コヒーレンスが連続する地点は、地震後の現地調査で地表地震断層が報告されていない.この地点を干渉SARの解析結果を基にして現地調査を行ったところ,明瞭な地表地震断層は確認できないものの道路や水路にはわずかな亀裂が確認された.低コヒーレンスが連続する線と直交する直線道路と並走する水路を見通すと,わずかに右横ずれを示しているのが確認された.この付近は厚い沖積層が分布していることから基盤内の断層変位を軟弱な地層が吸収し,地表地震断層として地表面に亀裂を生じさせることなく,地表面にブロードな変形を生じさせた可能性が高い.干渉SAR解析で干渉縞と低コヒーレンス図を重ねて検討することで,地表地震断層の分布位置を明らかにすることが出来る.あわせて,地表地震断層として認識することが困難な微小でブロードな地表面の変形を捉えることが出来ることが明らかとなった.
本発表による干渉SARの解析検討方法は特許出願中である(特願2016-175628).
本研究に用いたALOS-2データは,ALOS-2 PIプロジェクト(PI No.1410)の下,JAXAよりALOS-2データ提供を受けたものである.
【引用文献】
雨貝ほか(2008)国土地理院時報 ,117,15-20.
郡谷ほか(2016)地球惑星科学連合大会講演要旨,MIS34-P49
熊原ほか(2016)地球惑星科学連合大会講演要旨,MIS34-05
中埜ほか(2015)活断層研究,43,69-82.
中田・今泉編(2002)「活断層詳細デジタルマップ」東京大学出版会.
小俣ほか(2016)日本活断層学会2016年度秋季学術大会講演予稿集,
三五ほか(2016)日本リモートセンシング学会(平成28年度秋季)学術講演会論文集