JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS13] [JJ] 地震活動

2017年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 A09 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:加藤 愛太郎(東京大学地震研究所)、座長:大見 士朗(京都大学防災研究所地震防災研究部門)、座長:野村 俊一(東京工業大学情報理工学研究科)

10:45 〜 11:00

[SSS13-07] 2011年と2016年に茨城県北部で発生した正断層型の地震について -InSAR観測により捉えられた瓜二つの地震-

*小林 知勝1 (1.国土交通省国土地理院)

キーワード:InSAR、地殻変動、正断層型地震、茨城県北部

はじめに
2011年東北地方太平洋沖地震以降,福島県浜通りから茨城県北部にかけての地殻内では,正断層運動を伴う地震が多発してきた.地震活動が活発化したこの地域では,これまでMj5以上が30回(内Mj6以上は4回)発生してきたが,Mj5以上の地震は2014年1月以降(Mj6以上は2011年5月以降)発生していない.このような背景の下,平成28年(2016年)12月28日21時38分頃,茨城県北部でMj6.3の規模の地震が発生した.この地震の翌日には,ALOS-2衛星によるSAR観測が実施され,干渉SAR解析により地殻変動が捉えられた.この地震において興味深い点は,得られた地殻変動の場所・分布・規模が,2011年3月19日に発生した地震(Mj6.1)に伴う地殻変動とほとんど同じという大変稀有な観測事例であったことである.本発表では,2016年12月に発生した地殻変動と推定された震源断層モデルの特徴を示し,2011年3月の地震との類似性について紹介する.

地殻変動と震源断層モデル
 2016年12月29日と同年11月17日に撮像されたALOS-2データを用いて干渉SAR解析を行い,地殻変動を抽出した.地殻変動は北茨城市市街地から西約10kmの領域に集中しており,南北に長く分布している.最大約27cmの衛星-地表間の距離伸張が観測された.最大の地殻変動が観測される領域では,長さ約2kmの変位の不連続が明瞭に認められ,この領域では地表付近まで断層滑りが生じていることが強く示唆された.得られた地殻変動をもとに,矩形断層面上の一様滑りを仮定した震源断層モデルを構築した.広域の地殻変動と変位の不連続を示す局所的な地殻変動を説明するために,2枚の断層面を仮定した.得られた断層モデルから,南西傾斜の断層面(傾斜角50~60°),北北西(北西)-南南東(南東)方向の走向,正断層型の断層運動,最大変位域の直下のごく浅部に局所的な滑り,等の特徴が挙げられる.広域の地殻変動は,深さ約2kmを断層上端として北北西-南南東走向で約8kmの断層長を持つ断層の滑りにより説明される.Mwは5.83であった.一方,変位の不連続をもたらす浅部の断層滑りが上記断層の北東部に求められ,Mwは5.15であった.全体のMwは5.85である.余震は推定された震源断層の周囲で主に発生しており,断層近傍では余震活動は高くない.

2011319日の地震(Mj6.1)との比較
 この地震で興味深い点は,2011年3月19日に発生した地震(Mj6.1)で観測された地殻変動と非常によく似ていることである.2011年の地震では,ALOS衛星による干渉SAR解析が行われ,ほぼ同じ場所に南北に広がる地殻変動が観測された(Kobayashi et al. 2011).この時も最大の地殻変動が観測される領域では,変位の不連続が認められたが,驚くべきは,その変位不連続の位置も長さも2016年の地震とほとんど同じことである.地表浅部の断層滑りがほぼ同じ場所で起きたことが強く示唆される.2011年の時も,余震は推定された断層の周囲で主に発生しており,断層近傍では余震活動が高くなかった.

謝辞:これらのデータは,地震予知連絡会SAR解析ワーキンググループ(地震WG)を通じて,(国研)宇宙航空研究開発機構(JAXA)から提供を受けました.ここで使用しただいち2号の原初データの所有権は,JAXAにあります.