JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS14] [JJ] 地震予知・予測

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 101 (国際会議場 1F)

コンビーナ:馬場 俊孝(徳島大学大学院理工学研究部)、座長:加藤 護(京都大学大学院人間・環境学研究科)、座長:楠城 一嘉(静岡県立大学)

14:30 〜 14:45

[SSS14-04] 東海地域における地下水温の長期的変動

*佃 為成1 (1.なし)

キーワード: 地殻活動、地震予知、地下水温

大地震の準備過程では,地下岩盤の収縮領域(圧力上昇)と膨張領域(圧力降下)が隣り合って生成される.それに伴う間隙流体圧変化により,微小クラック群から成る流体移動のパスが存在すれば,地表へ向かう上昇流体の増加や減少が起こる.深部流体は高温なので,上昇深部流体が浅層地下水に混入すると,地下水温を上昇させる.また,移動流体の量の変化によって水温変化が起こる.直下に流体パスの存在が推定される焼津と静岡の12年に及ぶ地下水温観測データに基づき,東海地域の地下深部の歪や応力の変化を窺ってみる.
東海地方の水温観測点の内, 焼津市立大富小学校内井戸(OT)(機器故障により2014年9月5日以降欠測)と静岡市中島下水浄化センター内自噴井(NK)には精密水晶温度計,焼津市元焼津公園内井戸(YZ)には白金抵抗温度計が設置されている(佃, 2008).これら3カ所の観測点は松村(2005)による,プレート沈み込みの固着域の直上付近に位置する.
 OT(焼津)の水温(深さ30m)は平均上昇率24m℃/year の単調増加が,2009年8月11日の駿河湾地震(M6.5)以降,44m℃/year に上昇,2011年3月11日の東北の地震(M9.0)の頃から以前の上昇率に戻り,2012年末から上昇が緩やかになってきた.深さ10mでは2007年10月27日から29日にかけて0.17℃上昇するなど,最近でも,パルス的な水温上昇イベントが度々観測されている.
 NK(静岡)では, 2006年は34 m℃/year ,2007年春から67 m℃/year ,同年秋から年末までは14 m℃/year の上昇であったが,2008年初めから上昇率は鈍化,9月頃から-40 m℃/year の率で下降(岩盤膨張)に転じた.2009年の駿河湾地震以降,下降率が大きく(-117 m℃/year)なり,2011年8月1日の駿河湾地震(M6.2)後,さらに下降率が増加したが,その後減少し,2012年末に水温一定となり,2013年5月下旬から上昇(66 m℃/year), 2014年に入り一時加速したが,2015年に入り上昇は緩やかになり,2016年10月からやや急激に下降へ向かいつつある.静岡直下では再び岩盤膨張へ転換した.
 YZ(元焼津)では,自噴をしている期間のみの水温データを考察する.2010年4月以降,現在まで 8m℃/year の率で上昇中.2011年東北地震(M9.0)の影響による上昇変化も見える.OT, YZ のデータは,焼津直下で岩盤圧縮,収縮歪を示す.
 OT と NK の水温データには,気象庁の体積歪計では検出されなかったトレンド変化がある(佃, 2012).最近の下降トレンドは新たな地殻変動が始まったことを示しているに違いない.
 なお,最近では,NPO法人 地下からのサイン測ろうかい によって東海地方西部に新たな観測点が建設されつつある.
参考文献:
松村正三,東海地域推定固着域における地震活動変化(その9), 地震予知連絡会会報,74, 300-303, 2005.
Tsukuda T., K. Gotoh and O. Sato, Deep groundwater discharge and ground  surface phenomena, B.E.R.I., Univ. Tokyo, 80, 105-131, 2005.
佃 為成,東海地方の水温上昇変化,地震予知研究ノート No.3, 41-42,2008.
佃 為成,地下水温変化から地下深部の応力変化をさぐる,日本地震学会講演予稿集 2012年度秋季大会,D12-03, p.120, 2012.