16:45 〜 17:00
[SSS15-12] 広帯域地震動シミュレーションによる地震動のばらつきの空間分布
キーワード:地震動予測、地震動のばらつき、震源パラメータ、不確実性
震源断層モデルと地下構造モデルに基づく地震動シミュレーションによってシナリオ地震の地震動予測を行う際、「平均的な地震動レベル」と「モデルの不確定性に起因する地震動のばらつき」の両方を評価する必要がある。
本検討では、ハイブリッド法による広帯域地震動シミュレーションによって断層モデルの不確定性、中でもパラメータの偶然的ばらつきに起因する予測地震動のばらつき評価を試みた。
横ずれ断層型である2000年鳥取県西部地震、および逆断層型である2004年中越地震(ともにMW6.6)をモデリングの対象とした。実地震を対象としたのは、観測記録と比較することにより地震動シミュレーションのパフォーマンスを確認するため、および現実的な地下構造の影響を考察するためである。
それぞれの地震について断層位置と形状(長さ・幅・傾斜角)、メカニズムを既知として固定させ、レシピ(地震本部, 2016)に従う特性化震源モデルを基にして、(1)アスペリティ位置、(2)破壊開始点、(3)地震モーメントの3つのパラメータについて偶然的ばらつきを考慮した多数の震源モデル群を作成した。アスペリティ位置は2つのアスペリティが互いに重ならないようにランダムに配置し、破壊開始点については断層上端から4kmより深い2km間隔格子からランダムに選んだ。地震モーメントM0は入倉・三宅(2001)により断層面積Sから求められる値を平均値とし、常用対数の平均値±2σで倍半分となるような頻度分布を作成した。地震モーメントにばらつきを与える一方で、短周期レベルAは壇・他(2001)によるA-M0関係を固定させて与えた。
得られた震源モデル群とJ-SHIS v2の3次元深部地盤構造モデル(藤原・他, 2012)を用いて、三次元差分法(Aoi and Fujiwara, 1999)と統計的グリーン関数法(壇・佐藤, 1998)による1秒を接続周期としたハイブリッド法で地震動を計算した。震源域周辺に厚い堆積層が分布している2004年中越地震については、複雑な地下構造による地震動のばらつきの空間分布への影響を見積もるため、単純な成層構造を仮定した地下構造モデルを用いた計算も行った。
それぞれの地震について50個の震源モデル群から計算された10kmメッシュ地点での地震動を5%減衰加速度応答スペクトル(Sa)およびPGA, PGVの指標を用いて平均値と標準偏差SD(ある地点におけるイベント間のばらつき、inter-event variability)を求めた。短周期のSaやPGAでは、断層からの距離が大きくなるほどSDは小さくなるという距離依存の傾向が見られた。一方、1秒以上の長周期のSaやPGVは、破壊進展のforwardまたはbackward方向でSDが大きくなる傾向が見られた。中越地震で三次元地下構造モデルを用いた場合は、SDの空間分布が複雑な地下構造によって変化した。
シナリオ地震の地震動予測における地震動のばらつきのモデル化にむけて、まずは横ずれ断層、逆断層それぞれについて単純な地下構造の場合のSDの空間分布を断層最短距離および断層面と観測点の成す角度によって回帰した。
本検討ではばらつきを与えたパラメータに限りがあるため、地震動のばらつきSDの大きさが十分に評価できていない可能性があり、今後は破壊伝播速度など他のパラメータのばらつきを検討するとともに、既往研究で観測記録から得られているばらつきとも比較していく必要がある。
本検討では、ハイブリッド法による広帯域地震動シミュレーションによって断層モデルの不確定性、中でもパラメータの偶然的ばらつきに起因する予測地震動のばらつき評価を試みた。
横ずれ断層型である2000年鳥取県西部地震、および逆断層型である2004年中越地震(ともにMW6.6)をモデリングの対象とした。実地震を対象としたのは、観測記録と比較することにより地震動シミュレーションのパフォーマンスを確認するため、および現実的な地下構造の影響を考察するためである。
それぞれの地震について断層位置と形状(長さ・幅・傾斜角)、メカニズムを既知として固定させ、レシピ(地震本部, 2016)に従う特性化震源モデルを基にして、(1)アスペリティ位置、(2)破壊開始点、(3)地震モーメントの3つのパラメータについて偶然的ばらつきを考慮した多数の震源モデル群を作成した。アスペリティ位置は2つのアスペリティが互いに重ならないようにランダムに配置し、破壊開始点については断層上端から4kmより深い2km間隔格子からランダムに選んだ。地震モーメントM0は入倉・三宅(2001)により断層面積Sから求められる値を平均値とし、常用対数の平均値±2σで倍半分となるような頻度分布を作成した。地震モーメントにばらつきを与える一方で、短周期レベルAは壇・他(2001)によるA-M0関係を固定させて与えた。
得られた震源モデル群とJ-SHIS v2の3次元深部地盤構造モデル(藤原・他, 2012)を用いて、三次元差分法(Aoi and Fujiwara, 1999)と統計的グリーン関数法(壇・佐藤, 1998)による1秒を接続周期としたハイブリッド法で地震動を計算した。震源域周辺に厚い堆積層が分布している2004年中越地震については、複雑な地下構造による地震動のばらつきの空間分布への影響を見積もるため、単純な成層構造を仮定した地下構造モデルを用いた計算も行った。
それぞれの地震について50個の震源モデル群から計算された10kmメッシュ地点での地震動を5%減衰加速度応答スペクトル(Sa)およびPGA, PGVの指標を用いて平均値と標準偏差SD(ある地点におけるイベント間のばらつき、inter-event variability)を求めた。短周期のSaやPGAでは、断層からの距離が大きくなるほどSDは小さくなるという距離依存の傾向が見られた。一方、1秒以上の長周期のSaやPGVは、破壊進展のforwardまたはbackward方向でSDが大きくなる傾向が見られた。中越地震で三次元地下構造モデルを用いた場合は、SDの空間分布が複雑な地下構造によって変化した。
シナリオ地震の地震動予測における地震動のばらつきのモデル化にむけて、まずは横ずれ断層、逆断層それぞれについて単純な地下構造の場合のSDの空間分布を断層最短距離および断層面と観測点の成す角度によって回帰した。
本検討ではばらつきを与えたパラメータに限りがあるため、地震動のばらつきSDの大きさが十分に評価できていない可能性があり、今後は破壊伝播速度など他のパラメータのばらつきを検討するとともに、既往研究で観測記録から得られているばらつきとも比較していく必要がある。