JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT57] [EJ] 合成開口レーダー

2017年5月24日(水) 13:45 〜 15:15 201A (国際会議場 2F)

コンビーナ:宮城 洋介(防災科学技術研究所)、小林 祥子(玉川大学)、山之口 勤(一般財団法人 リモート・センシング技術センター)、森下 遊(国土交通省国土地理院)、座長:山之口 勤(一般財団法人 リモート・センシング技術センター)、座長:小林 祥子(玉川大学)

14:00 〜 14:15

[STT57-08] SAR解析による2015年桜島ダイク貫入イベント前後の地殻変動および火口の深さの変化

*小澤 拓1宮城 洋介1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:合成開口レーダー、地殻変動、桜島

桜島では2015年8月15日に南岳直下付近を震源とする火山性地震の発生回数が増加し,さらに島内に設置されている傾斜計や伸縮計によって,山体膨張を示す急激な地殻変動が観測された.また,陸域観測技術衛星「だいち2号」のPALSAR-2のSAR干渉解析から,この活動に伴うと考えらえる地殻変動が検出された.この結果は,昭和火口付近に南西端を持つ開口断層(体積増加量:約1.6百万立米)によって良く説明される(たとえば,小澤ほか2016,Morishita et al., 2016).これらの結果から,桜島の地下において,ダイク貫入イベントが発生したと考えられる.
 本研究においては,SAR解析により,そのイベント前後の地殻変動および火口の深さの変化を調査した.SAR干渉解析による地殻変動検出においては,数値気象モデルに基づく大気遅延誤差軽減手法(たとえば,小澤・清水,2010)と,スプリットスペクトル法による電離圏遅延誤差軽減手法(たとえば,Gomba et al., 2015)を適用した.PALSAR-2の南行軌道の右方向視で観測されたデータの解析結果においては,貫入イベント直前に,桜島東部において,5cmを超える衛星-地表間距離(スラントレンジ)の短縮変化が求まった.これが大気遅延等による非地殻変動成分ではなく,実際の地殻変動シグナルであるかどうかについては,さらなる調査が必要である.一方,貫入イベント後においては,昭和火口の東側において,スラントレンジ伸長の変化が求まった.この変化は,貫入イベント直後からみられ,時間と共に減衰する傾向を持つことが特徴の一つである.このことから,この地殻変動は,貫入イベントに関係すると推測されるが,ダイク貫入に伴う地表変動とは,明らかに空間分布が異なることから,推定されている開口断層とは別のメカニズムを考える必要がある.一方,北岳の北西においては,スラントレンジ短縮変化が求まった.この変化は2016年夏ごろから開始したように見えることが特徴の一つである.
 昭和火口周辺で見られるレイオーバーの形状から,2015年以降の火口の深さの変化を推定した.噴火が多発する時期に,わずかな火口底の深さの変化が見られるが,数10mを超えるような大きな変化は求まらなかった.このことは,ダイク貫入イベント以降において,昭和火口直下の圧力状態は大きくは変化していない可能性を示唆する.