JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC46] [EE] 火山分岐現象の理解

2017年5月24日(水) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)、奥村 聡(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)、小園 誠史(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC46-P06] 阿蘇火山において2016年10月8日の爆発的噴火前に観測された急激な二酸化硫黄放出量の増加

*森 健彦1森 俊哉2気象庁 福岡管区気象台 (1.気象庁 気象研究所、2.東京大学大学院理学系研究科地殻化学実験施設)

キーワード:阿蘇火山、二酸化硫黄放出量、爆発的噴火

福岡管区気象台では,阿蘇火山における火山活動度評価のため,COMPUSSを用いた二酸化硫黄放出量観測を実施している。観測は概ね1週間に1回程度実施されているが,雨天が続くなど,条件によっては2週間以上もデータが取得できない場合がある。2016年10月8日に発生した爆発的噴火に先立つ期間においても,天候不順などによる理由から,8月31日から9月26日までは観測が実施できていなかった。
 ほぼ1ヶ月ぶりの観測となった9月26日,二酸化硫黄放出量は前回8月31日の放出量値の倍近い3100 ton/dayとなり,二酸化硫黄放出量が増加していることを確認した。火山性微動の振幅レベルも高い状態で推移していたことから,火山活動の活発化を懸念し,観測頻度を上げることとした。しかしながら,10月に入ってからは風速・風向の不安定さや,検量線を作成する際に用いる最高カラム濃度を大幅に上回る高カラム濃度の検知など,従来の解析方法で放出量値を即時算出するのが困難な状況となった。そこで,10月3, 4, 6, 7日に実施された観測データについて,観測データをサンプルごとの吸収スペクトルから再精査し,高カラム濃度セルを用いた検量線の作成によって測定カラム濃度の再評価をすることで,精度の高い放出量値を求めた。
 爆発的噴火前日の10月7日の観測結果については,当日の夕方から簡易的な再解析を実施し,1回のトラバースデータから,15000ton/dayとの値を21時に公表することができている。しかしながら,4000, 8000 ppmmの高カラム濃度セルで検量線を作成し,すべてのトラバース観測データでの再解析の結果,平均値で16700ton/day (Max: 20800ton/day, Min: 11800ton/day)の値となった。7日を含む再解析の結果,阿蘇火山における二酸化硫黄放出量は10月に入ってから顕著な増加傾向にあり,7日では急激な増加が確認された。この変動は火山性微動の振幅レベルの増加,GNSSによる短基線の面積ひずみ増加と対応しており,10月8日の爆発的噴火に至る過程で,マグマからの脱ガスの急激な増加による,火口浅部での多量の火山ガス蓄積が発生していたことが想定される。