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[SVC47-12] 新潟焼山の2015-16年活動の推移 ‐噴火と火口溢流型ラハールの発生‐
キーワード:活火山、新潟県、噴火、テフラ、火山灰、火口溢流型ラハール
はじめに
新潟県西部に位置する新潟焼山火山は、約3,000年前以降に活動を開始した若い活火山である。山体は、デイサイトの溶岩・溶岩ドームと火砕流堆積物で構成される。20世紀以降、噴火を含めて様々な種類の活動の活発化が認められている。それらは、1949、1962、1974年に山麓まで降灰が認められる規模の水蒸気噴火、1983、1987、1989、1997-98年の極小規模な水蒸気噴火、1984、1991-93、2000-01年の噴気活動の活発化、1931年の山頂部からの温泉の湧出などである。マグマ噴火は近年発生していない。なお、1949、1974年の噴火はVEI:2クラスであり、1974年は噴火発生と同時に山体から水が溢れ出し(火口溢流型ラハール)山麓まで達する土石流が発生した。
この新潟焼山火山は、2015年夏頃から噴気が目立ち始め、2016年には極小規模な噴火と火口溢流型ラハールの発生を繰り返した。本講演は、気象庁の機動観測による観察や火山灰の分析などを主として、2015-16年の活動推移について報告する。
2015-16年の活動の推移
平常時には50m程度であった噴気高度が2015年夏頃より高くなり、2015年8月26日には火口上200mまで上がっているのが観測された。2015年12月下旬頃からはさらに噴気高度が高くなり、2016年8月3日には1200mの高度を記録した。その8月をピークに噴気高度は下がる傾向となり、特に2017年1月以降は低調になったが、2017年2月上旬でも2015年夏以前の状態にもどっていない。なお、本活動を通して一番活発に活動しているのは、山頂東側斜面上部の噴気孔である。降灰や火口溢流型ラハールの発生は、この噴気孔(ないしその近辺)で発生している。
噴気高度の高くなった2016年初頭以降、小規模な噴火が8回確認された。噴火の認定は、上空や近隣からの観察に基づき、新たに降灰による積雪面の汚れや噴気孔周辺の変色が認められた時を降灰日と認定した。その結果、2016年4月15日以前の積雪期中に6回、その後5月1日にも降灰があったと考えられる。その後7月21日には山頂東側1.5kmに微量の降灰があったことを妙高火山観測所が確認している。これらの降灰に伴って、投出火山岩塊及び融雪や草木が燃えるような高温物質の放出は観察されていない。また、噴気孔近傍からの水(温水)の流出、火口溢流型ラハールの発生が5月1-8日,20日,6月3-4日,26日,7月2日,19日に確認された。
5月1日の降灰は、5月15日に、火口から北北東1.7km付近において3g/m2の量の降灰が確認された。この火山灰は、シルトサイズ以下の粒子が90wt%しめる灰色の細粒火山灰であり、少量(10wt %以下)の砂サイズの粒子が含まれる。砂サイズの粒子は、円磨された白色変質岩片(黄鉄鉱が付着するものもある)など顕著に変質した粒子の他、新鮮な結晶片(主に斜長石や輝石)、相対的に新鮮ではあるが円磨された形状をなす岩片などの粒子で構成されている。ほとんど変質していない粒子も数割程度含まれるが、発泡した未変質の軽石片や発泡ガラス片などの新鮮なマグマ物質は認められない。なお、黄鉄鉱は風化しておらず新鮮である。降灰分布と降灰量から噴出物量を求めると、104-5kg程度となる。他の噴火も火山灰の降灰域の広がりから、ほぼ同規模と推定される。そのため、2016年の一連の噴火の総降灰量は、最大でも106kg、おそらく105kgオーダであると考えられる。
今回の一連の噴火の発生は、噴気活動の活発化にともなって降灰が発生したこと、今回の噴気活動活発化後の比較的初期に発生していること、噴出物中に新鮮なマグマ物質が認められないこと、降灰量も少ないことなどの特徴がある。これら特徴から、2016年の一連の噴火は、噴気の活発化に伴って、噴気の通過域の細粒物が吹き飛ばされて発生した水蒸気噴火である可能性が高い。 また、今回の活動では、噴気活動活発化に伴い、山体内からの水(温水)が流れ出したこと(火口溢流(湧出)型ラハール)が特徴的である。1974年の水蒸気噴火時には、多量の水が溢れ出した結果、山麓に達する規模の土石流が発生した。そのため、噴気活動の活発化や水蒸気噴火の発生の際には、火口溢流(湧出)型ラハールが発生する可能性は高いといえよう。下流の河川沿いにおいては、噴気活動が活発化した際には、噴火に至らずも、急な増水や土砂災害の警戒が必要である。
新潟県西部に位置する新潟焼山火山は、約3,000年前以降に活動を開始した若い活火山である。山体は、デイサイトの溶岩・溶岩ドームと火砕流堆積物で構成される。20世紀以降、噴火を含めて様々な種類の活動の活発化が認められている。それらは、1949、1962、1974年に山麓まで降灰が認められる規模の水蒸気噴火、1983、1987、1989、1997-98年の極小規模な水蒸気噴火、1984、1991-93、2000-01年の噴気活動の活発化、1931年の山頂部からの温泉の湧出などである。マグマ噴火は近年発生していない。なお、1949、1974年の噴火はVEI:2クラスであり、1974年は噴火発生と同時に山体から水が溢れ出し(火口溢流型ラハール)山麓まで達する土石流が発生した。
この新潟焼山火山は、2015年夏頃から噴気が目立ち始め、2016年には極小規模な噴火と火口溢流型ラハールの発生を繰り返した。本講演は、気象庁の機動観測による観察や火山灰の分析などを主として、2015-16年の活動推移について報告する。
2015-16年の活動の推移
平常時には50m程度であった噴気高度が2015年夏頃より高くなり、2015年8月26日には火口上200mまで上がっているのが観測された。2015年12月下旬頃からはさらに噴気高度が高くなり、2016年8月3日には1200mの高度を記録した。その8月をピークに噴気高度は下がる傾向となり、特に2017年1月以降は低調になったが、2017年2月上旬でも2015年夏以前の状態にもどっていない。なお、本活動を通して一番活発に活動しているのは、山頂東側斜面上部の噴気孔である。降灰や火口溢流型ラハールの発生は、この噴気孔(ないしその近辺)で発生している。
噴気高度の高くなった2016年初頭以降、小規模な噴火が8回確認された。噴火の認定は、上空や近隣からの観察に基づき、新たに降灰による積雪面の汚れや噴気孔周辺の変色が認められた時を降灰日と認定した。その結果、2016年4月15日以前の積雪期中に6回、その後5月1日にも降灰があったと考えられる。その後7月21日には山頂東側1.5kmに微量の降灰があったことを妙高火山観測所が確認している。これらの降灰に伴って、投出火山岩塊及び融雪や草木が燃えるような高温物質の放出は観察されていない。また、噴気孔近傍からの水(温水)の流出、火口溢流型ラハールの発生が5月1-8日,20日,6月3-4日,26日,7月2日,19日に確認された。
5月1日の降灰は、5月15日に、火口から北北東1.7km付近において3g/m2の量の降灰が確認された。この火山灰は、シルトサイズ以下の粒子が90wt%しめる灰色の細粒火山灰であり、少量(10wt %以下)の砂サイズの粒子が含まれる。砂サイズの粒子は、円磨された白色変質岩片(黄鉄鉱が付着するものもある)など顕著に変質した粒子の他、新鮮な結晶片(主に斜長石や輝石)、相対的に新鮮ではあるが円磨された形状をなす岩片などの粒子で構成されている。ほとんど変質していない粒子も数割程度含まれるが、発泡した未変質の軽石片や発泡ガラス片などの新鮮なマグマ物質は認められない。なお、黄鉄鉱は風化しておらず新鮮である。降灰分布と降灰量から噴出物量を求めると、104-5kg程度となる。他の噴火も火山灰の降灰域の広がりから、ほぼ同規模と推定される。そのため、2016年の一連の噴火の総降灰量は、最大でも106kg、おそらく105kgオーダであると考えられる。
今回の一連の噴火の発生は、噴気活動の活発化にともなって降灰が発生したこと、今回の噴気活動活発化後の比較的初期に発生していること、噴出物中に新鮮なマグマ物質が認められないこと、降灰量も少ないことなどの特徴がある。これら特徴から、2016年の一連の噴火は、噴気の活発化に伴って、噴気の通過域の細粒物が吹き飛ばされて発生した水蒸気噴火である可能性が高い。 また、今回の活動では、噴気活動活発化に伴い、山体内からの水(温水)が流れ出したこと(火口溢流(湧出)型ラハール)が特徴的である。1974年の水蒸気噴火時には、多量の水が溢れ出した結果、山麓に達する規模の土石流が発生した。そのため、噴気活動の活発化や水蒸気噴火の発生の際には、火口溢流(湧出)型ラハールが発生する可能性は高いといえよう。下流の河川沿いにおいては、噴気活動が活発化した際には、噴火に至らずも、急な増水や土砂災害の警戒が必要である。