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[SVC48-01] 霧島えびの高原硫黄山および新燃岳の火山ガスについて
キーワード:霧島えびの高原硫黄山新燃岳、火山ガス、マグマ
【序】
霧島えびの高原硫黄山では,2015年12月に山頂付近で噴気が出現し,その後,火山性微動が発生するなど,火山活動が活発化している.一方,霧島新燃岳では,2011年にマグマ噴火が発生したが,2017年1月の段階で,火山活動は低下している.火山ガスはマグマから脱ガスした成分を含んでおり,火山活動の評価に有用である.本研究では,2015年12月から2017年1月にかけて,硫黄山で噴気を繰り返し採取した.また2017年1月に新燃岳山頂火口付近で噴気を採取した.これらの試料の特徴を示し,火山活動との関係を考察する.
【噴気の採取】
硫黄山では,山頂付近の二か所で噴気を採取した.噴気の出口温度は水の沸点に近く,噴気の放出圧力は低い.噴気の放出に大きな音は伴わなかった.新燃岳では,山頂火口のリムの西側から外側に200m程度離れた斜面で噴気を採取した.硫黄山の噴気と同様に,噴気の出口温度は水の沸点に近く,噴気の放出圧力は低い.噴気の放出に大きな音は伴わなかった.
【結果・考察】
硫黄山
噴気のCO2/H2O比は2016年5月頃まで増加傾向にあったが,7月以降減少に転じた.CO2はマグマ起源成分を代表するガス成分で,マグマ脱ガス活動が2016年7月以降低下しつつあることを示している.火山ガスに含まれるSO2,H2S,H2,H2Oの濃度から見かけ平衡温度(AET)を計算することができる.AETは,2015年12月に232℃であったが,2016年2月には313℃に上昇し,その後,高い値を保っている.噴気に含まれるH2Oの酸素同位体比は,マグマ起源のH2Oと地下水起源のH2Oの寄与の比率を判断する有用な指標である. 2015年12月に同位体比は低かったが,2016年2月に急激に上昇し,その後,緩やかな上昇が継続している.AETや同位体比の変化は,冷たく地下水に満たされた地下の領域に,深部からマグマ性ガスが侵入し,温度上昇と,地下水がマグマ起源H2Oにより置き換えられる過程が進行していることを示している.
新燃岳
2017年1月に採取した噴気の化学組成で注目されるのは5~7%というCO2の濃度の高さである.1991,1994年の観測では,CO2濃度は1.4~1.9%に過ぎない.一方で,H2Sの濃度は0.01~0.04%と1991,1994年の0.2~0.6%に比較して低い.噴気のSO2濃度は,H2Sよりも高く0.02%を示した.H2Oの安定同位体比は1994年の噴気に比べて顕著に低く,地下水の付加に加え,気液分離の影響が推測される.新燃岳西側斜面割れ目噴気に見られる高濃度のCO2は,2011年の噴火後も新燃岳のマグマは高濃度のCO2を含み,脱ガス活動の継続を示している.
霧島えびの高原硫黄山では,2015年12月に山頂付近で噴気が出現し,その後,火山性微動が発生するなど,火山活動が活発化している.一方,霧島新燃岳では,2011年にマグマ噴火が発生したが,2017年1月の段階で,火山活動は低下している.火山ガスはマグマから脱ガスした成分を含んでおり,火山活動の評価に有用である.本研究では,2015年12月から2017年1月にかけて,硫黄山で噴気を繰り返し採取した.また2017年1月に新燃岳山頂火口付近で噴気を採取した.これらの試料の特徴を示し,火山活動との関係を考察する.
【噴気の採取】
硫黄山では,山頂付近の二か所で噴気を採取した.噴気の出口温度は水の沸点に近く,噴気の放出圧力は低い.噴気の放出に大きな音は伴わなかった.新燃岳では,山頂火口のリムの西側から外側に200m程度離れた斜面で噴気を採取した.硫黄山の噴気と同様に,噴気の出口温度は水の沸点に近く,噴気の放出圧力は低い.噴気の放出に大きな音は伴わなかった.
【結果・考察】
硫黄山
噴気のCO2/H2O比は2016年5月頃まで増加傾向にあったが,7月以降減少に転じた.CO2はマグマ起源成分を代表するガス成分で,マグマ脱ガス活動が2016年7月以降低下しつつあることを示している.火山ガスに含まれるSO2,H2S,H2,H2Oの濃度から見かけ平衡温度(AET)を計算することができる.AETは,2015年12月に232℃であったが,2016年2月には313℃に上昇し,その後,高い値を保っている.噴気に含まれるH2Oの酸素同位体比は,マグマ起源のH2Oと地下水起源のH2Oの寄与の比率を判断する有用な指標である. 2015年12月に同位体比は低かったが,2016年2月に急激に上昇し,その後,緩やかな上昇が継続している.AETや同位体比の変化は,冷たく地下水に満たされた地下の領域に,深部からマグマ性ガスが侵入し,温度上昇と,地下水がマグマ起源H2Oにより置き換えられる過程が進行していることを示している.
新燃岳
2017年1月に採取した噴気の化学組成で注目されるのは5~7%というCO2の濃度の高さである.1991,1994年の観測では,CO2濃度は1.4~1.9%に過ぎない.一方で,H2Sの濃度は0.01~0.04%と1991,1994年の0.2~0.6%に比較して低い.噴気のSO2濃度は,H2Sよりも高く0.02%を示した.H2Oの安定同位体比は1994年の噴気に比べて顕著に低く,地下水の付加に加え,気液分離の影響が推測される.新燃岳西側斜面割れ目噴気に見られる高濃度のCO2は,2011年の噴火後も新燃岳のマグマは高濃度のCO2を含み,脱ガス活動の継続を示している.