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[SVC49-01] 火山観測機器を用いた土石流の量的検出
キーワード:地盤変動、土石流、桜島
はじめに
火山噴火発生後には,降雨によってしばしば土石流が発生する.降下火山灰や火砕流などの可動性の高い物質が山麓に堆積され,多量の水によって流動する.これまで,土石流の検知はワイヤーセンサーや水位計などに加えて,より安定的に稼働しうるものとして振動センサーが用いられてきた.ここでは,より定量的な土石流の見積もりが可能となる傾斜計やひずみ計などの地盤変動センサーによって土石流を検知できたので,それについて報告する.
一般に,火山噴火に前駆して火山体の膨張が捉えられる.桜島の昭和火口の爆発の場合,火口から2.1km南南東にある有村観測坑道の水管傾斜計により,1時間から最長1日半前に火口方向の隆起の変化が観測され,噴火の発生と同時に沈降傾斜に反転する.火口側隆起の傾斜変動は,有村観測坑道からみて火口方向と反対側にある有村川における土石流発生時にも観測される.土石流は降雨時にしか発生しないので,強い降雨時であれば,土石流の発生の可能性を疑うが,火山噴火は降雨とは関係のない現象なので,降雨の有無は隆起傾斜変化の原因の判定の根拠にはなりにくい.ここでは,土石流発生時の地盤変動の特徴を抽出し,火山爆発に前駆する地盤変動との相違を明らかにし,点荷重モデルを用いて,荷重増加量を見積もった.
傾斜及びひずみ変化
傾斜計及び伸縮計は昭和火口から2.1㎞南南東の有村観測坑道内に設置され,さらに南0.4㎞に有村川がある.有村川では2009年以降,昭和火口において爆発が頻発するようになってから土石流の発生回数が増加しており,2009年から2016年までに65回の土石流が発生している(大隅河川国道事務所調べ).土石流発生時に地盤変動がなかった例はわずか4例しかなく,ほとんどの場合,地盤変動を伴う.傾斜変化量は火口側隆起の4~409ナノラジアンである.爆発に前駆する傾斜変化は100ナノラジアン以下で,土石流発生時の方が大きい変化が観測される場合がある.火口側隆起は有村川側の沈降を意味し,沈降ベクトルの方向は,有村川の最上流部の1号堰堤の方向を向くので,堰堤への土砂堆積による荷重沈降が地盤変動を引き起こしたものと解釈できる.また,地盤変動は土石流流下による振動の振幅がピークに達した時点で始まる.振動振幅のピークは土石流先端が観測点に最も接近したことを意味し,土石流堆積による荷重沈降が地盤変動の理由として考えやすい.火口方向のひずみ変化量は3~138ナノストレインの伸長である.火山爆発に先行する地盤変動では,火口方向のひずみは収縮を示すので,土石流発生時の極性とは異なる.また,昭和火口の爆発の場合,傾斜変化量よりひずみ変化量が大きいが,土石流発生時の傾斜変化量はひずみ変化量の3倍程度大きい.傾斜とひずみの比3は点荷重を仮定し,ラメの定数λ=μとした場合の傾斜とひずみ変化の比に相当する.
土石流堆積量の見積もり
点荷重モデルを用いて,荷重増加量を見積もってみる.例えば,30ナノストレインの収縮ひずみが検知された場合,6×108Nの力が働くので重量にして6×107Kg,体積にして25,000m3の土砂が堆積したことになる.2009年から2016年までの土石流に伴う総ひずみ変化量は1100ナノストレインであり,8年間におよそ200万トン(80万m3)の土砂が運ばれてきたことになる.2009年から2016年までの噴出物量は4300万トンと見積もられており,総噴出物量の5%が土石流として有村川に流下したことになる.
火山噴火発生後には,降雨によってしばしば土石流が発生する.降下火山灰や火砕流などの可動性の高い物質が山麓に堆積され,多量の水によって流動する.これまで,土石流の検知はワイヤーセンサーや水位計などに加えて,より安定的に稼働しうるものとして振動センサーが用いられてきた.ここでは,より定量的な土石流の見積もりが可能となる傾斜計やひずみ計などの地盤変動センサーによって土石流を検知できたので,それについて報告する.
一般に,火山噴火に前駆して火山体の膨張が捉えられる.桜島の昭和火口の爆発の場合,火口から2.1km南南東にある有村観測坑道の水管傾斜計により,1時間から最長1日半前に火口方向の隆起の変化が観測され,噴火の発生と同時に沈降傾斜に反転する.火口側隆起の傾斜変動は,有村観測坑道からみて火口方向と反対側にある有村川における土石流発生時にも観測される.土石流は降雨時にしか発生しないので,強い降雨時であれば,土石流の発生の可能性を疑うが,火山噴火は降雨とは関係のない現象なので,降雨の有無は隆起傾斜変化の原因の判定の根拠にはなりにくい.ここでは,土石流発生時の地盤変動の特徴を抽出し,火山爆発に前駆する地盤変動との相違を明らかにし,点荷重モデルを用いて,荷重増加量を見積もった.
傾斜及びひずみ変化
傾斜計及び伸縮計は昭和火口から2.1㎞南南東の有村観測坑道内に設置され,さらに南0.4㎞に有村川がある.有村川では2009年以降,昭和火口において爆発が頻発するようになってから土石流の発生回数が増加しており,2009年から2016年までに65回の土石流が発生している(大隅河川国道事務所調べ).土石流発生時に地盤変動がなかった例はわずか4例しかなく,ほとんどの場合,地盤変動を伴う.傾斜変化量は火口側隆起の4~409ナノラジアンである.爆発に前駆する傾斜変化は100ナノラジアン以下で,土石流発生時の方が大きい変化が観測される場合がある.火口側隆起は有村川側の沈降を意味し,沈降ベクトルの方向は,有村川の最上流部の1号堰堤の方向を向くので,堰堤への土砂堆積による荷重沈降が地盤変動を引き起こしたものと解釈できる.また,地盤変動は土石流流下による振動の振幅がピークに達した時点で始まる.振動振幅のピークは土石流先端が観測点に最も接近したことを意味し,土石流堆積による荷重沈降が地盤変動の理由として考えやすい.火口方向のひずみ変化量は3~138ナノストレインの伸長である.火山爆発に先行する地盤変動では,火口方向のひずみは収縮を示すので,土石流発生時の極性とは異なる.また,昭和火口の爆発の場合,傾斜変化量よりひずみ変化量が大きいが,土石流発生時の傾斜変化量はひずみ変化量の3倍程度大きい.傾斜とひずみの比3は点荷重を仮定し,ラメの定数λ=μとした場合の傾斜とひずみ変化の比に相当する.
土石流堆積量の見積もり
点荷重モデルを用いて,荷重増加量を見積もってみる.例えば,30ナノストレインの収縮ひずみが検知された場合,6×108Nの力が働くので重量にして6×107Kg,体積にして25,000m3の土砂が堆積したことになる.2009年から2016年までの土石流に伴う総ひずみ変化量は1100ナノストレインであり,8年間におよそ200万トン(80万m3)の土砂が運ばれてきたことになる.2009年から2016年までの噴出物量は4300万トンと見積もられており,総噴出物量の5%が土石流として有村川に流下したことになる.