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[SVC50-17] 白河火砕流堆積物群およびそれに伴う降下火山灰の層序・対比に関する再検討
キーワード:白河火砕流堆積物群、前期更新世、東北日本、カルデラ噴火、広域テフラ
東北日本弧南部の会津火山地域は,前期更新世に発生した複数回の大規模火砕流を伴うカルデラ噴火に特徴づけられる.これら噴火により形成された白河火砕流堆積物群の層序学的研究は古くから行われ(吉田・高橋,1991;山元,1999など),火砕流に伴う降下火山灰の遠隔地への追跡もなされている(黒川ほか,2008;村田・鈴木,2011など).しかしカルデラ周辺域での火砕流堆積物の層序やそれらに対比された降下火山灰の層序に矛盾する点もある.その理由として,給源となるカルデラ域周辺では火砕流が厚く堆積し,上下の堆積物との層位関係が把握しにくいこと,白河火砕流堆積物群の模式地とされてきた白河地域では火砕流堆積物が丘陵地形を覆い堆積したため,不整合が生じやすいことなどが考えられる.本研究では,同堆積物群がかつての盆地堆積物である七折坂層に挟在され,その後の相対的隆起と侵食により露出が良好な会津盆地西縁丘陵において,火砕流堆積物の詳細な記載岩石学的特性を明らかにし,層序と火砕流に伴う降下火山灰との対比について再検討した.
その結果6枚の火砕流堆積物,すなわち下位から隈戸,赤井,芦野,西郷,勝方,天栄の各火砕流堆積物を認定した.また,隈戸・赤井の両火砕流間において,関東南部に分布する黒川テフラ(鈴木・村田,2011)に対比されるガラス質火山灰層を認定した.火砕流に伴う降下火山灰については既往研究どおりに,隈戸,赤井,芦野,勝方の各火砕流堆積物に対比される降下火山灰が関東・新潟地域(一部,東北地域)に分布することを確認した.これらは給源域の火砕流堆積物と遠隔地に分布する降下火山灰とあわせて,それぞれ白河隈戸(Sr-Kmd), 白河赤井-Kd18(Sr-Aki-Kd18), 白河芦野-Kd8(Sr-Asn-Kd8),白河勝方-U8(Sr-Kc-U8)と定義する.それらの噴出年代を関東の房総・銚子地域において確かめられた微化石層序での層位や古地磁気極性から判断すると,Sr-Kmd: 1.542–1.504 Ma, KK: 1.533–1.485 Ma, Sr-Aki-Kd18 : 1.522–1.460 Ma, Sr-Asn-Kd8: 1.219 Ma,Sr-Kc-U8: 0.922–0.910 Maとなる.現段階で知られているSr-Kmd, Sr-Aki-Kd18, Sr-Asn-Kd8,Sr-Kc-U8の分布域から求められる各降下火山灰の体積は約23 km3となる.これらの体積とYamamoto (2011)に基づく火砕流堆積物の推定体積によれば,天栄火砕流を除く各噴火においての総噴出量(カルデラ外堆積分の火砕流堆積物と降下火山灰を合算したもの)は,38–173 km3となる.そして白河火砕流堆積物群の累積体積は498 km3 (DRE: 199 km3)であり,Sr-Kmd噴出からSr-Kc-U8噴出にかけての噴出率は0.3 km3/kyr (DRE)となり,日本列島第四紀火山としては平均的である.一方,噴火間隔は30万年〜8万年間以下と一定ではない.
引用文献
吉田・高橋(1991)地質学雑誌,97,231–249.山元(1999)田島地域の地質(5万分の1地質図幅).黒川ほか(2008)新潟大学教育人間科学部紀要自然科学編,10,63–82.村田・鈴木(2011)第四紀研究,50,49–60.鈴木・村田(2011)地質学雑誌,117,379–397.Yamamoto (2011) Journal of Volcanology and Geothermal Research, 204, 91–106.
その結果6枚の火砕流堆積物,すなわち下位から隈戸,赤井,芦野,西郷,勝方,天栄の各火砕流堆積物を認定した.また,隈戸・赤井の両火砕流間において,関東南部に分布する黒川テフラ(鈴木・村田,2011)に対比されるガラス質火山灰層を認定した.火砕流に伴う降下火山灰については既往研究どおりに,隈戸,赤井,芦野,勝方の各火砕流堆積物に対比される降下火山灰が関東・新潟地域(一部,東北地域)に分布することを確認した.これらは給源域の火砕流堆積物と遠隔地に分布する降下火山灰とあわせて,それぞれ白河隈戸(Sr-Kmd), 白河赤井-Kd18(Sr-Aki-Kd18), 白河芦野-Kd8(Sr-Asn-Kd8),白河勝方-U8(Sr-Kc-U8)と定義する.それらの噴出年代を関東の房総・銚子地域において確かめられた微化石層序での層位や古地磁気極性から判断すると,Sr-Kmd: 1.542–1.504 Ma, KK: 1.533–1.485 Ma, Sr-Aki-Kd18 : 1.522–1.460 Ma, Sr-Asn-Kd8: 1.219 Ma,Sr-Kc-U8: 0.922–0.910 Maとなる.現段階で知られているSr-Kmd, Sr-Aki-Kd18, Sr-Asn-Kd8,Sr-Kc-U8の分布域から求められる各降下火山灰の体積は約23 km3となる.これらの体積とYamamoto (2011)に基づく火砕流堆積物の推定体積によれば,天栄火砕流を除く各噴火においての総噴出量(カルデラ外堆積分の火砕流堆積物と降下火山灰を合算したもの)は,38–173 km3となる.そして白河火砕流堆積物群の累積体積は498 km3 (DRE: 199 km3)であり,Sr-Kmd噴出からSr-Kc-U8噴出にかけての噴出率は0.3 km3/kyr (DRE)となり,日本列島第四紀火山としては平均的である.一方,噴火間隔は30万年〜8万年間以下と一定ではない.
引用文献
吉田・高橋(1991)地質学雑誌,97,231–249.山元(1999)田島地域の地質(5万分の1地質図幅).黒川ほか(2008)新潟大学教育人間科学部紀要自然科学編,10,63–82.村田・鈴木(2011)第四紀研究,50,49–60.鈴木・村田(2011)地質学雑誌,117,379–397.Yamamoto (2011) Journal of Volcanology and Geothermal Research, 204, 91–106.