公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

イブニングセッション

現地発表

イブニングセッション2
バイオロジーのcutting edge ─網羅的解析の現状と未来─

2024年7月6日(土) 18:00 〜 19:00 第4会場① (幕張メッセ国際会議場 3F 301-1 )

コーディネーター:大野 充昭(岡山大)

[ES2-1] バイオロジーのcutting edge ─網羅的解析の現状と未来─

*加来 賢1 (1. 新潟大学大学院医歯学総合研究科生体歯科補綴学分野)

[Abstract]
 細胞外マトリックスは細胞外微小環境として細胞に直接的に影響を及ぼすことから,組織特異的な細胞外マトリックス組成が,個々の組織における機能発現に重要であると考えられている.また老化やさまざまな病態においても,細胞外マトリックスが重要な役割を果たしていることが明らかとなるにつれ,その重要性が再認識されている.
 発表者は質量分析装置を用いたプロテオーム解析を専門とする研究者との共同研究により,細胞外マトリックスに特化したプロテオーム解析法の開発に取り組み,歯根膜や骨組織における細胞外マトリックスの組成解析を行っている.難溶性である細胞外マトリックスの可溶化や,検出された質量値をデータベースと一致させる条件の至適化,定量値を得るための正規化など,信頼性の高いタンパク組成を取得するためには,さまざまな生化学的なアプローチが必要である.一方,発現変動タンパクを定義した後は,遺伝子発現解析で用いられるものと同じプラットフォームでの解析が可能であり,特に近年ではブラウザベースの解析ツールが数多く開発され,かならずしもRなどの統計解析ソフトを駆使せずとも高度な解析を行うことも可能となってきた.本講演では歯周組織の細胞外マトリックスを対象としたプロテオーム解析の実際と,遺伝子発現データとの比較解析例を紹介し,細胞外マトリックスのプロテオーム解析によって何が見えてくるのか,そしてその結果が補綴歯科にもたらすインパクトについて議論したい.