公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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ランチョンセミナー

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ランチョンセミナー9
ショートファイバー補強型コンポジットレジンによるバイオミメティックコンセプト

2024年7月7日(日) 12:20 〜 13:00 第4会場 (幕張メッセ国際会議場 3F 301)

協賛:株式会社ジーシー

[LS9] ショートファイバー補強型コンポジットレジンによるバイオミメティックコンセプト

*新谷 明一1 (1. 日本歯科大学生命歯学部歯科理工学講座)

[Abstract]
バイオミメティクスとは,進化の過程の中で最適化された生物の微細な形態や構造を模倣することで,その機能を獲得する技術的アプローチ法です.歯科におけるバイオミメティックコンセプトは,失われた歯の構造を,その物性に近い人工材料で歯冠形態を回復し,天然歯と同じ機能を獲得しようとする試みとなります.エナメル質は耐酸性に優れ硬く脆い性質を有します.そのため,エナメル質を模倣できる材料としてはセラミックスが適当と言えます.それに対し,象牙質は無機質に加えてコラーゲン繊維などの有機質が約20%ほど含まれているため,エナメル質より柔らかく弾力性を有した物性を示します.象牙質を模倣できる材料として従来型コンポジットレジンが挙げられますが,その物性は象牙質に比べて硬く高剛性で,エナメル質に近い脆性材料となります.そのため,硬い外表面を支える内部構造としては不向きな材料と言えます.このような背景から,2003年からフィンランド・トゥルク大学で研究が行われてきたショートファイバー補強型コンポジットレジン(SFRC)は,硬く脆い外部構造をガラス繊維の持つ“しなやかさ”を利用して強固に支える材料として開発されました.細かく裁断されたガラス繊維をあらゆる方向に配合することで,高い破壊靭性と柔軟な曲げ弾性率が両立されており,象牙質の物性に非常に近い複合材料と言えます.本セミナーではショートファイバー補強型コンポジットレジンの諸性質を中心に,バイオミメティックコンセプトに必要な材料学について説明させていただきます.

トピックス
●ショートファイバー補強型コンポジットレジン
●生体模倣
●バイオミメティックレストレーション