公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

一般口演

現地発表

一般口演2
有床義歯2

2024年7月6日(土) 13:40 〜 14:10 第3会場 (幕張メッセ国際会議場 2F 201)

座長:金澤 学(医歯大)

[O1-6] 全部床義歯における人工歯の材質が口腔関連QOLに与える影響

*古玉 明日香1、村島 直道1、野川 敏史1、高山 芳幸1、藤井 法博2、吉本 龍一2、横山 敦郎1 (1. 北海道大学 大学院歯学研究院 口腔機能学分野 口腔機能補綴学教室、2. 株式会社松風研究開発部)

[Abstract]
【目的】
全部床義歯においては,硬質レジン歯が調整や排列のしやすさから最も多く使用されている.一方,陶歯は,耐摩耗性に加えて,光沢や透明感に優れ審美的であり,プラークが付着しにくく衛生的なことから,その有効性は高いと考えられる.これまで人工歯材料の違いによる臨床的評価は行われていない.本研究の目的は,全部床義歯の人工歯材料の違い(陶歯または硬質レジン歯)が無歯顎者の口腔関連QOLに与える影響について比較・検討することである.
【方法】
2018年1月から2023年12月31日の間に,北海道大学病院義歯科を受診した患者のうち,上下顎とも全部床義歯の新製の必要がある者を対象とした.研究デザインは非盲検ランダム化並行群間比較試験として,陶歯と硬質レジン歯をランダムに割り付け,通法に従い上下顎全部床義歯を製作した. 義歯の評価は,義歯装着前(BL),義歯装着3か月後(3M),義歯装着6か月後(6M),義歯装着12か月後(12M)で行った. 主要評価項目は陶歯と硬質レジン歯の義歯装着後3か月のOHIP-EDENT-JスコアをWilcoxsonの順位和検定にて比較し,副次的評価項目は各評価時点においてWilcoxsonの順位和検定にて比較した.本研究は,国立大学法人北海道大学臨床研究審査委員会(jRCT番号:jRCTs012180009)の承認のもと行った.なお,本研究は株式会社松風から,研究資金の提供を受けて実施している.
【結果と考察】
 66名の患者から同意を取得し,症例登録した.男性が26名,女性が40名であった.このうち脱落が16名,3Mの検査を実施した者は47名,6Mの検査を実施した者は37名,12Mの検査を実施した者は22名であった. 主要評価項目である3Mの陶歯と硬質レジン歯のOHIP-EDENT-Jスコアには,有意差は認められなかった(p = 0.448)(図).また,各副次的評価について,各評価時点における硬質レジン歯と陶歯の間に有意差を認めなかった. 本研究は,人工歯材料をランダムに割付け,さらに硬質レジン歯と陶歯の形態が同一の製品を使用したことで,各群の違いは人工歯の材質のみであったと考えられる.各時点の硬質レジン歯と陶歯で口腔関連QOL,咀嚼能率,満足度に差がないことが示され,材質による影響は少ないと考えられる.