公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

一般口演

現地発表

一般口演10
口腔機能/症例

2024年7月7日(日) 13:40 〜 14:10 第3会場 (幕張メッセ国際会議場 2F 201)

座長:飯沼 利光(日本大)

[O2-4] 横断的および縦断的調査による関節円板側方転位の新規診断基準の探索

*植田 陽1、高岡 亮太1、高原 悠樹1、森岡 詞音1、山本 梨絵1、大野 恵美1、秦 健斗1、野村 健一1、奥田 眞夫2、石垣 尚一1 (1. 大阪大学大学院歯学研究科 口腔科学専攻 口腔再建学・包括歯科学系部門 クラウンブリッジ補綴学・顎口腔機能学講座、2. 関西支部)

[Abstract]
【目的】
 関節円板転位の多くは前方転位であり,顎関節部痛や変形性顎関節症(OA)のリスクファクターであることが報告されている.一方,関節円板には側方転位(SW)も存在し,その割合は少なくない.SWと関連した顎関節部痛やOAが存在するため,SWの存在を無視できないが,臨床症状やOAの存在が考慮された診断基準はない.本研究の目的は,DC/TMDに基づく臨床検査ならびにMR検査を用いたSWの横断的および縦断的調査により,臨床上有用なSWの新規診断基準を確立することである.
【方法】
 横断的調査では,DC/TMDに基づく臨床検査およびMR検査を行った顎関節症患者383人を対象とし,そこから前方転位は認めずSWのみを認めた93関節を抽出した.冠状面MRIにて,下顎頭内外側径を測定し,その長さを,関節円板に被覆されていない部分の長さで割り,100をかけたものを,SWの位置異常の程度を表す指標(DDI)とした.まず,従属変数を OAの有無,説明変数を年齢,性別,DDI,SWの動態異常(復位性または非復位性)とした二項ロジスティック回帰分析を実施した.次に,ROC曲線分析により,OAおよび顎関節部痛を検出するDDIのカットオフ値を求めた.縦断的調査では,2時点でMR検査を受けたSWを有する患者の52関節を対象とした.求めたDDIのカットオフ値を使用し,OAの経時的変化を2名の歯科医師により評価した.
【結果と考察】
 二項ロジスティック回帰分析では,DDIとOAの有意な関連が認められた(p=0.003).ROC曲線分析より算出された,OAおよび顎関節部痛を検出するDDIの最適カットオフ値は,それぞれ35.6%(感度:86%,特異度:90%),27.6%(感度:62% 特異度:82%)であった.感度を上げるため,また,臨床に使用可能なシンプルな値となるように,カットオフ値を25%に設定した.縦断的調査では,9関節に明らかな下顎頭の経時的骨変化を認めたが,その全てがDDIが25%以上の群であった.これまでSWの診断基準は“下顎頭の内側極あるいは外側極を関節円板が越えるもの”とされてきたが, 顎関節部痛およびOAの存在を加味した場合,基準値はDDIが25%,すなわち“SWの転位の程度が下顎頭の内外側径の4分の1を超えるかどうか”,がMR検査を用いたSWのスクリーニング検査として役立つ可能性が示唆された.