公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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口腔機能

2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-109] 小型電子端末を用いた施設入居高齢者の口腔健康状態評価

*赤穂 和樹1、渡辺 昌崇1、浪川 夏絵1、鈴木 鵬生1、鈴木 啓之1、古屋 純一1 (1. 昭和大学歯科病院 口腔健康管理学講座)

[Abstract]
【目的】
 認知機能の低下と口腔健康状態の悪化に有意な関連が報告されており,施設入居が必要な要介護高齢者においては,訪問診療による積極的な口腔健康管理が重要である.しかし,訪問診療による専門的な口腔健康管理を行える人材は不足しており,医療資源の地域格差や,多職種連携における問題など,施設入居高齢者の口腔健康管理に関する障壁が存在している.近年,オンライン診療に代表される小型電子端末を用いた口腔健康状態の評価は,医療の効率化や多職種連携にとって有用と考えられる.特に,映像記録を用いた口腔健康状態の評価は情報量が多く,今後の発展が期待できる.しかし,その詳細は十分には明らかになっていない.そこで本研究では,小型電子端末を用いた口腔健康状態評価の有用性を解明することを目的とした.
【方法】
 研究参加者は2021年4月から2022年12月までの間に訪問診療で受診した施設入居患者60名(平均年齢86.1±7.7歳)とした.歯科医師1名がOral Health Assessment Tool(OHAT-B)を用いて口腔健康状態の評価を行い,小型電子端末を用いて口腔内を動画記録し,カンファレンス時に別の歯科医師2名と動画撮影を行った1名の計3名が動画上で口腔健康状態の評価を行った(OHAT-V).その後,OHAT-BとOHAT-Vの信頼性(級内相関係数,ピアソンの相関係数),OHAT下位項目の一致度(κ係数)を検証した.有意水準は0.05とした.
【結果と考察】
 OHAT-B合計点の平均値は5.0±2.3であった.OHAT-B合計点とOHAT-V合計点における検者内信頼性は0.93,相関係数は0.93と高い値を示した.また,検者間信頼性も0.89,相関係数は0.90と高い値であり,検者内,検者間ともに高い信頼性を認めた.さらに,下位項目におけるκ係数も検者内,検者間ともに一定の一致度を認めた.一方,舌,唾液の評価においては,OHAT-BとOHAT-Vとの間での評価が異なる傾向にあった.現地での評価は全身状態等も含めた総合的な評価になった可能性,映像での評価は静止や拡大,繰り返し再生が可能であるため,より精緻な評価になったと考えられた.また,唾液の粘着性や物性までは動画上は判断が難しく,評価に差が認められたと考えられた.以上より,施設入居者における映像記録による口腔健康状態評価の有用性が示唆された.