公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

ポスター発表

現地発表

口腔機能

2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-110] 地域歯科医院来院患者におけるオーラルフレイルと食品摂取の多様性との関連

*五十嵐 憲太郎1、飯塚 晃司1、栗谷川 輝1、櫻井 萌絵1、藤井 あゆ1、山崎 亜莉紗1、鈴木 亜沙子1、三浦 俊和2、樽川 禅2、伊藤 誠康1、河相 安彦1 (1. 日本大学松戸歯学部 有床義歯補綴学講座、2. 日本大学大学院松戸歯学研究科 有床義歯補綴学)

[Abstract]
【目的】
 口腔機能の低下に着目が集まり,オーラルフレイル(OF)等の新たな概念が提唱されるようになった.口腔機能の低下は栄養摂取の偏りと関連することが報告されている.しかし,地域歯科医院での平均的な診療時間は短く,食習慣や栄養状態の評価・指導は容易でない.一方,栄養状態の評価法に食品摂取の多様性(Dietary Variety)1) の評価がある.この手法を口腔機能管理に活用することで,咀嚼機能の改善と会わせて簡便かつ実効性のある栄養指導が実施できることが期待される.本研究の目的は,地域歯科医院来院患者におけるOFと食品摂取の多様性の関連を明らかにすることである.
【方法】
 地域歯科医院に来院した補綴歯科治療が必要な患者82名(平均年齢74.9 ± 6.2歳,男性35名,女性47名)を対象とした.OFの評価にはTanakaらのOF-5を用い,現在歯数(20歯未満),咀嚼困難感,嚥下困難感,口腔乾燥感,オーラルディアドコキネシス(ODK)/ta/音(6回/秒未満)の5項目中2項目以上該当した場合をOFとした.食品摂取の多様性の評価は10品目(肉類,魚介類,卵類,牛乳,大豆製品,緑黄色野菜類,海藻類,果物,いも類,油脂類)の食品群の1週間の摂取頻度から得点化(ほぼ毎日食べる:1点,それ以外:0点,10点満点)した食品摂取の多様性得点(DVS)を用いた.OFの有無と各食品群の該当状況についてカイ二乗検定を用いた(有意水準5%).
【結果と考察】
 対象者のOFの該当状況は67名(81.7%),DVSの得点の平均は6.4 ± 2.5点であった.各食品群でOFの有無で摂取状況に有意な差がみられた食品群は卵(p = 0.037)であった.一方,他の食品群については有意な差はみられず,またOF群の摂取状況が非OF群よりも摂取頻度が高い食品群も認められた.本研究の対象者は補綴歯科治療が必要な患者であり,口腔機能の低下がみられやすい集団であった.以上より,食品摂取の多様性と口腔機能低下との関連は部分的に示唆されたが,対象者の嗜好に左右される可能性が考えられ,歯科治療及び口腔機能管理時に口腔機能と合わせた栄養評価を行う重要性が示された.
【参考文献】
1) 熊谷 修, 渡辺修一郎, 柴田 博ほか. 地域在宅高齢者における食品摂取の多様性と高次生活機能低下の関連. 公衛誌 2003;50:1117-1124.