公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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教育

2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-121] 歯型彫刻実習製作物の定量的評価の検討

*江口 香里1、加来 賢2、ロサレス マルセロ2、秋葉 陽介1、秋葉 奈美1、魚島 勝美2 (1. 新潟大学医歯学総合病院 冠・ブリッジ診療科、2. 新潟大学大学院医歯学総合研究科 生体歯科補綴学分野)

[Abstract]
【目的】
 機能的で審美性に優れた補綴治療を達成するためには,歯の形態を忠実に再現する技能が不可欠である.歯学部の技能教育における製作物の評価においては,エキスパートの主観的評価もある程度の妥当性を持つとは言われているものの,評価者間でのばらつきが生じやすいことがしばしば問題となる.評価の定量化や可視化は困難であるが,明確な評価項目と基準の設定によって評価にある程度の客観性を持たせることは可能である.総括評価のみならず形成的評価の観点からも,信頼性の高い製作物評価法の確立は重要な課題である.そこで本研究では,歯型彫刻実習の製作物を定量的に評価するための採点用評価項目と基準を策定し,その信頼性について検討した.
【方法】
 本研究では新潟大学歯学部歯学科3年生を対象とした.有歯顎模型(D50-500AU/ 512,ニッシン)の複印象を採得し,硬石膏(ニュープラストーン,ジーシー)を注入して,下顎右側第一大臼歯の歯冠部のみが欠損した石膏模型を製作した.学生は規定時間以内に当該部における歯冠形態を,インレーワックスを用いて回復した.評価に先立ち,5つの観点から19個の評価項目を選定し,項目ごとの到達度を4段階の評価尺度としてそれぞれの評価基準を記載した採点用ルーブリックを作成した(表).製作物の評価は複数人の実習担当教員が行った.評価者は,まず主観的評価によって製作物の評価を行い,次に作成した採点用ルーブリックを用いて製作物の評価を行った.評価方法,評価者,採点用ルーブリックの各評価項目について相関分析を行い,それぞれの一致度を検討した.
【結果と考察】
 全ての評価者において,主観的印象評価と今回作成した採点用ルーブリックを用いた評価によるそれぞれの評価総得点の間には正の相関がみられた.また,採点用ルーブリックの各評価項目における評価者間一致度はいずれも良好であった.
 これらの結果から,本採点用ルーブリックの評価項目と基準は,歯学部技能教育における製作物の評価ツールとして信頼性が高いことが示唆された.また,評価基準の記載内容も明瞭であることが示された.
 今後は,今回選定した評価項目を用いて,学生が自らの到達度を可視化できるツールを開発し,その信頼性や教育効果について検討する予定である.
 本研究は新潟大学倫理委員会による審査の下に行った(承認番号:2023-0276).