公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

ポスター発表

現地発表

有床義歯

2024年7月6日(土) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-13] 義歯洗浄剤の洗浄水温度による微生物除去効果の検討

*戸澤 聖也1、西 恭宏1、山下 裕輔1、原田 佳枝1、池田 菜緒1、末廣 史雄2、村上 格2、西村 正宏1 (1. 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科口腔顎顔面補綴学分野、2. 鹿児島大学病院 成人系歯科センター 義歯インプラント科)

[Abstract]
【目的】
 義歯の化学的清掃には浸漬型の義歯洗浄剤が広く用いられている.米国歯科医師会による義歯のケアとメンテナンスのガイドライン(2011年)では,「義歯は効果的な義歯洗浄剤を用いて,毎日洗浄されるべき」と示されたが,義歯洗浄剤の使用頻度や効果的方法についてのエビデンスはなかった.過酸化物系義歯洗浄剤を溶解する水温は,60~70℃を効果的とした報告が1件あるのみであり¹⁾,メーカーは40℃程度のぬるま湯への浸漬を推奨している.このため,今回,市販の過酸化物系義歯洗浄剤を浸漬する適正な水温を知るため,異なる溶解水温での微生物除去効果を検討したので報告する.
【方法】
 2020年11月から2023年12月において,当科にて全部床義歯およびコンプリートオーバーデンチャーを装着後に経過観察に来院し研究の同意が得られた者の上下顎義歯の47床を被験義歯とした(鹿児島大学疫学研究等倫理委員会承認:190226疫-改).洗浄方法は,義歯洗浄剤の溶解水温度を,15℃,25℃,40℃の3種として,義歯洗浄剤(酵素入りポリデント,GSK)の溶解水中に義歯を浸漬した状態で15分間洗浄した.洗浄前と洗浄後において義歯粘膜面半側とその対側をそれぞれ滅菌綿棒(ふきふきチェックⅡ,栄研器材)にて2回往復スワブして微生物を採取し,グラム陽性球菌,グラム陰性桿菌,カンジダ菌を同定,定量して全微生物量(CFU)で評価した.統計分析は,SPSS ver.28(IBM)を用い,Kruskal-Wallis testとその後の多重比較を行った(有意水準p<0.05).
【結果と考察】
 対象義歯47床は,15℃群17床,25℃群15床,40℃群15床であり,洗浄前の微生物量には群間の有意差を認めず(p=0.12),洗浄後においても,溶解水温度による有意差は認められなかった(p=0.959)(図).このことから,今回用いた義歯洗浄剤においては,温水を用いる必要はなく上水道水そのままでの使用で十分であると考えられた.今後は,他の市販義歯洗浄剤についての検討も必要である.
【参考文献】
1)Glass T, Conrad R, Bullardet J, et al. Evaluation of cleansing methods for previously worn prostheses. Compend Contin Educ Dent 2011; 32: 68-73.