症例

[P-131] 歯周炎患者にボーンアンカードブリッジで補綴治療を行った一症例

*齊藤 寛之¹、新見 大輔¹、相澤 真奈美¹、𠮷岡 凜¹、冨田 里緒¹、前野 実香¹、トゥアソン さら¹、佐藤 隆介¹、内倉 慶一朗¹、桝谷 隆夫¹、永田 浩司^1,2 (1. 東京支部、2. 東京医科歯科大学生体補綴歯科学分野)

[Abstract]
【緒言】
　重度の慢性歯周炎患者に対する補綴治療を行った場合, 補綴前処置として, 歯周治療, 矯正 治療を行った包括的歯科治療が一般的である. しかしながら, ¹⁾ 同治療は治療期間が長期化傾向であり, 治療計画も複雑かつ患者の負担も大きく, 期待値, 経済性, コンプライアンス, 審美性も含まれる. 本症例では, 戦略的抜歯後インプラント治療を行い良好な結果が得られたので報告する.
【症例の概要・治療内容】
　患者は57歳の女性, 咀嚼困難および審美不良を主訴に来院した(図１a, b, c, d, e). 診査の結果, 不良可撤性義歯装着および広汎型慢性歯周炎ステージIVグレードCによる咀嚼障害および審美障害と診断された. 残存歯を可及的に保存し部分床義歯補綴(A)あるいはインプラント支持型補綴 (B)を行った方法と, 戦略的抜歯を行った, 抜歯後即時埋入および即時荷重によるインプラント治療法(C)を提案したところ, 患者は(C)を希望した. 同治療によるリスクおよび治療内容を説明し同意が得られたため治療を行った. #14, #25, #27抜歯後, #15, #12, #21, #22, #25にインプラント即時理入を行った, すべて初期固定35Ncm以上を獲得することができため, 埋入後即時荷重を行った. スクリュー固定式暫間補綴装置を手術当日に15Ncmで締結し, 手術3か月後, 口腔機能の評価および歯冠形態の調整を行った. 患者および術者は審美的, 機能的に満足していたため, 最終補綴装置に移行した. 最終補綴装置にはモノリシック4Y-PSZジルコニアを使用したスクリュー固定式ボーンアンカードブリッジとし, 15Ncmで締結した. 適合状態および咬合接触状態に問題がなかったためメインテナンスに移行した.
【経過ならびに考察】
　最終補綴装置装着後1年2か月経過後, 咬合接触状態および歯周組織検査の結果は安定した経過を辿っている (図２f, g, h, i, j). インプラント補綴装置周囲の機械的合併症も認められなかった. 今後, 長期に渡り注意深く経過を追っていく必要がある症例である.
【参考文献】
1) Gustavo A, Pablo GM, Stephen S, et al. A novel decision-making process for tooth retention or extraction. J Periodontal 2009; 80: 476-91.

(発表に際して患者の同意を得た. )