公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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学会主導研究

2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-153] 認知症と軽度認知障害患者での咀嚼能力質問票の妥当性と信頼性:ECCOプロジェクト

*笛木 賢治1、眞鍋 雄太2、星 憲幸3,4、富田 凛太郎4、木本 克彦4、ECCO プロジェクト (1. 東京医科歯科大学咬合機能健康科学分野、2. 神奈川歯科大学歯学部臨床科学系医科学講座認知症・高齢者総合内科、3. 神奈川歯科大学教育企画部、4. 神奈川歯科大学歯学部歯科補綴学講座クラウンブリッジ補綴学分野)

[Abstract]
【目的】
 研究企画推進委員会では,認知機能と口腔機能との関連について日本老年精神医学会と連携研究を推進している.本研究では,認知症と軽度認知障害(MCI)患者を対象とした咀嚼能力質問票の妥当性と信頼性を検証した.
【方法】
 神奈川歯科大学附属病院または附属横浜クリニックに通院中で認知症専門医により認知症またはMCIと診断された患者52名と家族52名を対象とした.咀嚼能力は,10品目の質問票(咀嚼スコア10),柔らかい/少し噛む/しっかり噛む食品を対象とした質問票(咀嚼スコア3),普段の食事でどのくらい噛めるかについての質問票(咀嚼総合スコア)で評価した.家族は,患者の普段の食事の状況で判断して回答するよう指示した.繰り返し測定の信頼性を評価するために,12名の患者と家族では次回来院時に再評価を行った.各質問票のスコアは0-100点に換算した.妥当性の分析では,各質問票で,患者と家族間のスコアの一致率と偏差と,質問票間の相関(ρ)を算出した.信頼性の分析では,2回の評価のスコアの一致率と偏差を算出した.有意水準は0.05とした.
【結果と考察】
 認知症群の平均値は,咀嚼スコア10:89/85(患者/家族),咀嚼スコア3:95/94,咀嚼総合スコア:88/84,MCI群では, 咀嚼スコア10:90/87(患者/家族),咀嚼スコア3:97/95,咀嚼総合スコア:92/88であり,両群とも患者評価が僅かに高い傾向を示した.患者と家族のスコア一致率(偏差)は,60%(3)(咀嚼スコア10),94%(1)(咀嚼スコア3),96%(8)(咀嚼総合スコア)であった.質問票間の相関は中程度であった(ρ=0.50-0.61, p <0.001). 再検査でのスコア一致率(偏差)は,患者評価では58%(6)(咀嚼スコア10),92%(3)(咀嚼スコア3),100%(0)(咀嚼総合スコア),家族評価では,58%(2)(咀嚼スコア10),92%(-7)(咀嚼スコア3),92%(10)(咀嚼総合スコア)であった.
 以上の結果から,本研究で用いた咀嚼能力評価質問票は,認知機能が低下した集団でも概ね妥当であり,信頼性をもって評価できると考えられた.ただし,本研究では咀嚼能力が高い患者の割合が高いため,今後,咀嚼能力が低い集団での検討が必要である.