公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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有床義歯

2024年7月6日(土) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-28] クリームタイプ義歯安定剤成分中の組成と粘度、接合力の関係についての検討

*佐藤 純子1、岡﨑 ひとみ1、村田 比呂司1 (1. 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科歯科補綴学分野)

[Abstract]
【目的】
 クリームタイプ義歯安定剤は唾液の分泌量が低下し,顎堤の吸収が顕著な患者など,義歯の維持安定性が低下した患者に対して維持安定の不足を補うために使用されている.しかし現在,理想的な性質を有するものは開発されていない.今回,持続性のあるクリームタイプ義歯安定剤の開発をめざし,組成と粘度,義歯床との接合力との関係を解明することを目的とした.
【方法】
 本研究ではクリームタイプ義歯安定剤の成分として,基材(ワセリン〈V〉,流動パラフィン〈LP〉)と水溶性高分子(メトキシエチレン無水マレイン酸〈PVM-MA〉,カルボキシメチルセルロースナトリウム〈CMC〉)を用いた.これらの組成を変化させた12種類の材料を製作し,それぞれの粘度,義歯床への接合力を評価した(表1).粘度はストレス制御式レオメーター(Discovery HR-2,TAインスツルメント社製)を使用し,ずり速度0.1~100sec-1で測定し,1sec-1の粘度を算出した.接合力は小型卓上試験機(EZ-TEST,島津製作所製)を用いて,ISO規格による方法と試料の厚みを一定(1mm)とする方法で測定し,それぞれ接合力を算出した.統計は単回帰分析を行った.
【結果と考察】
 各材料の粘度は全成分における水溶性高分子の割合,基材中のVの割合,水溶性高分子の成分中のPVM-MAの割合が,それぞれ高いほど粘度は大きくなる傾向であった(図1).粘度は義歯床での広がり,すなわち義歯と床下粘膜との適合性に影響し,粘度が低いほど薄く,均等に広がると考えられる.また接合力について,ISO規格による方法では全成分における水溶性高分子の割合,水溶性高分子の成分中のPVM-MAの割合が大きくなるほど接合力は大きくなった.また厚みを一定とする方法では全成分における水溶性高分子の割合,基材中のVの割合が大きくなるほど接合力が大きくなる傾向であった (p<0.05).以上の結果より,クリームタイプ義歯安定剤の主成分の割合を変化させることで粘度と接合力をコントロールできることが示唆された.本研究はクリームタイプ義歯安定剤の組成と粘度および義歯床との接合力との関係の一端を明らかにし,持続性の高いクリームタイプ義歯安定剤の開発に有用な知見を与えると考えられる.今後は成分と粘着性の持続性について検討し,新規義歯安定剤の開発に取り組んでいく.