公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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ポスター発表

現地発表

インプラント

2024年7月6日(土) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-76] 単冠におけるインプラント体へのアバットメントスクリュー固定時のトルク値

*山根 進1、山根 晃一1 (1. 中国四国支部)

[Abstract]
【目的】
 単冠の場合,アバットメントをインプラント体にスクリュー固定する時,インプラント体自体が回転することがある.今回,軟らかい骨質の模型にインプラント窩を形成し,小さな直径のインプラント体を埋入し,回転初動トルク値を検討した.
【方法】
 インプラント体は直径2.9mm,長さ10mmのStraumann<sup®BLTインプラント(バーゼル,スイス)を使用した.下顎無歯顎模型は,タイプ3(Lekholm & Zarbの骨質分類,軟らかい骨質)のドリリング実習用顎模型[E7-X.1136]((株)ニッシン,京都)を18個(A〜R)使用し,1個の模型の犬歯間に6個のインプラント窩を形成した.グループ①(A,B,C)では,マニュアルに従い,ニードルドリル(直径1.6mm),パイロットドリル(直径2.2mm)を用い,回転速度800rpmで深さ10mmのインプラント窩を形成した.同様にグループ②,③,④,⑤では,パイロットドリルの深さを8,6,4,2mmとし,グループ⑥(P,Q,R)では,ニードルドリルのみでインプラント窩を形成した.回転初動トルク値はラボトルクドライバ((株)京都機械工具,京都)で測定した.トルク値測定前の動揺度は共振周波数解析装置オステルISQアナライザ(Osstell AB, イーテボリ,スウーデン)を用いて測定した.
【結果と考察】
 測定した108回の回転初動トルク値の平均値±標準偏差値は20.26±2.32Ncmであった.グループ①のマニュアルに従い埋入したインプラント体の回転初動トルク値は17.39±2.01Ncmであり,他のグループの回転初動トルク値と比較して低い値を示し(t検定,p<0.006),⑥が一番高い値22.16±1.77Ncmを示した.ISQ値は49.85±1.32であったが,①と他のグループとの差はなかった(p>0.26). 回転初動トルク値の分散最低下限値(平均値―2×標準偏差値(p=0.025))を求めると,⑥の場合18.62 Ncmであった.マニュアルにおける骨質タイプ4(非常に軟らかい骨)と同様に,タイプ3も,ニードルドリルのみが推奨されると考察され,インプラント体が回転しない安全なトルク値は18.62Ncm以下と想定された.軟らかい骨に小さな直径のインプラント体を埋入した時は,特に細心の注意をもってスクリュー固定をおこなうべきである.