公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-91] ストレプトゾトシン誘発糖尿病モデルマウス下顎骨の機械的特性評価と関与因子の探索

*渡邉 知恵1、Zhong Jingxiao1,2、柴田 陽1 (1. 昭和大学 歯学部 歯科理工学講座、2. シドニー大学 工学部 航空宇宙工学分野)

[Abstract]
【目的】
 糖尿病はインスリン作用不足による骨代謝異常が懸念されている.以前,我々は糖尿病患者の義歯床下顎堤の骨密度の減少を報告した.義歯床下の顎骨は経時的な咬合荷重をうけるため,骨質が改変される可能性がある.そこで,時間依存の性質をもつ粘弾性に着目し,多要素粘弾性モデル式1) に骨組織を当てはめることによって弾性/粘性応答の数値化を目指した.本研究では,糖尿病モデルマウスを対象に下顎骨の機械的特性評価を行い,さらに分子構造を探索することで,特性との関与因子を明らかにすることを目的とした.
【方法】
 8週齢の雄性C57BL/6Jマウス24匹を使用した.糖尿病群には9週齢時にストレプトゾトシンを,対照群には緩衝液を5日間連続投与し,10%砂糖水を与えた.その後毎週空腹時血糖を測定し,糖尿病群で空腹時血糖が300mg/dL以下のマウスは対象から除外した.21週齢時に麻酔下での安楽殺を行い,下顎骨をエポキシ樹脂に包埋し耐水研磨紙を用いて研磨した.機械的特性評価は,トライボインデンター(TI 950)を使用して実施された.さらにラマン分光分析(RXN1)によって各種分子構造を算出した.統計解析は,Mann–Whitney U 検定を行った.
【結果と考察】
 下顎皮質骨の瞬間弾性係数は糖尿病群で有意に低かった(p < 0.05).さらに糖尿病群の主要な粘性応答値は対照群の半分以下であった.また,瞬間弾性係数は糖尿病群でミネラル/コラーゲン比と正の相関を認め,これは対照群でも同じ傾向が確認された.一方,粘性応答は対照群でコラーゲンマトリックスの乱れを示すアミドⅢと負の相関を認めたが,糖尿病群では傾向を認めなかった(図).以上より,糖尿病群ではアミドⅢのほかにも粘性応答を左右する因子の存在が推察された.本結果は,糖尿病モデルマウスの顎骨の脆弱性を分子構造および機械的特性の両面から裏付けるものと考えられた.
【参考文献】
1) Watanabe C, Zhong J, Yamashita S et al., Mechanical insights into jawbone characteristics under chronic kidney disease: A comprehensive nanoindentation approach. J Mech Behav Biomed Mater 2024; 154: 106506.