公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-95] 脱細胞化歯根膜細胞シート上で培養したマウス歯根膜細胞の網羅的遺伝子発現解析

*小林 水輝1、加来 賢1、土橋 梓1、小野 喜樹1、Hlaing Pwint Phyu1、魚島 勝美1 (1. 新潟大学大学院 生体歯科補綴学分野)

[Abstract]
【目的】
 培養歯根膜細胞(PDLC)と自らが分泌した細胞外マトリックス(ECM)から成る歯根膜細胞シート(PDLC-sheet)は歯周組織再生基材として有効とされる.PDLC-sheetは,そこに内在するECMが歯根膜組織と近似した細胞外環境を提供することによりPDLCの組織再生能を活性化すると考えられるが,その詳細は未解明である.本研究では脱細胞化した歯根膜細胞シート(D-PDLC-sheet)のタンパク組成解析と,その上で培養したPDLCの網羅的遺伝子発現解析を行うことによって,PDLC-sheetのECMがPDLCに及ぼす影響の解明に繋げることを目的とする.
【方法】
 野生型マウスから抜去した上下顎臼歯からPDLCを採種し,長期培養によりPDLC-sheetを調整した.Sodium deoxycholateを用いてPDLC-sheetを脱細胞化することで脱細胞化歯根膜細胞シート(D-PDLC-sheet)を作製した.Guanidine HCl/HydroxylamineでD-PDLC-sheetを可溶化し,質量分析装置を用いてタンパク組成解析を行った.さらにD-PDLC-sheet上でPDLCを培養し,培養7日目にtotal RNAを回収してRNA-seqにより網羅的遺伝子発現解析を行った.対照群として通常の培養皿上で培養したPDLCと,組織中における歯根膜細胞の遺伝子発現データを取得し,3群間での比較を行った.
【結果と考察】
 タンパク組成解析の結果,D-PDLC-sheetの約40%がコラーゲンであり,約18%がプロテオグリカン等の非コラーゲン性のECMタンパクであった.k-meansクラスタリングの結果,組織中での遺伝子発現と比較して,細胞培養で増加するがD-PDLC-sheet上では減少する遺伝子群からは,コラーゲンの生合成とTGF-βシグナルに関わる遺伝子群が検出された.また細胞培養で減少するがD-PDLC-sheet上で増加する遺伝子群と,細胞培養では変化しないがD-PDLC-sheet上で増加する遺伝子群からは,ECM分解系に関わる遺伝子群が検出された.本研究の結果,D-PDLC-sheetはPDLCにTGF-βシグナルの活性化とECM分解系関連シグナルの亢進を生じさせていることが示唆された.これらが歯周組織再生に及ぼす影響についてはさらなる研究が必要である.