公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

ポスター発表

現地発表

口腔機能

2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-99] 歯の喪失が高齢者の認知機能に及ぼす影響:岩手県矢巾町における認知症コホート研究

*島田 崇史1、米澤 紗織1、金子 千洋1、伊藤 凌1、赤坂 博2、石塚 直樹2、前田 哲也2、小林 琢也1 (1. 岩手医科大学 歯学部歯科補綴学講座有床義歯・口腔リハビリテーション学分野、2. 岩手医科大学 医学部内科学講座脳神経内科・老年科)

[Abstract]
【目的】
 軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)の早期発見に,歯科医師の関与が期待されている.近年,MCIの者は,機能歯,残存歯が有意に少ない1)などの報告がされているが,歯科医師がMCIを検出するにあたりどのような診察をするべきなのか指針は示されていない.そこで本研究では,地域在住高齢者を対象に認知機能の低下した者が口腔機能の中でどの機能が低下していたか検討したので報告する.
【方法】
 研究対象者は地域在住高齢者520名(男性239名,女性281名,平均年齢76.78±5.48歳)を対象とした.対象者の群分けは,認知機能が保たれていた高齢者を健常群,MCIもしくは認知症と診断された者を認知機能低下群と分類した.歯科の健診では,口腔内診察,咀嚼能力検査,咬合力検査を実施した.また,Eichnerの分類をもとに,臼歯部の接触の残存の有無(EichnerA-1〜B-3 vs B-4〜C-3)と残存歯の接触の残存の有無(EichnerA-1〜C-1 vs C-2〜C-3)について分けた.統計分析は健常群と認知機能低下群の2群間比較をした.また研究対象全高齢者,前期高齢者,後期高齢者のそれぞれ3つに分け検討した.
【結果と考察】
 健常群に比べ,認知機能低下群では年齢,残存歯数,咀嚼能力,咬合力に有意な差を認めた.カイ二乗検定の結果,研究対象全高齢者では臼歯部の接触の残存(オッズ比1.58),咀嚼能力(オッズ比3.47)で有意な差を認めた.前期高齢者では認知機能の低下の有無に有意な差を認めた変数はなかった.後期高齢者では咀嚼能力(オッズ比4.16),咬合力(オッズ比1.75)で有意な差を認めた.本結果より,認知機能が低下している者は,残存歯数の減少だけではなく,咀嚼能力,咬合力においても低下していた.MCIの早期発見には,残存歯,咀嚼能力,咬合力を診察することが有用であることが示唆された.
【参考文献】
1) Watanabe Y, Arai H, Hirano H et al.Oral function as an indexing parameter for mild cognitive impairment in older adults. Geriatr Gerontol Int 2018; 18(5): 790-798.