公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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課題口演

現地発表

課題口演3
バイオロジー

2024年7月6日(土) 11:00 〜 12:00 第3会場 (幕張メッセ国際会議場 2F 201)

座長:江草 宏(東北大)

[課題9] BMP-2はMRONJ様モデルマウスの骨細胞ネットワークを回復させる

*ダントゥアン アイン1,2、大野 充昭1,3、土佐 郁恵2、北川 若奈1,2、大橋 俊孝1、窪木 拓男2,3 (1. 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 分子医化学分野、2. 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 インプラント再生補綴学分野、3. 岡山大学大学院 歯科・口腔インプラント科部門)

[Abstract]
【目的】 
 薬剤関連顎骨壊死 (MRONJ)は,その発症と病態に未だ不明な点が多い.一方,骨組織では,骨細胞ネットワークを形成することで,骨基質のミネラル維持や機械的ストレス応答に重要な役割を果たしており,その異常は骨代謝調節や恒常性維持の破綻につながる.そのため,骨の状態を評価する上で三次元的な骨細胞ネットワークを含めた微細構造の観察は非常に重要であるが,MRONJにおいてこれらがどのように変化しているかは未だ不明である.そこで本研究では, MRONJの発症と,骨形成タンパク質-2 (BMP-2)を用いた治療が抜歯窩周囲骨の骨細胞ネットワークを含めた微細構造および骨リモデリングへ与える影響を詳細に解析した.
【方法】
 マウスにゾレドロン酸とシクロホスファミド (ZA/CY)を3週間投与 (2回/週)し,上顎第一臼歯を抜歯した後,ZA/CYを2週間投与しMRONJ様モデルを作製した.組織を回収し,ZA/CY非投与の健常群と比較した.さらに,MRONJ様モデルの抜歯窩にb-TCPをキャリアに用いたBMP-2含有骨補填材 (BMP-2含有人工骨,株式会社オステオファーマ)の移植を行い,4週後に組織を回収し (治療群),移植なしの非治療群と比較した.走査型顕微鏡 (SEM)にて抜歯窩周囲の歯槽骨の表面構造を観察した.骨細胞ネットワークを観察するため,組織切片を作製し,細胞骨格をファロイジン,核をDAPIにて染色後,共焦点レーザー顕微鏡にて撮影した蛍光画像を三次元構築し,形態計測を行った.カルセイン動的二重蛍光骨標識法を用いて,骨リモデリングを評価した.
【結果と考察】
 SEM解析の結果,MRONJ様モデルでは,健常群と比較し抜歯窩周囲骨基質に多数のクラッキングが観察されたが,治療群では健常群とほぼ同等まで減少していた.また,MRONJ様モデルでは,抜歯窩周囲骨の骨細胞あたりの細胞突起体積 (図1),主突起数および骨形成速度 (図2)は,健常群と比較し有意に減少した.さらに,治療群では非治療群と比較しこれら全てのパラメーターが有意に増加し,健常群とほぼ同等まで回復した.
 以上より,MRONJ様モデルの抜歯窩周囲の歯槽骨では,骨基質にクラッキングが観察され,骨細胞ネットワークの減少と骨リモデリングの遅延が認められること,BMP-2含有人工骨の移植によりこれらは健常骨と同程度に回復することが明らかとなった.