[0025] 当日ブリーフレポート方式授業導入の試みによる理学療法学生の特性の検討
キーワード:BRD授業, Active-Learning, 理学療法教育
【目的】当日ブリーフレポート方式(Brief Report of the Day:以下BRDと略)授業は,南山大学の宇田光によって考案されたActive-Learning形式の授業手法である。技術習得教育である理学療法教育ではすでに演習形式授業が一般的に行われているが,座学中心の講義形式の授業では未だ一方通行の従来型講義が多勢を占めていると考えられ,FD活動等授業の工夫を求められる事も多い。この研究の目的は理学療法養成校の講義形式の授業でBRD方式を取り入れ,従来の授業と比べどのような利点があるのかを調査し,学生のアンケート結果から現代の理学療法学生の特性を分析し,今後の学生指導や授業の工夫に必要な情報を明らかにする事である。
【方法】BRD授業の特徴は毎回の授業の中でその最後に小レポートを課す授業形式で,①テーマ確認,②構想段階,③情報収集段階,④執筆段階,という手順で授業を進める。この方式に則り,専門学校(4年制)と大学でそれぞれBRD授業を行った。両校とも対象は理学療法学科2年生とし,開講時に授業の進め方を十分説明し,終了時にアンケート調査を行った。アンケートは無記名とし集合調査法にて行った。アンケート内容は,BRD授業の満足度,集中度を5段階の順序尺度で確認し,さらに従来の講義とBRD授業とどちらが良いか,及びBRD授業の特性について当てはまると思われる6要素を選択する質問を3段階の順序尺度で確認した。アンケートの解析には,宇田のデータと比較し差があるのかどうかを知るためにそれぞれの回答をカイ二乗独立性の検定を行い,また大学と専門学校間の違いも同様の手法で確認した。さらに,これらの結果を基にカテゴリカル主成分分析を行い,カテゴリーの数量化と成分負荷を算出し,大学と専門学校の特徴を掴みそれぞれの学生の特性を探った。統計処理にはIBM SPSS Statistics ver.22を使用し,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮】今回の研究にあたり,学生には研究の主旨を十分説明し,アンケートの結果は本研究以外には使用しない事,本研究に参加しなくても成績や指導での不利益にはならない事,データは厳重に管理し研究終了後は直ちに適切な方法でデータを消去する事を文書に明記し口頭にて説明し,アンケートの提出を持って同意とみなした。また,本研究は本学研究倫理委員会の承認を受けて行った。
【結果】BRD授業に参加した学生は,大学が43名(男性29名,女性14名,平均年齢19.4歳),専門学校が56名(男性43名,女性13名,平均年齢21.7歳)であった。BRD授業の満足度と集中度については宇田の結果・大学・専門学校いずれも差は見られずすべて同様の結果であった(1.非常に低い~5.非常に高いの5段階のうち,3と4合わせていずれも80%)。しかし従来の講義とBRD授業とどちらが良いかについては,宇田の結果と大学の結果に,また大学の結果と専門学校の結果にそれぞれ有意差がみられた(いずれもp<0.05)。男女別に分けて様々な検討を加えるなどを行った結果,大学の男子学生が従来の講義とBRD授業とどちらが良いかについて態度を保留し「どちらも変わらない」としている点が特徴的であった。さらに,カテゴリカル主成分分析の結果,成分負荷は3つの主成分に分けられ,大学の方では第1主成分は「満足度」「集中度」「授業に変化がある」「目標が明確」「期末テストのみで決まらない」が挙げられ,第2主成分は「私語が少ない」「緊張感有り」,第3主成分は「丸暗記でない」が挙げられた。専門学校では第1主成分が大学と同様の項目が挙げられた事に加え,大学の第2主成分である二つの項目も第1主成分に含まれる結果となった。さらに専門学校の第2主成分は「期末テストのみで決まらない」であり,第3主成分は大学と同じ「丸暗記でない」が挙げられた。
【考察】全体として学生は大学でも専門学校でもBRD授業について宇田の結果と同様に一方向的な座学よりも好意的に受け止めている事がわかった。BRD授業の利点としては学生が能動的に授業に参加するようになる点等が挙げられた。一方,大学の男子学生が授業方式について他の結果と異なる理由については不明であるが,専門学校や女子と比べた場合の何らかの特性が関係している可能性が考えられる。またカテゴリカル主成分分析の結果は第1主成分で満足度や集中度のように学生自身の内面からの成分が強く出ている(寄与率44%)結果となった事は,大学の第2主成分にある環境面に依存した外的因子も一部関係している(寄与率17%)ものの,現代の理学療法学生は,自身の内面に目を向ける傾向が強いという特性が窺える。
【理学療法学研究としての意義】BRD授業のような能動的な授業を通して,現代の理学療法学生の特性を明らかにする事はFD活動等を含め理学療法教育を今後さらに発展させる意義があると考えられる。
【方法】BRD授業の特徴は毎回の授業の中でその最後に小レポートを課す授業形式で,①テーマ確認,②構想段階,③情報収集段階,④執筆段階,という手順で授業を進める。この方式に則り,専門学校(4年制)と大学でそれぞれBRD授業を行った。両校とも対象は理学療法学科2年生とし,開講時に授業の進め方を十分説明し,終了時にアンケート調査を行った。アンケートは無記名とし集合調査法にて行った。アンケート内容は,BRD授業の満足度,集中度を5段階の順序尺度で確認し,さらに従来の講義とBRD授業とどちらが良いか,及びBRD授業の特性について当てはまると思われる6要素を選択する質問を3段階の順序尺度で確認した。アンケートの解析には,宇田のデータと比較し差があるのかどうかを知るためにそれぞれの回答をカイ二乗独立性の検定を行い,また大学と専門学校間の違いも同様の手法で確認した。さらに,これらの結果を基にカテゴリカル主成分分析を行い,カテゴリーの数量化と成分負荷を算出し,大学と専門学校の特徴を掴みそれぞれの学生の特性を探った。統計処理にはIBM SPSS Statistics ver.22を使用し,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮】今回の研究にあたり,学生には研究の主旨を十分説明し,アンケートの結果は本研究以外には使用しない事,本研究に参加しなくても成績や指導での不利益にはならない事,データは厳重に管理し研究終了後は直ちに適切な方法でデータを消去する事を文書に明記し口頭にて説明し,アンケートの提出を持って同意とみなした。また,本研究は本学研究倫理委員会の承認を受けて行った。
【結果】BRD授業に参加した学生は,大学が43名(男性29名,女性14名,平均年齢19.4歳),専門学校が56名(男性43名,女性13名,平均年齢21.7歳)であった。BRD授業の満足度と集中度については宇田の結果・大学・専門学校いずれも差は見られずすべて同様の結果であった(1.非常に低い~5.非常に高いの5段階のうち,3と4合わせていずれも80%)。しかし従来の講義とBRD授業とどちらが良いかについては,宇田の結果と大学の結果に,また大学の結果と専門学校の結果にそれぞれ有意差がみられた(いずれもp<0.05)。男女別に分けて様々な検討を加えるなどを行った結果,大学の男子学生が従来の講義とBRD授業とどちらが良いかについて態度を保留し「どちらも変わらない」としている点が特徴的であった。さらに,カテゴリカル主成分分析の結果,成分負荷は3つの主成分に分けられ,大学の方では第1主成分は「満足度」「集中度」「授業に変化がある」「目標が明確」「期末テストのみで決まらない」が挙げられ,第2主成分は「私語が少ない」「緊張感有り」,第3主成分は「丸暗記でない」が挙げられた。専門学校では第1主成分が大学と同様の項目が挙げられた事に加え,大学の第2主成分である二つの項目も第1主成分に含まれる結果となった。さらに専門学校の第2主成分は「期末テストのみで決まらない」であり,第3主成分は大学と同じ「丸暗記でない」が挙げられた。
【考察】全体として学生は大学でも専門学校でもBRD授業について宇田の結果と同様に一方向的な座学よりも好意的に受け止めている事がわかった。BRD授業の利点としては学生が能動的に授業に参加するようになる点等が挙げられた。一方,大学の男子学生が授業方式について他の結果と異なる理由については不明であるが,専門学校や女子と比べた場合の何らかの特性が関係している可能性が考えられる。またカテゴリカル主成分分析の結果は第1主成分で満足度や集中度のように学生自身の内面からの成分が強く出ている(寄与率44%)結果となった事は,大学の第2主成分にある環境面に依存した外的因子も一部関係している(寄与率17%)ものの,現代の理学療法学生は,自身の内面に目を向ける傾向が強いという特性が窺える。
【理学療法学研究としての意義】BRD授業のような能動的な授業を通して,現代の理学療法学生の特性を明らかにする事はFD活動等を含め理学療法教育を今後さらに発展させる意義があると考えられる。