[0132] 股関節機能と片脚反復横跳び動作時の下肢関節角度および関節トルクの変化量との関係
キーワード:片脚反復横跳び, 三次元動作解析, 股関節内外旋可動域
【はじめに,目的】前十字靱帯(ACL)再建術後のリハビリテーションにおいては,下肢の運動機能の回復を評価する方法として,下肢の機能的運動能力テスト(FAT:Functinal Ability Test)がある。これはACLの機能や膝屈伸筋力を反映する評価法として考案されたが,それら以外の関節機能の影響については十分に検討されていない。そこで,本研究の目的は,FATのうち片脚反復横跳び動作に着目し,股関節の可動域や筋力と片脚反復横跳び動作における股関節と膝関節の関節運動との関連について明らかにすることである。
【方法】大学ラグビー部学生10名(20下肢)で,平均年齢20.6歳,平均身長174.2cm,平均体重79.2kgである。方法は,関節機能評価として股関節の可動域と筋力の測定を行い,動作分析として片脚反復横跳びの解析を行った。まず,股関節の関節可動域測定は傾斜計を用いて,内旋と外旋および伸展を測定した。股関節の伸展筋力の測定はBIODEXを用いて60deg/secの角速度で測定し,股関節外転・外旋筋力はハンドヘルドダイナモメーターを用いて股関節屈曲90度に保持したハーフスクワット位での等尺性筋力を測定した。次に片脚反復横跳び動作は,三次元動作解析システムを(Mac 3D System:Motion Analysis社製)を用いて計測した。動作課題は,30cm幅をできるだけ正確に素早く10回反復することとした。そして,床反力上での外側から内側への切り替えし接地時0.3秒間の股関節・膝関節・足関節の関節角度変化量と関節トルク変化量を求めた。関節機能評価項目と三次元動作解析項目との間の相関関係については,解析ソフトJMP ver6.0を用いてピアソンの相関係数を求めて分析した。なお,有意確率は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき,大学倫理委員会の承認のもと,対象者には書面および口頭にて研究の目的と内容を説明し,十分に理解を得た上で研究協力への同意を得た。
【結果】股関節の内旋と外旋および伸展の可動域は,それぞれ平均29.8°,42.2°,13.7°であった。股関節の伸展筋力と外転・外旋筋力は,それぞれ体重比にして4.67Nm/kgと3,01N/kgであった。これらの測定値と三次元動作解析により得られた関節角度変化量および関節トルク変化量との関係をみると,股関節内旋可動域は動作時の股関節屈曲角度変化量と負の相関関係が認められた(r=-0.7067)。同様に,股関節外旋可動域は,動作時の足部回内トルク変化量と負の相関関係が認められた(r=-0.6513)。股関節伸展可動域は,動作時の股関節内転,膝関節内転,足関節底屈のトルク変化量と負の相関関係が認められた(r=-0.673,-0.7288,-0.6232)。股関節伸展筋力は,動作時の膝関節内旋角度変化量と正の相関関係(r=0.7367),股関節屈曲のトルク変化量と負の相関関係(r=-0.6237)が認められた。
【考察】我々は,先行研究において片脚反復横跳びは膝関節の屈伸筋力との相関は弱く,ACLの機能に依存する運動能力テストとしてSensitivityは44%であると報告した。しかし,実際に膝関節に内外反方向と回旋方向へのストレスをかけ,ACLの機能に依存するテストであるのかどうかについては不明であった。今回,股関節の可動域および筋力と片脚反復横跳びの切り替えし時の関節運動の変動量との関係調べた結果,股関節の可動域や筋力が動作時の膝関節だけでなく,股関節や足部・足関節にも影響していることが明らかとなった。そして,股関節伸展可動域が小さくなると股関節内転もしくは膝関節内転の関節トルクの変動が大きくなり,また,股関節伸展筋力が大きいと膝関節内旋運動が多くなることからもACL機能への負担が増加すると考えられた。股関節外旋筋力との関連は明らかにできなかったが,本研究が男性でかつ比較的筋力の良好な対象者であることも影響したと考えられる。今後は,内側から外側への切り替え動作や女性を対象とした分析もし,更なる検証が必要と考えられた。
【理学療法学研究としての意義】ACL再建術後の下肢の運動機能回復を図る上で,運動能力を判定することは重要であるが,ACLへの負荷の影響を十分考慮する必要がある。本研究によって対象者の股関節可動域や筋力から片脚反復横とび時のACL機能への影響が明らかになることにより,スポーツ活動における切り替え動作時のACLへの負荷の低減を図るための股関節機能の改善指標や動作指導に役立てることができるのではないかと考えられた。今後は,静的なアライメントも含めた局所の関節機能評価によって,スポーツ動作時の下肢の各関節への負荷を予測できることが可能となれば,スポーツ外傷や関節疾患の発症を予測することも可能となる。そして,本研究のさらなる成果によって,障害予防策を個別に立案できる可能性が期待できる。
【方法】大学ラグビー部学生10名(20下肢)で,平均年齢20.6歳,平均身長174.2cm,平均体重79.2kgである。方法は,関節機能評価として股関節の可動域と筋力の測定を行い,動作分析として片脚反復横跳びの解析を行った。まず,股関節の関節可動域測定は傾斜計を用いて,内旋と外旋および伸展を測定した。股関節の伸展筋力の測定はBIODEXを用いて60deg/secの角速度で測定し,股関節外転・外旋筋力はハンドヘルドダイナモメーターを用いて股関節屈曲90度に保持したハーフスクワット位での等尺性筋力を測定した。次に片脚反復横跳び動作は,三次元動作解析システムを(Mac 3D System:Motion Analysis社製)を用いて計測した。動作課題は,30cm幅をできるだけ正確に素早く10回反復することとした。そして,床反力上での外側から内側への切り替えし接地時0.3秒間の股関節・膝関節・足関節の関節角度変化量と関節トルク変化量を求めた。関節機能評価項目と三次元動作解析項目との間の相関関係については,解析ソフトJMP ver6.0を用いてピアソンの相関係数を求めて分析した。なお,有意確率は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき,大学倫理委員会の承認のもと,対象者には書面および口頭にて研究の目的と内容を説明し,十分に理解を得た上で研究協力への同意を得た。
【結果】股関節の内旋と外旋および伸展の可動域は,それぞれ平均29.8°,42.2°,13.7°であった。股関節の伸展筋力と外転・外旋筋力は,それぞれ体重比にして4.67Nm/kgと3,01N/kgであった。これらの測定値と三次元動作解析により得られた関節角度変化量および関節トルク変化量との関係をみると,股関節内旋可動域は動作時の股関節屈曲角度変化量と負の相関関係が認められた(r=-0.7067)。同様に,股関節外旋可動域は,動作時の足部回内トルク変化量と負の相関関係が認められた(r=-0.6513)。股関節伸展可動域は,動作時の股関節内転,膝関節内転,足関節底屈のトルク変化量と負の相関関係が認められた(r=-0.673,-0.7288,-0.6232)。股関節伸展筋力は,動作時の膝関節内旋角度変化量と正の相関関係(r=0.7367),股関節屈曲のトルク変化量と負の相関関係(r=-0.6237)が認められた。
【考察】我々は,先行研究において片脚反復横跳びは膝関節の屈伸筋力との相関は弱く,ACLの機能に依存する運動能力テストとしてSensitivityは44%であると報告した。しかし,実際に膝関節に内外反方向と回旋方向へのストレスをかけ,ACLの機能に依存するテストであるのかどうかについては不明であった。今回,股関節の可動域および筋力と片脚反復横跳びの切り替えし時の関節運動の変動量との関係調べた結果,股関節の可動域や筋力が動作時の膝関節だけでなく,股関節や足部・足関節にも影響していることが明らかとなった。そして,股関節伸展可動域が小さくなると股関節内転もしくは膝関節内転の関節トルクの変動が大きくなり,また,股関節伸展筋力が大きいと膝関節内旋運動が多くなることからもACL機能への負担が増加すると考えられた。股関節外旋筋力との関連は明らかにできなかったが,本研究が男性でかつ比較的筋力の良好な対象者であることも影響したと考えられる。今後は,内側から外側への切り替え動作や女性を対象とした分析もし,更なる検証が必要と考えられた。
【理学療法学研究としての意義】ACL再建術後の下肢の運動機能回復を図る上で,運動能力を判定することは重要であるが,ACLへの負荷の影響を十分考慮する必要がある。本研究によって対象者の股関節可動域や筋力から片脚反復横とび時のACL機能への影響が明らかになることにより,スポーツ活動における切り替え動作時のACLへの負荷の低減を図るための股関節機能の改善指標や動作指導に役立てることができるのではないかと考えられた。今後は,静的なアライメントも含めた局所の関節機能評価によって,スポーツ動作時の下肢の各関節への負荷を予測できることが可能となれば,スポーツ外傷や関節疾患の発症を予測することも可能となる。そして,本研究のさらなる成果によって,障害予防策を個別に立案できる可能性が期待できる。