[0268] 臨床総合実習時におけるフィードバックの学生理解度について
キーワード:臨床実習, フィードバック, 情意領域
【はじめに,目的】
臨床実習において,学生はスーパーバイザー(以下SV)から様々な指導を受ける。そして課題を出されることも見られるが,期日までに遂行されない,また指導した内容が反映されていないことがある。その時に学生自身の問題として,情意面(態度,意欲)が注目されることが多い。事実,本学において「態度」と「報告・記録」を評価票で確認すると,SVは学生に対して多くの指導を要している。しかし学生から学内での様子や,聞き取りの印象では,情意面だけに問題があると考えられる学生ばかりであると一概にはいえないこともある。
そこで本研究では,臨床実習での学生の情意面を問題とする以前に,フィードバック(以下FB)時にSVが学生へ指導する内容が十分に伝わっているかどうかを知るための学生アンケートを実施し,その実態を把握し今後の実習指導方法に活かすことを考えた。
【方法】
理学療法学科4年生(59名)を対象に臨床総合実習(平成25年8月26日~10月18日)の後にアンケートを実施した。各アンケートは,無記名とし8つの各質問項目への回答と自由記載を併用した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,森ノ宮医療大学倫理委員会の認可のもとアンケートを無記名で行い,学生に目的の説明と学生からの同意を得ており倫理上の問題は生じない。
【結果】
FBを完全,もしくはほぼ理解できた学生は,全体の88.2%を占め,あまり理解できなかった学生は約11.8%であった。FBを理解できた理由として,「SVの説明が理解しやすかったから」が42.4%,「理解できるまでこちらから質問したから」が25.4%,「FB時にメモをとっていたから」が18.6%であった。
逆にFBを理解できなかった理由として,「説明が理解しにくい内容だったから」が42.9%,「メモをとっていなかったから」,「メモをとらなくても理解できていたつもりが,後で忘れてしまったから」,「理解できていないのにもかかわらず質問しなかったから」,「FBがあまり行われなかったから」がそれぞれ14.3%であった。また質問しなかった理由として,質問する勇気がなかったという意見がみられた。
またFBを意義あるものにするために学生自身がするべきだと思っていることについて自由に記載させた結果,「積極的に質問するべき」と考えているのが34.9%,「FB事前,事後に質問内容などをまとめておくべき」と考えているのが20%,「メモを取るべき」が14%,「何事も自分が最大限努力するべき」,「解剖や生理学などの最低限の知識を持っておくべき」と考えているのがそれぞれ9%だった。
最後にFB時にSVに望むこととして,「分からないことに対するヒントが欲しい」が18%と最も多く,次いで「FBの時間を十分にとって欲しい」が15%,「学生が理解しているか確認しながら進めて欲しい」と考えている意見が13%,「質問しやすい環境を整えて欲しい」が10%となった。
【考察】
臨床実習時にSVが学生を指導するFBは,学生が患者像の理解を進める上で非常に重要であり,さらにSVと学生の親密なコミュニケーションを生み,お互いの性格や知識,思考プロセス,目指す理学療法士像まで幅広く情報交換が行える場である。しかしそこでは,主従関係であるがゆえに,SVから学生への一方通行的な指導になっている懸念があった。今回,FBにおける学生側の理解度が88.2%と非常に高かったことは,決して一方通行的な指導ではなく,SVの根気強い,丁寧な指導が行われていたと考えられる。また同時に学生側の行動として,FB時にメモをとることが重要であることも示唆された。
そして,情意面において重要な「積極的な質問」は,34.9%と最も高く,学生自身が特に痛切に必要であると感じていることは,我々教員にとっても大きな収穫であると考える。この点については,今回の調査対象が4年最終の実習であることから,今後3年実習終了時にもアンケートを行い比較検証する余地がある。
しかし一方で「FBを理解できた」と回答した学生が88.2%に上ったものの,学生の18%が「分からないことに対するヒントが欲しい」としていることは,SVからのヒントがないと理解が難しいことを示す。学生自身は積極的に質問し努力するべきであることは分かっているが,ここに学生の本根が隠されていると考えられた。これらは今後,実習指導におけるSVや,学内における指導に役立つものと考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究により,臨床実習における学生の情意面において,積極的な行動が必要であることを自覚していることが明らかとなったが,SV側はヒントを織り交ぜながら十分に時間をかけて,学生が理解しているのを確認しながら指導することが良いと考えられる。
臨床実習において,学生はスーパーバイザー(以下SV)から様々な指導を受ける。そして課題を出されることも見られるが,期日までに遂行されない,また指導した内容が反映されていないことがある。その時に学生自身の問題として,情意面(態度,意欲)が注目されることが多い。事実,本学において「態度」と「報告・記録」を評価票で確認すると,SVは学生に対して多くの指導を要している。しかし学生から学内での様子や,聞き取りの印象では,情意面だけに問題があると考えられる学生ばかりであると一概にはいえないこともある。
そこで本研究では,臨床実習での学生の情意面を問題とする以前に,フィードバック(以下FB)時にSVが学生へ指導する内容が十分に伝わっているかどうかを知るための学生アンケートを実施し,その実態を把握し今後の実習指導方法に活かすことを考えた。
【方法】
理学療法学科4年生(59名)を対象に臨床総合実習(平成25年8月26日~10月18日)の後にアンケートを実施した。各アンケートは,無記名とし8つの各質問項目への回答と自由記載を併用した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,森ノ宮医療大学倫理委員会の認可のもとアンケートを無記名で行い,学生に目的の説明と学生からの同意を得ており倫理上の問題は生じない。
【結果】
FBを完全,もしくはほぼ理解できた学生は,全体の88.2%を占め,あまり理解できなかった学生は約11.8%であった。FBを理解できた理由として,「SVの説明が理解しやすかったから」が42.4%,「理解できるまでこちらから質問したから」が25.4%,「FB時にメモをとっていたから」が18.6%であった。
逆にFBを理解できなかった理由として,「説明が理解しにくい内容だったから」が42.9%,「メモをとっていなかったから」,「メモをとらなくても理解できていたつもりが,後で忘れてしまったから」,「理解できていないのにもかかわらず質問しなかったから」,「FBがあまり行われなかったから」がそれぞれ14.3%であった。また質問しなかった理由として,質問する勇気がなかったという意見がみられた。
またFBを意義あるものにするために学生自身がするべきだと思っていることについて自由に記載させた結果,「積極的に質問するべき」と考えているのが34.9%,「FB事前,事後に質問内容などをまとめておくべき」と考えているのが20%,「メモを取るべき」が14%,「何事も自分が最大限努力するべき」,「解剖や生理学などの最低限の知識を持っておくべき」と考えているのがそれぞれ9%だった。
最後にFB時にSVに望むこととして,「分からないことに対するヒントが欲しい」が18%と最も多く,次いで「FBの時間を十分にとって欲しい」が15%,「学生が理解しているか確認しながら進めて欲しい」と考えている意見が13%,「質問しやすい環境を整えて欲しい」が10%となった。
【考察】
臨床実習時にSVが学生を指導するFBは,学生が患者像の理解を進める上で非常に重要であり,さらにSVと学生の親密なコミュニケーションを生み,お互いの性格や知識,思考プロセス,目指す理学療法士像まで幅広く情報交換が行える場である。しかしそこでは,主従関係であるがゆえに,SVから学生への一方通行的な指導になっている懸念があった。今回,FBにおける学生側の理解度が88.2%と非常に高かったことは,決して一方通行的な指導ではなく,SVの根気強い,丁寧な指導が行われていたと考えられる。また同時に学生側の行動として,FB時にメモをとることが重要であることも示唆された。
そして,情意面において重要な「積極的な質問」は,34.9%と最も高く,学生自身が特に痛切に必要であると感じていることは,我々教員にとっても大きな収穫であると考える。この点については,今回の調査対象が4年最終の実習であることから,今後3年実習終了時にもアンケートを行い比較検証する余地がある。
しかし一方で「FBを理解できた」と回答した学生が88.2%に上ったものの,学生の18%が「分からないことに対するヒントが欲しい」としていることは,SVからのヒントがないと理解が難しいことを示す。学生自身は積極的に質問し努力するべきであることは分かっているが,ここに学生の本根が隠されていると考えられた。これらは今後,実習指導におけるSVや,学内における指導に役立つものと考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究により,臨床実習における学生の情意面において,積極的な行動が必要であることを自覚していることが明らかとなったが,SV側はヒントを織り交ぜながら十分に時間をかけて,学生が理解しているのを確認しながら指導することが良いと考えられる。