[0288] 脳卒中患者に対するバランスディスクの運動療法の検討
キーワード:脳卒中, バランス, 運動療法
【目的】
脳卒中患者の中で体幹機能が高い患者は,退院時のADLの点数が高い。また機能的予後を予測する因子として体幹機能は重要であるという報告がある。体幹機能を高めるための運動療法としてバランスボールが広く使用されているが,体幹機能の低下した脳卒中患者に対して使用するには,転倒リスクが高く,上手く治療が行えないことも経験する。そこで体幹を効果的に治療する手段としてバランスディスクの運動療法の効果を検討することとした。
【方法】
対象は当院回復期病棟に2012年12月~2013年6月までに入院した脳卒中患者34名を無作為に非介入群17名とバランスディスク介入群17名に分けた。測定前に座位保持が不可能でバランスディスクを使用できないもの,高次機能障害等により指示が通らないもの,また歩行が自立しているものはあらかじめ除外した。最終的に介入期間中に退院や体調不良などの理由から脱落したものを除いた非介入群7名,介入群13名合計20名を対象として行った。バランスディスクは直径31cmのトータルフィットネスSTT-171シンテックスを使用。介入群には,リハに加えてバランスディスク上端座位にて骨盤の前後左右の運動(前後左右の往復運動で1回)各10×3回を週7日間3ヵ月間行った。介助が必要なものは介助することとし,介助方法は前方または側方から可能な限り代償が出ないよう脊柱のアライメントを良好に保った状態で骨盤の動きを促すように行った。また担当セラピストが休みの時は他のセラピストが介入した。非介入群にはバランスディスクを使用しないこと以外には特に制限を設けないこととした。効果判定として初期評価時,介入後1ヶ月,2ヶ月,3ヶ月のFunctional Balance Scale(以下FBS),片麻痺患者の体幹機能の評価として信頼性・妥当性が高いとされるTrunk Impairment Scale(以下TIS)にて評価を行った。統計処理として性別,麻痺側をFisherの直接確率法にて,年齢,身長,体重,発症期間,BRSをMann-WhitneyのU検定,それぞれ介入初期,1ヶ月後,2ヶ月後,3ヶ月後のFBS,TISをFriedman検定にて,非介入群と介入群の初期と3ヶ月後の比較をKruskal-Wallis検定にて事後検定の多重比較としてScheffeの方法にてそれぞれ検討した。統計解析には統計解析ソフトjstatを用い,危険率5%未満を有意とした。
【倫理的配慮】
本研究はヘルンシキ宣言に沿って行い当院の倫理委員会から承認を得て,事前に同意を得て行い,研究終了後研究内容の詳細を説明,同意書に署名を得られた者のみデータを採用した。
【結果】
性別,麻痺側,年齢,身長,体重,発症期間,BRSについて群間比較を行った結果,いずれの項目についても有意な群間差は認められなかった。FBS,TISの点数を以下に示す(中央値,最小-最大)。非介入群FBS,TISは初期11(2-41),12(4-17)1ヶ月後29(6-51),14(6-20)2ヶ月後29(11-51),20(4-21)3ヶ月後38(8-56),20(6-23)となり,介入群は初期5(3-35),7(2-15)1ヶ月後10(4-43),11(2-20)2ヶ月後14(4-50),13(3-21)3ヶ月後16(4-51),14(3-23)となった。FBS,TISにおいて非介入群,介入群ともに初期から3ヶ月にかけてそれぞれ有意な改善がみられた。しかしながら非介入群と介入群とを比較した結果は有意な差は認められなかった。よってバランスディスクを使用した運動療法は今回の研究では効果が得られなかった。
【考察】
今回,脳卒中片麻痺患者の座位保持が可能であり,歩行が自立していない患者を対象に体幹を効果的に治療する手段としてバランスディスクの運動療法の有効性を検討した。その結果,治療の経過に伴ってFBS,TISともにスコアの改善がみられたが,群間での有意な差はみられなかった。効果が得られなかった原因として,サンプルの偏りが考えられる。BRSでは有意差はみられなかった(p=0.0811)が,非介入群の脱落者が多くなってしまった。またリハ意欲の高い患者が非介入群に集まったように感じた。今後はサンプル数を増やすこと,再度条件設定を検討する必要がある。また実際にバランスディスクを使用すると,自ら骨盤を前後左右に動かすことが難しく,介助にて行うことも多かった。そのため体幹にActiveな筋収縮を適切に促せなかったかもしれない。今回はバランスディスクの効果は得られなかったものの,介入することによって「座位が安定した」という意見が多く聞かれた。今後は条件を練り直し再度検討していきたい。
【理学療法学研究としての意義】
脳卒中患者に対して体幹をトレーニングすることは多い。体幹の機能を高めることで座位・立位バランス機能の改善,歩行能力の向上が望めると考える。そのため体幹機能を効率よく高める治療方法の検討は臨床意義があると思われる。
脳卒中患者の中で体幹機能が高い患者は,退院時のADLの点数が高い。また機能的予後を予測する因子として体幹機能は重要であるという報告がある。体幹機能を高めるための運動療法としてバランスボールが広く使用されているが,体幹機能の低下した脳卒中患者に対して使用するには,転倒リスクが高く,上手く治療が行えないことも経験する。そこで体幹を効果的に治療する手段としてバランスディスクの運動療法の効果を検討することとした。
【方法】
対象は当院回復期病棟に2012年12月~2013年6月までに入院した脳卒中患者34名を無作為に非介入群17名とバランスディスク介入群17名に分けた。測定前に座位保持が不可能でバランスディスクを使用できないもの,高次機能障害等により指示が通らないもの,また歩行が自立しているものはあらかじめ除外した。最終的に介入期間中に退院や体調不良などの理由から脱落したものを除いた非介入群7名,介入群13名合計20名を対象として行った。バランスディスクは直径31cmのトータルフィットネスSTT-171シンテックスを使用。介入群には,リハに加えてバランスディスク上端座位にて骨盤の前後左右の運動(前後左右の往復運動で1回)各10×3回を週7日間3ヵ月間行った。介助が必要なものは介助することとし,介助方法は前方または側方から可能な限り代償が出ないよう脊柱のアライメントを良好に保った状態で骨盤の動きを促すように行った。また担当セラピストが休みの時は他のセラピストが介入した。非介入群にはバランスディスクを使用しないこと以外には特に制限を設けないこととした。効果判定として初期評価時,介入後1ヶ月,2ヶ月,3ヶ月のFunctional Balance Scale(以下FBS),片麻痺患者の体幹機能の評価として信頼性・妥当性が高いとされるTrunk Impairment Scale(以下TIS)にて評価を行った。統計処理として性別,麻痺側をFisherの直接確率法にて,年齢,身長,体重,発症期間,BRSをMann-WhitneyのU検定,それぞれ介入初期,1ヶ月後,2ヶ月後,3ヶ月後のFBS,TISをFriedman検定にて,非介入群と介入群の初期と3ヶ月後の比較をKruskal-Wallis検定にて事後検定の多重比較としてScheffeの方法にてそれぞれ検討した。統計解析には統計解析ソフトjstatを用い,危険率5%未満を有意とした。
【倫理的配慮】
本研究はヘルンシキ宣言に沿って行い当院の倫理委員会から承認を得て,事前に同意を得て行い,研究終了後研究内容の詳細を説明,同意書に署名を得られた者のみデータを採用した。
【結果】
性別,麻痺側,年齢,身長,体重,発症期間,BRSについて群間比較を行った結果,いずれの項目についても有意な群間差は認められなかった。FBS,TISの点数を以下に示す(中央値,最小-最大)。非介入群FBS,TISは初期11(2-41),12(4-17)1ヶ月後29(6-51),14(6-20)2ヶ月後29(11-51),20(4-21)3ヶ月後38(8-56),20(6-23)となり,介入群は初期5(3-35),7(2-15)1ヶ月後10(4-43),11(2-20)2ヶ月後14(4-50),13(3-21)3ヶ月後16(4-51),14(3-23)となった。FBS,TISにおいて非介入群,介入群ともに初期から3ヶ月にかけてそれぞれ有意な改善がみられた。しかしながら非介入群と介入群とを比較した結果は有意な差は認められなかった。よってバランスディスクを使用した運動療法は今回の研究では効果が得られなかった。
【考察】
今回,脳卒中片麻痺患者の座位保持が可能であり,歩行が自立していない患者を対象に体幹を効果的に治療する手段としてバランスディスクの運動療法の有効性を検討した。その結果,治療の経過に伴ってFBS,TISともにスコアの改善がみられたが,群間での有意な差はみられなかった。効果が得られなかった原因として,サンプルの偏りが考えられる。BRSでは有意差はみられなかった(p=0.0811)が,非介入群の脱落者が多くなってしまった。またリハ意欲の高い患者が非介入群に集まったように感じた。今後はサンプル数を増やすこと,再度条件設定を検討する必要がある。また実際にバランスディスクを使用すると,自ら骨盤を前後左右に動かすことが難しく,介助にて行うことも多かった。そのため体幹にActiveな筋収縮を適切に促せなかったかもしれない。今回はバランスディスクの効果は得られなかったものの,介入することによって「座位が安定した」という意見が多く聞かれた。今後は条件を練り直し再度検討していきたい。
【理学療法学研究としての意義】
脳卒中患者に対して体幹をトレーニングすることは多い。体幹の機能を高めることで座位・立位バランス機能の改善,歩行能力の向上が望めると考える。そのため体幹機能を効率よく高める治療方法の検討は臨床意義があると思われる。