[0377] 変形性股関節症患者の健康関連QOLと性格特性の関連
キーワード:変形性股関節症, 性格特性, QOL
【はじめに,目的】
変形性股関節症は,股関節構成体に慢性かつ進行性に変化を生じ,疼痛や関節可動域制限などの症状を呈することで,日常生活動作にも制約を生じてくる疾患である。
変形性股関節症患者に対する保存療法実施の際に,機能評価が同程度の結果であっても患者によって現状の受け止め方が異なり,評価と実際が異なるように感じられることもある。変形性股関節症患者の性格特性を調査した報告(弓ら,2010年)では,半数以上がモーズレイ性格テストにおける9つの類型のうち外向性が高く神経症的傾向が低い類型であると認められたものの,評価と性格特性の関連については示されていない。主観的な評価である健康関連QOL(Quality of Life:以下QOL)結果と第三者を介した評価の相関性が高くないとの報告(岩名ら,2007年)もある。また,保存療法を行う変形性股関節症患者の健康関連QOLと性格特性の関連につて調べられた報告はまだみられない。
そこで本研究では,変形性股関節症患者の健康関連QOLと性格特性の関連について調査した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究計画はヘルシンキ宣言に基づき,所属の承認を得てから実施した。対象者には研究の趣旨および方法,研究への参加の任意性と個人情報の保護について書面および口頭で説明を行い,書面による同意を得てから行った。
【方法】
対象者は,当院受診中の変形性股関節症患者のうち,短距離歩行には歩行補助具を必要とせずに自力での通院が可能で,本研究に同意を得られた10名(女性10名,平均年齢69.2±8.3歳)とした。
健康関連QOLの指標としてWestern Ontario and McMaster Universities osteoarthritis index LK3.1(以下WOMAC),性格特性の検査として日本版NEO-FFI(NEO Five Factor Inventory:以下NEO-FFI)を用いて自己記入式により評価した。また,健康関連QOLと他者評価の関連について検証するため,日本整形外科学会股関節機能判定基準(以下JOAスコア)を測定した。NEO-FFIは,素点から得られた傾向(かなり低い,低い,平均,高い,かなり高い)を用いて解析した。両側の変形性股関節症患者については,JOAスコアは,左右のうち低い方の得点を用いた。また,歩行と日常生活動作の合計点(以下ADL)と疼痛の点数も別に算出した。
WOMACの各下位尺度の点数とNEO-FFIの各次元の傾向,NEO-FFIの各次元の傾向とJOAスコアの各点数,WOMACとJOAスコアの疼痛,WOMACにおける日常行動困難度とJOAスコアのADLそれぞれの関連性について,Spearmanの順位相関係数を用いて検討した。統計解析ソフトは,R-3.0.2(Windows版)を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
WOMACの点数は,疼痛5.2±2.8点,こわばり1.7±1.3点,日常行動の困難度15.1±8.1点であった。NEO-FFIの各次元の傾向については,神経症傾向が低い5名,平均5名,外向性傾向は低い2名,平均4名,高い4名,開放性傾向が低い5名,平均4名,高い1名,調和性傾向については低い3名,平均3名,高い2名,かなり高い2名,誠実性ではかなり低い1名,低い2名,平均5名,かなり高い2名であった。JOAスコアについては63.5±10.9点,疼痛19.0±5.7点,ADL29.0±6.1点であった。また,NEO-FFIの高外向性とJOAスコアおよびJOAスコアの疼痛において高い相関(ρ=0.77-0.82)を認めた。
【考察】
性格特性の外向性とJOAスコアに関連性があったことから,他者評価と性格特性に関連がある可能性が示唆された。一方,健康関連QOLと性格特性には関連が認められなかった。他者評価は第三者を介する評価であるが,健康関連QOLは自己記入式であり,評価方法の相違が性格特性との関連に影響したと考えられた。他者評価の場合,評価される側の性格によって評価時の表出が実際と異なる可能性もあると思われる。また,性格特性が他者評価には影響するといわれるが,健康関連QOLには影響しないことが,臨床の場で評価と実際が異なるように感じる一因かもしれない。本研究結果においては対象者が少なく,性格検査の結果は5次元からなり,1次元からでは性格特性を解釈しきれないことがあり,今後症例数を増加し更なる検討が必要であると思われた。
【理学療法学研究としての意義】
臨床場面において,変形性股関節症患者に対する第三者を介した評価は,外向性が高い傾向であると評価が高くなるというような性格特性の影響を受ける可能性が考えられた。また,主観的な健康関連QOLに着目する重要性についても示唆する結果であると思われる。
変形性股関節症は,股関節構成体に慢性かつ進行性に変化を生じ,疼痛や関節可動域制限などの症状を呈することで,日常生活動作にも制約を生じてくる疾患である。
変形性股関節症患者に対する保存療法実施の際に,機能評価が同程度の結果であっても患者によって現状の受け止め方が異なり,評価と実際が異なるように感じられることもある。変形性股関節症患者の性格特性を調査した報告(弓ら,2010年)では,半数以上がモーズレイ性格テストにおける9つの類型のうち外向性が高く神経症的傾向が低い類型であると認められたものの,評価と性格特性の関連については示されていない。主観的な評価である健康関連QOL(Quality of Life:以下QOL)結果と第三者を介した評価の相関性が高くないとの報告(岩名ら,2007年)もある。また,保存療法を行う変形性股関節症患者の健康関連QOLと性格特性の関連につて調べられた報告はまだみられない。
そこで本研究では,変形性股関節症患者の健康関連QOLと性格特性の関連について調査した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究計画はヘルシンキ宣言に基づき,所属の承認を得てから実施した。対象者には研究の趣旨および方法,研究への参加の任意性と個人情報の保護について書面および口頭で説明を行い,書面による同意を得てから行った。
【方法】
対象者は,当院受診中の変形性股関節症患者のうち,短距離歩行には歩行補助具を必要とせずに自力での通院が可能で,本研究に同意を得られた10名(女性10名,平均年齢69.2±8.3歳)とした。
健康関連QOLの指標としてWestern Ontario and McMaster Universities osteoarthritis index LK3.1(以下WOMAC),性格特性の検査として日本版NEO-FFI(NEO Five Factor Inventory:以下NEO-FFI)を用いて自己記入式により評価した。また,健康関連QOLと他者評価の関連について検証するため,日本整形外科学会股関節機能判定基準(以下JOAスコア)を測定した。NEO-FFIは,素点から得られた傾向(かなり低い,低い,平均,高い,かなり高い)を用いて解析した。両側の変形性股関節症患者については,JOAスコアは,左右のうち低い方の得点を用いた。また,歩行と日常生活動作の合計点(以下ADL)と疼痛の点数も別に算出した。
WOMACの各下位尺度の点数とNEO-FFIの各次元の傾向,NEO-FFIの各次元の傾向とJOAスコアの各点数,WOMACとJOAスコアの疼痛,WOMACにおける日常行動困難度とJOAスコアのADLそれぞれの関連性について,Spearmanの順位相関係数を用いて検討した。統計解析ソフトは,R-3.0.2(Windows版)を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
WOMACの点数は,疼痛5.2±2.8点,こわばり1.7±1.3点,日常行動の困難度15.1±8.1点であった。NEO-FFIの各次元の傾向については,神経症傾向が低い5名,平均5名,外向性傾向は低い2名,平均4名,高い4名,開放性傾向が低い5名,平均4名,高い1名,調和性傾向については低い3名,平均3名,高い2名,かなり高い2名,誠実性ではかなり低い1名,低い2名,平均5名,かなり高い2名であった。JOAスコアについては63.5±10.9点,疼痛19.0±5.7点,ADL29.0±6.1点であった。また,NEO-FFIの高外向性とJOAスコアおよびJOAスコアの疼痛において高い相関(ρ=0.77-0.82)を認めた。
【考察】
性格特性の外向性とJOAスコアに関連性があったことから,他者評価と性格特性に関連がある可能性が示唆された。一方,健康関連QOLと性格特性には関連が認められなかった。他者評価は第三者を介する評価であるが,健康関連QOLは自己記入式であり,評価方法の相違が性格特性との関連に影響したと考えられた。他者評価の場合,評価される側の性格によって評価時の表出が実際と異なる可能性もあると思われる。また,性格特性が他者評価には影響するといわれるが,健康関連QOLには影響しないことが,臨床の場で評価と実際が異なるように感じる一因かもしれない。本研究結果においては対象者が少なく,性格検査の結果は5次元からなり,1次元からでは性格特性を解釈しきれないことがあり,今後症例数を増加し更なる検討が必要であると思われた。
【理学療法学研究としての意義】
臨床場面において,変形性股関節症患者に対する第三者を介した評価は,外向性が高い傾向であると評価が高くなるというような性格特性の影響を受ける可能性が考えられた。また,主観的な健康関連QOLに着目する重要性についても示唆する結果であると思われる。