[0384] 脳血管障害者に対する体幹運動の効果
Keywords:脳卒中, 体幹運動, メタアナリシス
【はじめに,目的】
VerheydenやDi Monacoによると体幹機能はバランス能力,日常生活活動(以下ADLとする)能力と相関があり,急性期における体幹機能レベルは退院時のADLのよい予後予測因子であると報告されている。しかし,体幹機能を向上させる運動プログラムは明確ではなく,体幹運動が体幹機能,バランス能力,ADL能力を改善するか不明である。本研究の目的は,脳血管障害者に対する体幹運動は通常の運動と比較して体幹機能,バランス能力,ADL能力を改善するかどうかを明らかにすることである。
【方法】
脳血管障害者に対する体幹運動の治療効果に関する論文を検索した。Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL),Physiotherapy Evidence Database(PEDro),MEDLINE(PubMed)にてキーワードをStroke,Trunk,Exerciseとして検索した。さらに,引用文献リストよりハンドサーチを行った。調査期間は1996年1月から2013年7月に発行された論文とした。適格基準は,脳卒中症例に対して体幹運動(体幹を中心に動かす課題等)を行い,その効果を検証した無作為化比較試験(randomized controlled trial:以下RCTとする)とした。除外基準としてRCTでない論文,英語で書かれていない論文,治療効果に関するものでない論文とした。主研究者と共同研究者の2名にて,採択論文をPEDro Scaleを用いて質の評価をした。結果が異なった場合は両者にて検討,合意を形成して評価を下した。統合可能であった評価項目に対してメタアナリシスを実施した。解析方法として運動介入群とコントロール群の数値に対してStatDirectを用いてメタアナリシスを行った。統合するデータに均質性がある場合には母数効果モデルによる統合結果を,異質性を認める場合には変数効果モデルのDerSimonian-Lairdの方法による結果を採用した。均質性の検討と統合結果の有意性の検定は危険率5%未満を有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はデータベースを用いた論文研究であり,所属大学の倫理委員会の承認が必要な研究には当たらない。
【結果】
データベースより197編が該当し,適格基準と除外基準を満たした11編より,重複論文・体幹運動と通常のリハビリの比較でないものを除外し,3編のRCT論文をメタアナリシスの対象とした。3件より統合可能であった評価項目はTISのみであった。バランス能力やADL能力に関する評価項目は研究間で異なり統合することはできなかった。TIS totalにおけるメタアナリシスの結果,2編の論文は異質性を認め有意差がなかった。体幹運動はTISを改善する充分な効果はない。Wimによる研究ではweighted mean difference5.51(3.00-8.01)と効果があり,Geertによる研究では0.5(-1.51-2.51)と効果がなかった。異質性を認めた為,サブ解析を実施したがTISstatic/Dynamic/Coordinationとも有意差なし。Wimによると各項目とも統計学的に有意差を認めている。GeertによるとDynamicのみ有意差を認めた。と報告されていたが,統合した結果体幹運動はTISに対して効果が明確ではなかった。
【考察】
研究間の異質性を認め,明確な結論を得ることはできなかった。体幹運動は体幹機能を改善させるとはいえない。バランス能力,ADL能力に関しては評価項目の統合ができず,メタアナリシスは実施できなかった。このような結果になった理由として研究間の評価項目に相違を認めたこと,運動プロトコルが様々であること,研究数が少ないことの影響が考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
脳血管障害者に対する理学療法介入を科学的根拠の下,実施することに繋がる研究であると考える。現状は体幹機能,バランス能力,ADL能力に対する体幹運動の効果は改善するとはいえないことが明らかとなった。
VerheydenやDi Monacoによると体幹機能はバランス能力,日常生活活動(以下ADLとする)能力と相関があり,急性期における体幹機能レベルは退院時のADLのよい予後予測因子であると報告されている。しかし,体幹機能を向上させる運動プログラムは明確ではなく,体幹運動が体幹機能,バランス能力,ADL能力を改善するか不明である。本研究の目的は,脳血管障害者に対する体幹運動は通常の運動と比較して体幹機能,バランス能力,ADL能力を改善するかどうかを明らかにすることである。
【方法】
脳血管障害者に対する体幹運動の治療効果に関する論文を検索した。Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL),Physiotherapy Evidence Database(PEDro),MEDLINE(PubMed)にてキーワードをStroke,Trunk,Exerciseとして検索した。さらに,引用文献リストよりハンドサーチを行った。調査期間は1996年1月から2013年7月に発行された論文とした。適格基準は,脳卒中症例に対して体幹運動(体幹を中心に動かす課題等)を行い,その効果を検証した無作為化比較試験(randomized controlled trial:以下RCTとする)とした。除外基準としてRCTでない論文,英語で書かれていない論文,治療効果に関するものでない論文とした。主研究者と共同研究者の2名にて,採択論文をPEDro Scaleを用いて質の評価をした。結果が異なった場合は両者にて検討,合意を形成して評価を下した。統合可能であった評価項目に対してメタアナリシスを実施した。解析方法として運動介入群とコントロール群の数値に対してStatDirectを用いてメタアナリシスを行った。統合するデータに均質性がある場合には母数効果モデルによる統合結果を,異質性を認める場合には変数効果モデルのDerSimonian-Lairdの方法による結果を採用した。均質性の検討と統合結果の有意性の検定は危険率5%未満を有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はデータベースを用いた論文研究であり,所属大学の倫理委員会の承認が必要な研究には当たらない。
【結果】
データベースより197編が該当し,適格基準と除外基準を満たした11編より,重複論文・体幹運動と通常のリハビリの比較でないものを除外し,3編のRCT論文をメタアナリシスの対象とした。3件より統合可能であった評価項目はTISのみであった。バランス能力やADL能力に関する評価項目は研究間で異なり統合することはできなかった。TIS totalにおけるメタアナリシスの結果,2編の論文は異質性を認め有意差がなかった。体幹運動はTISを改善する充分な効果はない。Wimによる研究ではweighted mean difference5.51(3.00-8.01)と効果があり,Geertによる研究では0.5(-1.51-2.51)と効果がなかった。異質性を認めた為,サブ解析を実施したがTISstatic/Dynamic/Coordinationとも有意差なし。Wimによると各項目とも統計学的に有意差を認めている。GeertによるとDynamicのみ有意差を認めた。と報告されていたが,統合した結果体幹運動はTISに対して効果が明確ではなかった。
【考察】
研究間の異質性を認め,明確な結論を得ることはできなかった。体幹運動は体幹機能を改善させるとはいえない。バランス能力,ADL能力に関しては評価項目の統合ができず,メタアナリシスは実施できなかった。このような結果になった理由として研究間の評価項目に相違を認めたこと,運動プロトコルが様々であること,研究数が少ないことの影響が考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
脳血管障害者に対する理学療法介入を科学的根拠の下,実施することに繋がる研究であると考える。現状は体幹機能,バランス能力,ADL能力に対する体幹運動の効果は改善するとはいえないことが明らかとなった。