第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 内部障害理学療法 口述

呼吸6

2014年5月30日(金) 16:15 〜 17:05 第5会場 (3F 303)

座長:山内康太(製鉄記念八幡病院リハビリテーション部)

内部障害 口述

[0511] 胃癌に対する胃切除術後の早期離床・歩行について

青野達, 溝口雅之, 野元大, 駒坂光朗 (済生会福岡総合病院リハビリテーション部)

キーワード:胃切除術, 理学療法, 早期離床

【はじめに】
外科領域における開腹術後の長期安静臥床により,呼吸器・循環器合併症,骨格筋の筋力低下,深部静脈血栓症などの合併症をもたらすことは周知の事実である。術後に早期離床を促すことはこれらの合併症を予防し,ADL低下を最小限に留め早期退院を目標とする上で重要となる。
当院における胃癌切除は開腹による胃切除術と腹腔鏡下胃切除術を行っており,それぞれ術後早期より離床・歩行練習を開始している。腹腔鏡下胃切除術は術中出血量や呼吸器合併症,鎮痛剤投与量などの指標にて有用性が報告されているが,離床や歩行に関する報告は少ない。本研究は当院における開腹による胃切除術と腹腔鏡下胃切除術後の離床経過をretrospectiveに比較・検証し,胃切除術後の離床状況を把握することが目的である。
【対象・方法】
当院消化器外科にてH.23年4月からH.24年3月に開腹による胃切除術(以下開腹群),腹腔鏡下胃切除術(以下腹腔鏡群)を施行し術後に理学療法介入のあった96例のうち,認知症などの既往がなく術前の歩行が自立していた82例(開腹群:50例,腹腔鏡群:32例)を対象とした。方法は,カルテより術後の①端座位・起立開始日,②歩行開始日,③歩行自立日,④経口摂取開始日,⑤在院日数,⑥肺炎の有無をそれぞれ抽出し比較した。統計処理はMann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%未満とした。理学療法は術後1日目または2日目より起立・歩行開始を目標にベッドサイドにて実施し,病棟内歩行が可能となればリハビリ室でのトレーニングを行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づきデータの集計は患者名や疾患名をコード化し,個人を特定できないよう配慮を行って実施した。
【結果】
①端座位・起立開始日の比較において有意差がみられ,腹腔鏡群がより早期に離床を開始していた(p<0.05)。②歩行開始日,③歩行自立日,④経口摂取開始日,⑤在院日数,⑥肺炎の有無の比較では有意差はなかった。
それぞれの平均値としては①端座位・起立開始日は開腹群1.6日,腹腔鏡群1.2日,②歩行開始日は開腹群2.3日,腹腔鏡群1.7日,③歩行自立日は開腹群3.6日,腹腔鏡群3.3日,④経口摂取開始日は開腹群4.6日,腹腔鏡群4.5日,⑤在院日数は開腹群14.4日,腹腔鏡群10.8日であった。⑥肺炎の有無は開腹群2例,腹腔鏡群2例であった。
【考察】
術後の端座位・起立開始日の比較において,腹腔鏡群で早期に端座位・起立が可能であった。腹腔鏡下胃切除術は侵襲が少ないことから動作時の疼痛が少なく,患者自身にて離床可能な症例が多く見られたことが早期離床に繋がったと考える。また歩行開始日,歩行自立日,経口摂取開始日,在院日数,肺炎の有無の比較から,開腹群・腹腔鏡群ともに術後歩行を開始してから退院までの経過に差がみられなかった。当院では術後1日目より積極的に離床にトライし,端座位・起立可能であれば歩行練習を実施しており,このことが両群の離床経過にほとんど差がないことの一要因であると考える。先行研究では消化器外科手術後の理学療法介入患者の離床は術後1~2日,歩行開始は術後3~5日との報告が多く,当院での開腹による胃切除術と腹腔鏡下胃切除術後においても,これらの報告と同様に理学療法介入による早期離床・歩行獲得が実施できており,合併症予防や早期退院に繋がっていることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
開腹による胃切除術後と腹腔鏡下胃切除術後の離床,歩行獲得はほとんど差がなく術後早期に可能である。また術後歩行を開始してから退院までの経過に差がないことが示唆された。外科領域における術後の理学療法介入の際の指標の1つとなることが考えられる。