[0629] 脊柱後弯変形から骨密度を予測できるか(試行)
キーワード:骨密度, 転倒予防教室, 円背
【はじめに,目的】
地域における転倒予防教室などに理学療法士が参加し身体機能評価・運動プログラム作成に関わった成果などの報告が多くみられる。日本理学療法士協会でも転倒予防の標準的プログラムを作成しているようであり予防理学療法への意識も高まってきているようである。転倒予防教室は高齢者を対象にして行われることが多く,脊柱後弯姿勢の参加者も見かける。
加齢により脊柱は全体的に前傾してくるとされており,加えて脊柱後弯変形は骨粗鬆症の椎体骨折,加齢変性に伴う椎間板腔の狭小化,背筋力の低下などの原因が重なり合い後弯変形の個人差が生まれてくるとされている。脊柱後弯姿勢の増強は体幹のバランス障害をきたしやすく転倒の原因となり,骨粗鬆症は転倒時の骨折のリスクとされている。
この骨粗鬆症を予防するために脊柱後弯変形の程度が骨密度の程度と関連していれば後弯姿勢から骨密度を予測することが可能となり,今後の転倒予防教室に役立つのではないかと考えた。また,骨粗鬆症は高齢者に多く加齢の影響も加わるため,脊柱後弯変形と年齢の2因子における骨密度との関連を比較検討した。
【方法】
当院外来リハビリテーション通院中の女性患者10名を対象とした,平均年齢71.7歳(57-91歳)。リハビリテーション処方における主な疾患は腰部脊柱管狭窄症5名,変形性腰椎症3名,変形性股関節症2名であった。
脊柱後弯評価は座位で円背指数計測の検証がなされている方法を用いて,胸椎長と胸椎の幅を算出することで胸椎後弯の程度を円背指数として計測した。骨密度測定はGE社製prodigy primoを用いて腰椎正面L1-4の骨密度(BMD)と若年成人比較(YAM)を測定した。
検討内容は脊柱後弯の程度と骨密度の程度に関連があるかを調べるため,円背指数と年齢の2因子における骨密度(BMD)との相関を調べた。また,若年成人比較(YAM)の骨粗鬆症・骨量減少群と正常群における,円背指数と年齢の2因子に差があるのか2標本の差の検定を用いて調べた。
統計処理はR-2.8.1を用いて,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には研究の目的と内容,個人情報の保護,参加の拒否と撤回について説明を行った後,書面にて参加の合意を得た。
【結果】
年齢と骨密度とは高い負の相関関係が得られたが,円背指数と骨密度では中等度の負の相関を得るにとどまり,検定は有意でなかった。また,円背指数と年齢においても高い正の相関が得られた。骨粗鬆症・骨量減少群と正常群における円背指数と年齢の因子では,年齢因子に有意差が得られた。
【考察】
年齢と骨密度とは高い相関が得られたが,円背指数と骨密度では中等度の相関を得るにとどまった。また,円背指数と年齢においても相関が得られた。骨粗鬆症・骨量減少群と正常群では年齢の因子において有意差が認められた。
これらにより加齢と骨密度低下が関連する可能性が示されたと考えるが,加齢と脊柱後弯との関連を示す結果とはならなかったと考える。脊柱後弯変形は加齢とともに複数の因子が相互に影響しあい姿勢の個人差として現れてくるため,骨密度の影響だけでは脊柱後弯変形との関連が示されなかったと考える。また,骨粗鬆症の治療者を対象に含んでおり骨密度が改善されていた可能性もあるため,後弯姿勢の割に骨密度の値が高かったことによる影響があったとも考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
骨粗鬆症と診断されてからでは運動療法においても転倒・骨折のリスクにさらされることとなる。骨量低下を予測することが可能となれば,より骨折リスクの少ない状態から運動療法もしくは治療などを開始することができ骨粗鬆症の予防に役立つのではないかと検討した。しかし今回は,姿勢から骨密度を予測することは困難である結果が示された。一方で,脊柱後弯の強い姿勢が骨密度の低値を現しているという判断は避けた方が良いという結果も示された。
今回は,骨粗鬆症患者を対象に含んでいたため,今後は骨粗鬆症治療者でない症例を対象として症例数を増やして今までの仮説の検証を行った方が良いと考えられた。
地域における転倒予防教室などに理学療法士が参加し身体機能評価・運動プログラム作成に関わった成果などの報告が多くみられる。日本理学療法士協会でも転倒予防の標準的プログラムを作成しているようであり予防理学療法への意識も高まってきているようである。転倒予防教室は高齢者を対象にして行われることが多く,脊柱後弯姿勢の参加者も見かける。
加齢により脊柱は全体的に前傾してくるとされており,加えて脊柱後弯変形は骨粗鬆症の椎体骨折,加齢変性に伴う椎間板腔の狭小化,背筋力の低下などの原因が重なり合い後弯変形の個人差が生まれてくるとされている。脊柱後弯姿勢の増強は体幹のバランス障害をきたしやすく転倒の原因となり,骨粗鬆症は転倒時の骨折のリスクとされている。
この骨粗鬆症を予防するために脊柱後弯変形の程度が骨密度の程度と関連していれば後弯姿勢から骨密度を予測することが可能となり,今後の転倒予防教室に役立つのではないかと考えた。また,骨粗鬆症は高齢者に多く加齢の影響も加わるため,脊柱後弯変形と年齢の2因子における骨密度との関連を比較検討した。
【方法】
当院外来リハビリテーション通院中の女性患者10名を対象とした,平均年齢71.7歳(57-91歳)。リハビリテーション処方における主な疾患は腰部脊柱管狭窄症5名,変形性腰椎症3名,変形性股関節症2名であった。
脊柱後弯評価は座位で円背指数計測の検証がなされている方法を用いて,胸椎長と胸椎の幅を算出することで胸椎後弯の程度を円背指数として計測した。骨密度測定はGE社製prodigy primoを用いて腰椎正面L1-4の骨密度(BMD)と若年成人比較(YAM)を測定した。
検討内容は脊柱後弯の程度と骨密度の程度に関連があるかを調べるため,円背指数と年齢の2因子における骨密度(BMD)との相関を調べた。また,若年成人比較(YAM)の骨粗鬆症・骨量減少群と正常群における,円背指数と年齢の2因子に差があるのか2標本の差の検定を用いて調べた。
統計処理はR-2.8.1を用いて,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には研究の目的と内容,個人情報の保護,参加の拒否と撤回について説明を行った後,書面にて参加の合意を得た。
【結果】
年齢と骨密度とは高い負の相関関係が得られたが,円背指数と骨密度では中等度の負の相関を得るにとどまり,検定は有意でなかった。また,円背指数と年齢においても高い正の相関が得られた。骨粗鬆症・骨量減少群と正常群における円背指数と年齢の因子では,年齢因子に有意差が得られた。
【考察】
年齢と骨密度とは高い相関が得られたが,円背指数と骨密度では中等度の相関を得るにとどまった。また,円背指数と年齢においても相関が得られた。骨粗鬆症・骨量減少群と正常群では年齢の因子において有意差が認められた。
これらにより加齢と骨密度低下が関連する可能性が示されたと考えるが,加齢と脊柱後弯との関連を示す結果とはならなかったと考える。脊柱後弯変形は加齢とともに複数の因子が相互に影響しあい姿勢の個人差として現れてくるため,骨密度の影響だけでは脊柱後弯変形との関連が示されなかったと考える。また,骨粗鬆症の治療者を対象に含んでおり骨密度が改善されていた可能性もあるため,後弯姿勢の割に骨密度の値が高かったことによる影響があったとも考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
骨粗鬆症と診断されてからでは運動療法においても転倒・骨折のリスクにさらされることとなる。骨量低下を予測することが可能となれば,より骨折リスクの少ない状態から運動療法もしくは治療などを開始することができ骨粗鬆症の予防に役立つのではないかと検討した。しかし今回は,姿勢から骨密度を予測することは困難である結果が示された。一方で,脊柱後弯の強い姿勢が骨密度の低値を現しているという判断は避けた方が良いという結果も示された。
今回は,骨粗鬆症患者を対象に含んでいたため,今後は骨粗鬆症治療者でない症例を対象として症例数を増やして今までの仮説の検証を行った方が良いと考えられた。