第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 内部障害理学療法 口述

循環1

2014年5月31日(土) 09:30 〜 10:20 第5会場 (3F 303)

座長:田畑稔(豊橋創造大学保健医療学部理学療法学科), 熊丸めぐみ(群馬県立小児医療センターリハビリテーション課)

内部障害 口述

[0669] 内部障害に対する微小重力環境のポジショニングが呼吸困難感とバイタルサインに与えた影響

青木將剛 (医療法人社団竹口病院)

キーワード:ポジショニング, バイタルサイン, 呼吸困難

【はじめに,目的】
低反撥マットレスを数枚重ね,ポジショニングアプローチを行ったところ,過緊張に変化が起こる症例群や基本動作全介助からADL獲得にまで至る症例群を認めた。検証のため,当院入院患者47名に対し筋緊張,筋硬度,安楽感,疼痛を一般的マットレスと比較したところ,積層された低反撥マットレスにU検定P<0.01の有意差を認めた。これをRehabilitation&Engineering Design(以下,R.E.D.)とし,基礎研究にまとめている。このような,ポジショニングから筋緊張を診ていく基礎研究を進める中で,呼吸器疾患群の呼吸困難感を訴える症例では,心拍数,呼吸数,血中酸素濃度が安定する症例が確認され,R.E.D.環境によるポジショニングアプローチは,ワッサーマンの歯車に代表される筋,呼吸,循環の相関関係に影響を及ぼしている事が示唆された。そこで,今回は,心疾患,呼吸器疾患を呈した15名に対し,R.E.D.環境でのポジショニングを行い,バイタルサインや呼吸困難感の変化に影響した知見を報告し考察したい。
【方法】
心疾患,呼吸器疾患を呈した15名に対し,血中酸素濃度(SpO2),心拍数(HR),呼吸数(RR),血圧(BP),呼吸困難感(NRS),フェイススケール(Fs)を全64回,各疾患平均で24回測定し,R.E.D介入前,中盤,介入後で比較した。介入環境:低反撥マットレス(welHANDS medical社製)を3枚~4枚(体重によって枚数を決定)積層し,ポジショニングクッションによりポジショニングを行う。訓練介入時間:40分~50分で,日常の生活は病棟での一般的マットレスで過ごした。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ条約に基づき,研究対象者に説明と同意を得て介入した。
【結果】
15名中,バイタルサインを含む数値が安定した症例数を示す。SPO2 10/15名,HR14/15名,RR12/15名,BP8/15名。平均値1(呼吸器疾患者)介入前平均SpO2(94.5),HR(102.7),RR(28.7),BR(117.7/72),NRS(7.27),Fs(7.11)。介入後SpO2(99),HR(82.6),RR(18.3),BR(112.3/64),NRS(1.06),Fs(1.16)であった。平均値2(心疾患患者)介入前平均SpO2(92.2),HR(68.4),RR(25.2),BR(108.7/62),NRS(8.33),Fs(7.50)。介入後SpO2(97),HR(67),RR(18),BR(103/57),NRS(2.03),Fs(1.22)であった。バイタルサインの数値の安定は,心拍数,呼吸数で最も高く,次いでSpO2,血圧の順である。呼吸器疾患患者の数値の平均値はSpO2,心拍数,呼吸数で段階的に安定し,同時に呼吸困難感,安楽感も安定しているため,生理機能安定と患者の安楽状態は相関している。心疾患患者については,介入前,SpO2が92%である他は,呼吸数,心拍数は大きな変動なく経過していたが,呼吸困難感や安楽感は高く苦しい状態を訴えていた。しかし,介入後のSPO2の数値が安定してくると呼吸困難感や安楽感の安定が見られ起居動作全介助から歩行まで獲得した。
【考察】
本研究結果をワッサーマンの歯車の模式図で考えてみると,心機能,呼吸器機能に障害がある場合,筋収縮,筋緊張を高め努力性呼吸状態が続く。そこに,肺は機能的に疾患がありながらも,ATP産生,内呼吸,外呼吸を続けなければならない。そのために心拍数を増加させるが心疾患があれば,相互に呼吸器や筋組織に影響を及ぼす。しかし,今回は基礎研究のR.E.D.環境の筋緊張に変化を与える特性を利用して,全身の筋緊張を制御し過緊張状態を安定させたため相関する心拍数,呼吸数に影響を与えた。この筋組織の安定から始まった現象の根本は基礎研究R.E.D.の原理にある。その原理は,低反撥マットレスを積層することで,低反撥の沈み込み特性を利用し,身体質量と重力を拮抗させた微小重力状態にある。ニュートン物理学,作用-反作用法則の反作用を最小にした状態であるため,重力に対して抗する為の筋収縮の必然性を低下させ,柔軟性を得た筋組織はRelaxation効果へと繋がった,この環境,効果,特性がワッサーマンの歯車の効率化に繋がり全身状態に波及したと考える。
【理学療法学研究としての意義】
全身循環は歯車のように相互に働いており,身体機能面から精神機能面と範囲の広いアプローチが必要である事が再確認できた。今回の介入により,筋緊張制御から呼吸困難感を鎮め,日常の生活に安楽を感じる時間の提供は,これまでの生活や自己を振り返る余力に繋がり,生活の質を高める事に繋がったため,総合的な訓練プログラムの立案の一助や精神機能面を支える緩和医療として利用できる。