[0678] 回復期リハビリテーション病棟における透析を要する患者のリハ効果について
キーワード:回復期リハビリテーション病棟, 透析, リハ効果
【目的】平成24年度の診療報酬改定により,回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)入院料における包括範囲から人工腎臓が除外され,回復期リハ病棟においても人工腎臓のリハが実施可能となった。透析患者に対する治療効果については多数報告されているものの,回復期リハ病棟に入院した透析患者に対する治療効果は散見される程度である。そこで今回,当院に入院した透析患者を対象に,回復期リハ病棟での治療効果を検証したので報告する。
【方法】対象は,運動器疾患にて当院に入院した透析患者13例。除外基準として,分類時の母集団の整合性を保つ目的から,運動器疾患の中でも回復期リハ病棟対象疾患以外の患者は除外した。これらの患者を,平成22年4月から平成24年3月までに入院した回復期リハ非入院群8例(平均年齢85.6±6.9歳,大腿骨頚部・近位部骨折4例,腰椎圧迫骨折4例)と,平成24年4月から平成25年10月までに回復期リハ病棟に入退院した回復期リハ入院群5例(平均年齢78.8±8.5歳,大腿骨頚部・近位部骨折1例,腰椎圧迫骨折4例)に分類した。調査項目としては,疾患名,発症日,入退院日,個別リハ単位数,入退院時FIM,転帰先について後方視的に抽出し,平均在院日数,個別リハ平均単位数,FIM利得及びFIM効率を算出した。2群間における統計学的処理はMann-Whitney U検定を用い,有意水準は危険率5%未満とした。
【倫理的配慮】本研究の内容はヘルシンキ宣言に基づき,当院倫理審査委員会の承認を受けて実施した。またデータ処理に関しては,対象者の個人情報を排除し,匿名化に配慮して統計的解析を行った。
【結果】1日当たりの個別リハ平均単位数は,非入院群で1.5単位(透析日0.8単位,非透析日1.9単位),入院群で3.5単位(透析日3.2単位,非透析日3.8単位)であり有意差が認められた(p<0.01)。FIMでは,非入院群が入院時65.5点,退院時75.6点,FIM利得10.1,FIM効率0.2,入院群では入院時63.0点,退院時99.8点,FIM利得36.8,FIM効率0.4となり,入院時FIM以外において有意な改善が認められた(p<0.05)。転帰先では,非入院群において自宅3例,転院等5例,入院群では自宅4例,転院1例であり,有意差は認められなかったものの,自宅復帰の割合が多い傾向が示唆された。平均在院日数は,非入院群で72.1日,入院群で71.2日であり,有意差を認めなかった。
【考察】非入院群においては,個別リハ平均単位数は1.5単位であり,透析日と非透析日の格差も大きい事から,充分な治療効果を提供するには介入時間が乏しい事が示された。これに対し,入院群においては平均単位数が3.5単位へと増加し,透析日と非透析日の格差も減少していた。この事は少なからず患者のADL改善に影響を及ぼし,それが非入院群と入院群の3倍以上のFIM利得の差となって示されたと思われる。しかしながら,ADLに改善が示されたにも関わらず,転帰先及び在院日数においては有意差を認めなかった。これは,転帰先及び在院日数に関しては,ADLのみならず家族背景や社会的要因等が複合的に影響を及ぼしている事が考えられ,これらを改善する為には回復期リハ病棟としてのチーム医療での取り組みが必要と思われる。本研究の限界として,症例数の少なさと,それ故に運動器というカテゴリーの中で複数の疾患を混在させた事が挙げられる。その為,今後は症例数を増やし,同一疾患で比較検討を行う事によって,より信頼性のある効果判定が可能になると思われる。
【理学療法学研究としての意義】従来,適切なリハを必要とする透析患者は多かったが,医療制度の影響もあり,その提供数は充分ではなかったと思われる。回復期リハ病棟に入院可能となった事により,透析患者においてもリハ提供数の充実が図られ,その結果,転帰先やFIM利得等の改善に影響を及ぼしたものと考える。今回の調査は,回復期リハ病棟に課せられた新たな役割の効果を明確化したものであり,意義あるものと考える。
【方法】対象は,運動器疾患にて当院に入院した透析患者13例。除外基準として,分類時の母集団の整合性を保つ目的から,運動器疾患の中でも回復期リハ病棟対象疾患以外の患者は除外した。これらの患者を,平成22年4月から平成24年3月までに入院した回復期リハ非入院群8例(平均年齢85.6±6.9歳,大腿骨頚部・近位部骨折4例,腰椎圧迫骨折4例)と,平成24年4月から平成25年10月までに回復期リハ病棟に入退院した回復期リハ入院群5例(平均年齢78.8±8.5歳,大腿骨頚部・近位部骨折1例,腰椎圧迫骨折4例)に分類した。調査項目としては,疾患名,発症日,入退院日,個別リハ単位数,入退院時FIM,転帰先について後方視的に抽出し,平均在院日数,個別リハ平均単位数,FIM利得及びFIM効率を算出した。2群間における統計学的処理はMann-Whitney U検定を用い,有意水準は危険率5%未満とした。
【倫理的配慮】本研究の内容はヘルシンキ宣言に基づき,当院倫理審査委員会の承認を受けて実施した。またデータ処理に関しては,対象者の個人情報を排除し,匿名化に配慮して統計的解析を行った。
【結果】1日当たりの個別リハ平均単位数は,非入院群で1.5単位(透析日0.8単位,非透析日1.9単位),入院群で3.5単位(透析日3.2単位,非透析日3.8単位)であり有意差が認められた(p<0.01)。FIMでは,非入院群が入院時65.5点,退院時75.6点,FIM利得10.1,FIM効率0.2,入院群では入院時63.0点,退院時99.8点,FIM利得36.8,FIM効率0.4となり,入院時FIM以外において有意な改善が認められた(p<0.05)。転帰先では,非入院群において自宅3例,転院等5例,入院群では自宅4例,転院1例であり,有意差は認められなかったものの,自宅復帰の割合が多い傾向が示唆された。平均在院日数は,非入院群で72.1日,入院群で71.2日であり,有意差を認めなかった。
【考察】非入院群においては,個別リハ平均単位数は1.5単位であり,透析日と非透析日の格差も大きい事から,充分な治療効果を提供するには介入時間が乏しい事が示された。これに対し,入院群においては平均単位数が3.5単位へと増加し,透析日と非透析日の格差も減少していた。この事は少なからず患者のADL改善に影響を及ぼし,それが非入院群と入院群の3倍以上のFIM利得の差となって示されたと思われる。しかしながら,ADLに改善が示されたにも関わらず,転帰先及び在院日数においては有意差を認めなかった。これは,転帰先及び在院日数に関しては,ADLのみならず家族背景や社会的要因等が複合的に影響を及ぼしている事が考えられ,これらを改善する為には回復期リハ病棟としてのチーム医療での取り組みが必要と思われる。本研究の限界として,症例数の少なさと,それ故に運動器というカテゴリーの中で複数の疾患を混在させた事が挙げられる。その為,今後は症例数を増やし,同一疾患で比較検討を行う事によって,より信頼性のある効果判定が可能になると思われる。
【理学療法学研究としての意義】従来,適切なリハを必要とする透析患者は多かったが,医療制度の影響もあり,その提供数は充分ではなかったと思われる。回復期リハ病棟に入院可能となった事により,透析患者においてもリハ提供数の充実が図られ,その結果,転帰先やFIM利得等の改善に影響を及ぼしたものと考える。今回の調査は,回復期リハ病棟に課せられた新たな役割の効果を明確化したものであり,意義あるものと考える。