[0711] 当院の大腿骨近位部骨折術後患者の在院日数の妥当性及びその短縮に関しての分析・検討
キーワード:大腿骨近位部骨折術後患者, 在院日数短縮, FIM
【はじめに,目的】
近年,包括的な医療が進み,在院日数の短縮が求められている。2011年度に回復期病棟に入院した整形外科系患者の在院日数の全国平均は56.4日と報告されている。当院回復期病棟ではH24.4.1~H25.9.10の整形外科系入院患者のうち,大腿骨近位部骨折術後患者(以下患者)が約6割であったが,患者の平均在院日数は62.7日と全国平均に比べ,約6日長かった。そこで,当院の患者の在院日数の妥当性及び短縮の可能性を探ることを目的に,急性期病院の術後在院日数,年齢,MMSE,機能的自立度評価法(以下FIM),受傷前の移動能力,家族構成,転帰先を後方視的に調査した。そして,患者を2群に分類し比較検討した結果をここに報告する。
【方法】
対象はH24.4.1~H25.9.10に当院を退院した患者41名(急性増悪などで転院となった患者は除く)。患者データはカルテより以下の項目を後方視的に調査した。在院日数の他に,急性期病院の術後在院日数,年齢,MMSE,入退院時FIM得点(総得点,各項目),FIM利得(退院時FIM得点-入院時FIM得点),FIM効率(FIM利得/在院日数),受傷前の移動能力,家族構成,転帰先を調査した。
その後,対象を回復期病棟在院日数の全国平均56.4日を基準とし,56日以上群と55日以下群の2群に分類。そして,急性期病院の術後在院日数,年齢,入退院時MMSE,入退院時FIM,FIM利得の比較を実施。その他,受傷前の移動能力別に独歩群と非独歩群の2群,家族構成別に家族と同居群と独居群の2群にそれぞれ分類し,在院日数,入退院時FIM,FIM利得,FIM効率の比較を行った。統計学的検定はマン・ホイットニーのU検定を用いた。また,退院時FIMで有意差が認められた項目と在院日数の関連を調査する為,Spearmanの順位相関係数を実施。有意水準は5%未満で,解析にはR2.8.1を使用した。
【倫理的配慮,説明と同意】
後方視的研究となる為,個人情報の取り扱いに十分配慮し,ヘルシンキ宣言に沿って行った。
【結果】
急性期病院の術後在院日数36.4(SD14.0)日,年齢78.1(SD11.8)歳,入院時MMSE23.7(SD4.9)点,退院時MMSE25.8(SD5.0)点,入院時FIM総得点87.4(SD16.2)点,退院時FIM総得点106.5(SD14.9)点,FIM利得19.1(SD6.9)点,FIM効率0.30(SD0.23),受傷前独歩29名,受傷前非独歩12名,家族と同居34名,独居7名,受傷前の生活場所へ退院38名,受傷前の非生活場所へ退院3名であった。
56日以上群(24名)と55日以下群(17名)の比較では急性期病院の術後在院日数,年齢,入退院時MMSE,FIM利得は有意差が無かった(p>0.05)。入退院時FIM総得点では55日以下群の得点が有意に高く,退院時のFIM各項目では清拭,更衣(下衣),トイレ動作,移乗(ベッド・トイレ・浴槽),歩行,階段の8項目で有意差を認めた(p<0.05)。また,56日以上群のこれら8項目は,退院時に6点(修正自立)未満であった。
独歩群と非独歩群の比較では,在院日数,FIM効率で有意差を認め(p<0.05),独歩群で有意に在院日数が短く,FIM効率が高かった。入退院時FIM総得点,FIM利得には有意差が無かった(p>0.05)。
同居群と独居群の比較では,在院日数,その他の項目に有意差は無かった(p>0.05)。
退院時FIMで有意差が認められた項目と在院日数の関連については,56日以上群と55日以下群の比較でのみ退院時FIMに有意差があり,トイレ動作のみ-0.51でかなり高い負の相関があった。その他の7項目は-0.4~-0.5で中等度の負の相関があった(p<0.01)。
【考察】
独歩群と非独歩群の比較では,退院時FIM総得点,FIM利得には有意差が無かったにも関わらず,在院日数には有意差があった。よって,非独歩群は退院時に独歩群に近い日常生活動作能力となるが,そこに到達するまでには,時間が必要であることが推察される。FIM効率は,0.30と2011年度の全国平均0.27を上回っていた。非独歩群の受傷前の生活場所への復帰率は91.7%と,先行研究の報告にある自宅復帰率60.1%~81.9%に比べ高くなっている。これらのことから,当院の患者の在院日数には妥当性があるのではないかと考える。
一方,退院時FIMで有意差が認められた項目と在院日数の関連では,清拭,更衣(下衣),トイレ動作,移乗(ベッド・トイレ・浴槽),歩行,階段で中等度以上の負の相関があった。よって,今後は在院日数が長いにも関わらず,退院時に修正自立に至らず,在院日数と負の相関があった上記8項目に着目し,早期の家族指導を含めたリハビリプログラムを見直すことで,在院日数短縮の一助となると考える。
【理学療法学研究としての意義】
在院日数には妥当性があること示唆された。一方,在院日数短縮に関して着目すべきことが探れた点において,理学療法学研究としての意義があると思われる。
近年,包括的な医療が進み,在院日数の短縮が求められている。2011年度に回復期病棟に入院した整形外科系患者の在院日数の全国平均は56.4日と報告されている。当院回復期病棟ではH24.4.1~H25.9.10の整形外科系入院患者のうち,大腿骨近位部骨折術後患者(以下患者)が約6割であったが,患者の平均在院日数は62.7日と全国平均に比べ,約6日長かった。そこで,当院の患者の在院日数の妥当性及び短縮の可能性を探ることを目的に,急性期病院の術後在院日数,年齢,MMSE,機能的自立度評価法(以下FIM),受傷前の移動能力,家族構成,転帰先を後方視的に調査した。そして,患者を2群に分類し比較検討した結果をここに報告する。
【方法】
対象はH24.4.1~H25.9.10に当院を退院した患者41名(急性増悪などで転院となった患者は除く)。患者データはカルテより以下の項目を後方視的に調査した。在院日数の他に,急性期病院の術後在院日数,年齢,MMSE,入退院時FIM得点(総得点,各項目),FIM利得(退院時FIM得点-入院時FIM得点),FIM効率(FIM利得/在院日数),受傷前の移動能力,家族構成,転帰先を調査した。
その後,対象を回復期病棟在院日数の全国平均56.4日を基準とし,56日以上群と55日以下群の2群に分類。そして,急性期病院の術後在院日数,年齢,入退院時MMSE,入退院時FIM,FIM利得の比較を実施。その他,受傷前の移動能力別に独歩群と非独歩群の2群,家族構成別に家族と同居群と独居群の2群にそれぞれ分類し,在院日数,入退院時FIM,FIM利得,FIM効率の比較を行った。統計学的検定はマン・ホイットニーのU検定を用いた。また,退院時FIMで有意差が認められた項目と在院日数の関連を調査する為,Spearmanの順位相関係数を実施。有意水準は5%未満で,解析にはR2.8.1を使用した。
【倫理的配慮,説明と同意】
後方視的研究となる為,個人情報の取り扱いに十分配慮し,ヘルシンキ宣言に沿って行った。
【結果】
急性期病院の術後在院日数36.4(SD14.0)日,年齢78.1(SD11.8)歳,入院時MMSE23.7(SD4.9)点,退院時MMSE25.8(SD5.0)点,入院時FIM総得点87.4(SD16.2)点,退院時FIM総得点106.5(SD14.9)点,FIM利得19.1(SD6.9)点,FIM効率0.30(SD0.23),受傷前独歩29名,受傷前非独歩12名,家族と同居34名,独居7名,受傷前の生活場所へ退院38名,受傷前の非生活場所へ退院3名であった。
56日以上群(24名)と55日以下群(17名)の比較では急性期病院の術後在院日数,年齢,入退院時MMSE,FIM利得は有意差が無かった(p>0.05)。入退院時FIM総得点では55日以下群の得点が有意に高く,退院時のFIM各項目では清拭,更衣(下衣),トイレ動作,移乗(ベッド・トイレ・浴槽),歩行,階段の8項目で有意差を認めた(p<0.05)。また,56日以上群のこれら8項目は,退院時に6点(修正自立)未満であった。
独歩群と非独歩群の比較では,在院日数,FIM効率で有意差を認め(p<0.05),独歩群で有意に在院日数が短く,FIM効率が高かった。入退院時FIM総得点,FIM利得には有意差が無かった(p>0.05)。
同居群と独居群の比較では,在院日数,その他の項目に有意差は無かった(p>0.05)。
退院時FIMで有意差が認められた項目と在院日数の関連については,56日以上群と55日以下群の比較でのみ退院時FIMに有意差があり,トイレ動作のみ-0.51でかなり高い負の相関があった。その他の7項目は-0.4~-0.5で中等度の負の相関があった(p<0.01)。
【考察】
独歩群と非独歩群の比較では,退院時FIM総得点,FIM利得には有意差が無かったにも関わらず,在院日数には有意差があった。よって,非独歩群は退院時に独歩群に近い日常生活動作能力となるが,そこに到達するまでには,時間が必要であることが推察される。FIM効率は,0.30と2011年度の全国平均0.27を上回っていた。非独歩群の受傷前の生活場所への復帰率は91.7%と,先行研究の報告にある自宅復帰率60.1%~81.9%に比べ高くなっている。これらのことから,当院の患者の在院日数には妥当性があるのではないかと考える。
一方,退院時FIMで有意差が認められた項目と在院日数の関連では,清拭,更衣(下衣),トイレ動作,移乗(ベッド・トイレ・浴槽),歩行,階段で中等度以上の負の相関があった。よって,今後は在院日数が長いにも関わらず,退院時に修正自立に至らず,在院日数と負の相関があった上記8項目に着目し,早期の家族指導を含めたリハビリプログラムを見直すことで,在院日数短縮の一助となると考える。
【理学療法学研究としての意義】
在院日数には妥当性があること示唆された。一方,在院日数短縮に関して着目すべきことが探れた点において,理学療法学研究としての意義があると思われる。