[0787] 高齢心疾患男性患者における栄養状態と身体機能に関する研究
キーワード:高齢心疾患患者, 栄養, 身体機能
【はじめに,目的】栄養状態の指標としてのGeriatric Nutritional Risk Index(GNRI)は,高齢心疾患患者の日常生活活動や生命予後を予測する指標として活用されている(Kinugasa et al., 2013)。また,高齢心疾患患者に対する新たな取り組みとして栄養状態の評価ならびに介入の重要性についても提唱されている(Tsuchihashi-Makaya et al., 2013)そこで,本研究では,“高齢心疾患男性患者における低栄養状態では,身体機能の各指標も低値を示す‘という仮説を立て,それを検証すべく,以下の検討を行った。本研究の目的は,高齢心疾患男性患者におけるGNRI高低による身体機能指標の差異について明らかにすることである。また,高GNRIレベルの身体機能の各指標について抽出することである。
【方法】
対象者は,当院の診療科に入院中で身体機能指標の測定に同意が得られた高齢男性心疾患患者251例(平均年齢74.7歳)である。除外基準は,診療記録より各指標の調査不能例,重篤な不整脈,呼吸器疾患,整形外科疾患を有する例であった。本研究で我々は栄養状態の指標としてGeriatric Nutritional Risk Index(GNRI)を用いた。全対象者は,GNRI(14.89*血清アルブミン値(g/dl)+41.7* Body mass index(BMI)/22)により,GNRI高値(≧92)群178例と低値(<92)群73例の2群に選別された。身体機能の指標は,握力(kgf),膝伸展筋力(kgf/kg*100),10m最大歩行速度(m/sec)および開眼片足立位時間(sec)である。我々は,握力,膝伸展筋力は左右最高値の平均値を,10m最大歩行速度および片足立位時間はそれらの最高値を指標とした。解析は,2群間における年齢,,左室駆出率(LVEF),血清アルブミン値,基礎疾患,薬剤などの患者背景および身体機能の各指標の比較にはt検定および共分散分析を用いた。GNRIが高いレベルの身体機能のカットオフ値の抽出には,受信者動作特性(ROC)曲線を求め,感度と特異度より判定した。統計学的有意差判定の基準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,当大学生命倫理委員会により承認されている。本研究の実施にして我々は全対象者に研究の趣旨を説明後,同意を得た。
【結果】患者背景は,年齢, BMI,および血清アルブミン値を除き2群間に差はなかった。
年齢を調整した分散分析の結果,GNRI低値群は高値群に比し,握力(25.5 vs. 29.4 kgf,P<0.01),膝伸展筋力(44.7 vs. 53.6%,P<0.01),10m最大歩行速度(1.4 vs. 1.7 m/sec,P<0.01)および片足立位時間(14.6 vs. 24.1 Nm/kg,P<0.01)と各指標において低値を示した。また,ROC曲線より抽出された身体機能指標の各カットオフ値は,握力は25.7(kgf),膝伸展筋力は46.1(%),10m最大歩行速度は1.46(m/sec),片足立位時間は11.3(sec)であった。
【考察】本研究は,GNRIを用い栄養状態による身体機能指標の差異について明らかにすることであった。年齢を調整した分散分析の結果,GNRI低値群の身体機能指標は高値群に比し,全てにおいて低い値を示した。Kinugasa et al.(2013)は,低栄養状態の患者は,高栄養状態に比しBarthel Indexによる日常生活活動は低下することを示している。本研究の高齢心疾患男性患者における低栄養状態は,身体機能の低下に少なからず影響を及ぼす可能性があり,先行研究を支持するものと考えられる。また,本研究では栄養状態が高いレベルの身体機能の各カットオフ値を抽出した。これらの指標は,栄養状態から見た身体機能向上のための指導方策の一助となる可能性がある。本研究は,横断的研究であるため,栄養状態の改善が,身体機能や日常生活活動レベルの向上に直接寄与するのかについては言及できない。また本研究は,男性のみを対象としているため,女性においては更なる研究を要する。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,高齢心疾患患者の身体機能は,栄養状態の高低により差異があり,また,各指標のカットオフ値が明らかとなった。以上より,本研究成果は,理学療法学研究における指導方策の一助となる可能性がある。
【方法】
対象者は,当院の診療科に入院中で身体機能指標の測定に同意が得られた高齢男性心疾患患者251例(平均年齢74.7歳)である。除外基準は,診療記録より各指標の調査不能例,重篤な不整脈,呼吸器疾患,整形外科疾患を有する例であった。本研究で我々は栄養状態の指標としてGeriatric Nutritional Risk Index(GNRI)を用いた。全対象者は,GNRI(14.89*血清アルブミン値(g/dl)+41.7* Body mass index(BMI)/22)により,GNRI高値(≧92)群178例と低値(<92)群73例の2群に選別された。身体機能の指標は,握力(kgf),膝伸展筋力(kgf/kg*100),10m最大歩行速度(m/sec)および開眼片足立位時間(sec)である。我々は,握力,膝伸展筋力は左右最高値の平均値を,10m最大歩行速度および片足立位時間はそれらの最高値を指標とした。解析は,2群間における年齢,,左室駆出率(LVEF),血清アルブミン値,基礎疾患,薬剤などの患者背景および身体機能の各指標の比較にはt検定および共分散分析を用いた。GNRIが高いレベルの身体機能のカットオフ値の抽出には,受信者動作特性(ROC)曲線を求め,感度と特異度より判定した。統計学的有意差判定の基準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,当大学生命倫理委員会により承認されている。本研究の実施にして我々は全対象者に研究の趣旨を説明後,同意を得た。
【結果】患者背景は,年齢, BMI,および血清アルブミン値を除き2群間に差はなかった。
年齢を調整した分散分析の結果,GNRI低値群は高値群に比し,握力(25.5 vs. 29.4 kgf,P<0.01),膝伸展筋力(44.7 vs. 53.6%,P<0.01),10m最大歩行速度(1.4 vs. 1.7 m/sec,P<0.01)および片足立位時間(14.6 vs. 24.1 Nm/kg,P<0.01)と各指標において低値を示した。また,ROC曲線より抽出された身体機能指標の各カットオフ値は,握力は25.7(kgf),膝伸展筋力は46.1(%),10m最大歩行速度は1.46(m/sec),片足立位時間は11.3(sec)であった。
【考察】本研究は,GNRIを用い栄養状態による身体機能指標の差異について明らかにすることであった。年齢を調整した分散分析の結果,GNRI低値群の身体機能指標は高値群に比し,全てにおいて低い値を示した。Kinugasa et al.(2013)は,低栄養状態の患者は,高栄養状態に比しBarthel Indexによる日常生活活動は低下することを示している。本研究の高齢心疾患男性患者における低栄養状態は,身体機能の低下に少なからず影響を及ぼす可能性があり,先行研究を支持するものと考えられる。また,本研究では栄養状態が高いレベルの身体機能の各カットオフ値を抽出した。これらの指標は,栄養状態から見た身体機能向上のための指導方策の一助となる可能性がある。本研究は,横断的研究であるため,栄養状態の改善が,身体機能や日常生活活動レベルの向上に直接寄与するのかについては言及できない。また本研究は,男性のみを対象としているため,女性においては更なる研究を要する。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,高齢心疾患患者の身体機能は,栄養状態の高低により差異があり,また,各指標のカットオフ値が明らかとなった。以上より,本研究成果は,理学療法学研究における指導方策の一助となる可能性がある。