[0828] 超音波照射が軟部組織硬度と血液循環動態に与える影響
キーワード:超音波, 軟部組織硬度, 血液循環動態
【目的】
超音波療法は,運動器疾患による筋骨格系障害の代表的な物理療法として認識されている。筋骨格系障害の主症状として疼痛と関節可動域制限がある。疼痛は,体性神経系と自律神経系の興奮性を上昇させ,軟部組織硬度の異常や末梢血液循環不全を惹起する。この結果,関節可動域制限を誘発し,運動機能障害や日常生活活動の阻害因子となる。このため,軟部組織硬度と末梢血液循環の改善は,疼痛治療において重要な要素となる。しかしながら,超音波照射による軟部組織硬度と末梢血液循環の変化の関連性を明らかに示す報告は少ない。本研究の目的は,超音波照射が軟部組織硬度と血液循環動態に与える影響を明らかにすることである。
【方法】
対象は,健常成人男性25名とした。対象の属性(身長・体重・BMI)は平均±標準偏差で示す。対象は,平均年齢24歳(範囲20-39歳),身長169.6±4.8cm,体重66.5±11.3kg,BMI23.1±3.5であった。施行条件は,1.超音波照射あり(US群),2.超音波照射なし(Placebo群),3.安静のみ(Control群)の3つを比較した。超音波は,周波数3MHz,強度1 W/cm2,照射時間率100%,照射時間10分間,照射範囲を超音波導子面積の約2倍とし,ストローク法にて照射した。超音波照射には超音波治療器(EU-940,伊藤超短波社製)を用いた。US群は上記方法による超音波照射を実施し,Placebo群では強度0 W/cm2(超音波照射なし)とした。Control群には安静を指示した。施行部位および測定部位は,右僧帽筋上部線維とした。評価項目は,軟部組織硬度と末梢血液循環および皮膚表面温度とした。なお,末梢血液循環は近赤外線分光法から得られた酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの測定値の和である総ヘモグロビン(Total-Hb)の値を指標とした。測定機器は,組織硬度計(OE-220,伊藤超短波社製),近赤外線分光器(NIRO-200,浜松ホトニクス社製)および放射温度計(THI-700L,Tasco Japan社製)を使用した。測定プロトコルは,各施行直前(安静),各施行10分間,各施行後60分間(安静)とした。軟部組織硬度と皮膚表面温度は,T1(各施行直前),T2(各施行直後),およびT3(各施行10分後)からT8(各施行60分後)の60分間を10分間隔に分割し測定した。末梢血液循環は,T1からT8の各測定時点におけるTotal-Hbの1分間のデータの加算平均値を代表値とした。統計解析は,施行条件(US・Placebo・Control)と測定時間(T1~T8)を2要因とする反復測定による二元配置分散分析を行った後に多重比較(Tukey)検定を実施した。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,こおりやま東都学園研究倫理委員会の承認を得て行われたものである。全ての対象者には本研究の目的と内容を口頭および書面にて説明を行い,参加同意書への自筆による署名を得て研究協力の同意を得た。
【結果】
反復測定による二元配置分散分析の結果,軟部組織硬度とTotal-Hbおよび皮膚表面温度の各測定項目において施行条件と測定時間の間で交互作用(p<0.01)を認めた。多重比較の結果では,軟部組織硬度は施行直後から60分後までUS群がPlacebo群およびControl群に比べ低かった(p<0.05)。Total-Hbは,施行直後から60分後までUS群がPlacebo群およびControl群に比べ高かった(p<0.01)。皮膚表面温度は,施行直後から20分後までUS群がPlacebo群およびControl群に比べ高かった(p<0.05)。
【考察】
本研究では,超音波照射が軟部組織硬度と血液循環動態に与える影響を検討した。本結果から,超音波は照射後60分間に及ぶ軟部組織硬度の低下と血液循環動態の促進に効果があることが示唆された。この要因としては,皮膚表面温度の変化から超音波の温熱効果が影響したものと考えられる。しかしながら,皮膚表面温度の経時的変化から超音波の効果は20分程度認めたが,軟部組織硬度や末梢血液循環は照射後60分間において増加していた。上記の結果は,温熱の残存効果に加えて,超音波の機械的振動刺激が骨格筋を中心とした軟部組織の粘弾性や筋交感神経などの自律神経系に対して直接的に影響し,軟部組織硬度の低下や血液循環動態を賦活した可能性が示唆された。超音波による交感神経系の抑制は,骨格筋内の血管平滑筋を弛緩させる。さらに,軟部組織硬度の変化に伴う筋内圧の低下が毛細血管への圧迫を直接的に軽減させる。これらの血管拡張性因子の活性亢進により,筋組織内の毛細血管が拡張したため,末梢血液循環が促進したものと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
超音波は軟部組織硬度と末梢血液循環の改善に有効である可能性が示唆された。超音波療法による疼痛および関節可動域治療に対する臨床的意義は高いものと考える。
超音波療法は,運動器疾患による筋骨格系障害の代表的な物理療法として認識されている。筋骨格系障害の主症状として疼痛と関節可動域制限がある。疼痛は,体性神経系と自律神経系の興奮性を上昇させ,軟部組織硬度の異常や末梢血液循環不全を惹起する。この結果,関節可動域制限を誘発し,運動機能障害や日常生活活動の阻害因子となる。このため,軟部組織硬度と末梢血液循環の改善は,疼痛治療において重要な要素となる。しかしながら,超音波照射による軟部組織硬度と末梢血液循環の変化の関連性を明らかに示す報告は少ない。本研究の目的は,超音波照射が軟部組織硬度と血液循環動態に与える影響を明らかにすることである。
【方法】
対象は,健常成人男性25名とした。対象の属性(身長・体重・BMI)は平均±標準偏差で示す。対象は,平均年齢24歳(範囲20-39歳),身長169.6±4.8cm,体重66.5±11.3kg,BMI23.1±3.5であった。施行条件は,1.超音波照射あり(US群),2.超音波照射なし(Placebo群),3.安静のみ(Control群)の3つを比較した。超音波は,周波数3MHz,強度1 W/cm2,照射時間率100%,照射時間10分間,照射範囲を超音波導子面積の約2倍とし,ストローク法にて照射した。超音波照射には超音波治療器(EU-940,伊藤超短波社製)を用いた。US群は上記方法による超音波照射を実施し,Placebo群では強度0 W/cm2(超音波照射なし)とした。Control群には安静を指示した。施行部位および測定部位は,右僧帽筋上部線維とした。評価項目は,軟部組織硬度と末梢血液循環および皮膚表面温度とした。なお,末梢血液循環は近赤外線分光法から得られた酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの測定値の和である総ヘモグロビン(Total-Hb)の値を指標とした。測定機器は,組織硬度計(OE-220,伊藤超短波社製),近赤外線分光器(NIRO-200,浜松ホトニクス社製)および放射温度計(THI-700L,Tasco Japan社製)を使用した。測定プロトコルは,各施行直前(安静),各施行10分間,各施行後60分間(安静)とした。軟部組織硬度と皮膚表面温度は,T1(各施行直前),T2(各施行直後),およびT3(各施行10分後)からT8(各施行60分後)の60分間を10分間隔に分割し測定した。末梢血液循環は,T1からT8の各測定時点におけるTotal-Hbの1分間のデータの加算平均値を代表値とした。統計解析は,施行条件(US・Placebo・Control)と測定時間(T1~T8)を2要因とする反復測定による二元配置分散分析を行った後に多重比較(Tukey)検定を実施した。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,こおりやま東都学園研究倫理委員会の承認を得て行われたものである。全ての対象者には本研究の目的と内容を口頭および書面にて説明を行い,参加同意書への自筆による署名を得て研究協力の同意を得た。
【結果】
反復測定による二元配置分散分析の結果,軟部組織硬度とTotal-Hbおよび皮膚表面温度の各測定項目において施行条件と測定時間の間で交互作用(p<0.01)を認めた。多重比較の結果では,軟部組織硬度は施行直後から60分後までUS群がPlacebo群およびControl群に比べ低かった(p<0.05)。Total-Hbは,施行直後から60分後までUS群がPlacebo群およびControl群に比べ高かった(p<0.01)。皮膚表面温度は,施行直後から20分後までUS群がPlacebo群およびControl群に比べ高かった(p<0.05)。
【考察】
本研究では,超音波照射が軟部組織硬度と血液循環動態に与える影響を検討した。本結果から,超音波は照射後60分間に及ぶ軟部組織硬度の低下と血液循環動態の促進に効果があることが示唆された。この要因としては,皮膚表面温度の変化から超音波の温熱効果が影響したものと考えられる。しかしながら,皮膚表面温度の経時的変化から超音波の効果は20分程度認めたが,軟部組織硬度や末梢血液循環は照射後60分間において増加していた。上記の結果は,温熱の残存効果に加えて,超音波の機械的振動刺激が骨格筋を中心とした軟部組織の粘弾性や筋交感神経などの自律神経系に対して直接的に影響し,軟部組織硬度の低下や血液循環動態を賦活した可能性が示唆された。超音波による交感神経系の抑制は,骨格筋内の血管平滑筋を弛緩させる。さらに,軟部組織硬度の変化に伴う筋内圧の低下が毛細血管への圧迫を直接的に軽減させる。これらの血管拡張性因子の活性亢進により,筋組織内の毛細血管が拡張したため,末梢血液循環が促進したものと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
超音波は軟部組織硬度と末梢血液循環の改善に有効である可能性が示唆された。超音波療法による疼痛および関節可動域治療に対する臨床的意義は高いものと考える。