[0956] 短時間リハビリ特化型デイサービスの利用が運動機能に及ぼす影響
キーワード:デイサービス, 運動機能, Berg Balance Scale
【はじめに】生活維持期リハビリテーションの医療保険から介護保険への移行は不十分といわれている。通所施設は1日単位の場合が多く,外来リハビリテーションのように運動機能のみを提供する形態が少ないことが要因のひとつとなっている。リハビリ特化型デイサービスは,短時間で運動機能の維持向上に特化した施設を求める利用者のニーズに答えつつある。1日単位の通所介護施設における運動機能については,筋力,歩行速度,バランス能力を長期的に報告したものや運動機能とADL低下の関連を報告したものがある。短時間のリハビリ特化型デイサービスにおける運動機能についての報告は散見されるものの数は少ない。理学療法士が管理運営するリハビリ特化型デイサービス形態を拡大するためにも,運動機能面の基礎データを増やす必要性がある。新規開設したリハビリ特化型デイサービスが運動機能に及ぼす影響について報告する。
【対象および方法】対象は,リハビリ特化型デイサービスを新規に利用しはじめた50名(男性26名,女性24名,72.9±9.1歳)である。要介護度の内訳は,要支援1が18%,要支援2が20%,要介護1が40%,要介護2が20%,要介護4が2%であった。疾患の内訳は,脳卒中が42%,パーキンソン症候群が6%,変形性関節疾患が8%,脊髄疾患が14%,下肢骨折術後が12%,廃用症候群が16%,その他が2%であった。リハビリ特化型デイサービスのトレーニング内容は,体調チェック後に,レッドコード社製サスペンションスリングによる柔軟性向上と筋力増強を目的としたグループ運動,HUR社製マシンによるレッグプレスと股関節内外転,自転車エルゴメーター,さらに,個別リハビリテーションである。1単位の利用時間は,3時間5分である。運動機能評価項目は,Barthel Index(以下,BI),Berg Balance Scale(以下,BBS),Functional Reach Test(以下,FRT),10m最速歩行,Timed Up & Go Test(以下,TUG)とし,利用開始時の全項目と2013年5月(以下,再評価時)のBIを除く項目を比較した。再評価時には,主観的変化を自由に回答させた。統計処理は,Wilcoxonの符号付順位和検定を危険率5%で行った。
【説明と同意】個人情報使用同意書を作成し,個人を特定する情報は用いず,本事業所の活動状況についての学術的教育的活動において使用する旨の内容を,本人ならびに家族に説明し,同意署名を得た。
【結果】利用開始時のBIは88.5±10.3点で,利用期間は145±75日であった。利用開始時BBSは44.4±8.1点,FRTは20.4±5.8cm,10m最速歩行は22.0±14.6秒,TUGは20.6±14.9秒であった。再評価時BBSは46.7±7.7点,FRTは22.7±5.3cm,10m最速歩行は19.7±14.3秒,TUGは19.1±13.2秒であった。再評価時のBBS,FRT,10m最速歩行,TUGすべてが利用開始時に比べて有意に向上していた。BBSの下位項目では,利用者数の割合で,立ち上がりが6%,立位保持が6%,着座が4%,移乗が12%,閉眼立位が4%,閉脚立位が18%,FRTが28%,床から拾うが16%,後ろを見るが36%,360度回転が32%,段差踏み換えが44%,つぎ足が54%,片脚立位が18%向上していた。再評価時の主観的自由回答では,「家の中を這っていたが,伝い歩きできるようになった」,「膝の痛みが減って歩きやすくなった」「歩いているとき足が引っ掛からなくなった」などの改善を訴えた利用者は32名であった。マイナス要素を回答した利用者はいなかった。
【考察】軽度要介護高齢者は,短時間のリハビリ特化型のデイサービスを利用することにより,平均値でBBSが2.3点,FRTは2.3cm,10m最速歩行は2.3秒,TUGは1.5秒改善し,運動機能が向上した。BBSの下位項目では,つぎ足や後ろを見る立位バランス能力と,段差踏み換えや360度回転の一瞬片脚になるバランス能力が向上した。今回の対象者には以前から1日単位の通所施設を利用していた利用者も含まれており,個人に適した運動を短時間で提供するリハビリ特化型デイサービスを新規に利用しはじめたことにより運動機能が向上し,歩行に関する改善を実感されていた。一方で,運動機能は向上しているものの主観的に向上を感じられない利用者も18名おり,より実感しやすい評価尺度を導入する必要性がある。健常高齢者がフィットネスなどの運動により健康年齢を延長させているように,軽度要介護高齢者にとってリハビリ特化型デイサービスが新たに運動機能を向上させ,生活の質を向上させる機会になりえると考える。
【理学療法学研究としての意義】運動機能の維持向上を主に目指すことを求める軽度要介護高齢者への啓蒙に役立つ。理学療法士が管理運営するリハビリ特化型デイサービスを利用する軽度要介護高齢者の運動機能データの変化が蓄積できる。
【対象および方法】対象は,リハビリ特化型デイサービスを新規に利用しはじめた50名(男性26名,女性24名,72.9±9.1歳)である。要介護度の内訳は,要支援1が18%,要支援2が20%,要介護1が40%,要介護2が20%,要介護4が2%であった。疾患の内訳は,脳卒中が42%,パーキンソン症候群が6%,変形性関節疾患が8%,脊髄疾患が14%,下肢骨折術後が12%,廃用症候群が16%,その他が2%であった。リハビリ特化型デイサービスのトレーニング内容は,体調チェック後に,レッドコード社製サスペンションスリングによる柔軟性向上と筋力増強を目的としたグループ運動,HUR社製マシンによるレッグプレスと股関節内外転,自転車エルゴメーター,さらに,個別リハビリテーションである。1単位の利用時間は,3時間5分である。運動機能評価項目は,Barthel Index(以下,BI),Berg Balance Scale(以下,BBS),Functional Reach Test(以下,FRT),10m最速歩行,Timed Up & Go Test(以下,TUG)とし,利用開始時の全項目と2013年5月(以下,再評価時)のBIを除く項目を比較した。再評価時には,主観的変化を自由に回答させた。統計処理は,Wilcoxonの符号付順位和検定を危険率5%で行った。
【説明と同意】個人情報使用同意書を作成し,個人を特定する情報は用いず,本事業所の活動状況についての学術的教育的活動において使用する旨の内容を,本人ならびに家族に説明し,同意署名を得た。
【結果】利用開始時のBIは88.5±10.3点で,利用期間は145±75日であった。利用開始時BBSは44.4±8.1点,FRTは20.4±5.8cm,10m最速歩行は22.0±14.6秒,TUGは20.6±14.9秒であった。再評価時BBSは46.7±7.7点,FRTは22.7±5.3cm,10m最速歩行は19.7±14.3秒,TUGは19.1±13.2秒であった。再評価時のBBS,FRT,10m最速歩行,TUGすべてが利用開始時に比べて有意に向上していた。BBSの下位項目では,利用者数の割合で,立ち上がりが6%,立位保持が6%,着座が4%,移乗が12%,閉眼立位が4%,閉脚立位が18%,FRTが28%,床から拾うが16%,後ろを見るが36%,360度回転が32%,段差踏み換えが44%,つぎ足が54%,片脚立位が18%向上していた。再評価時の主観的自由回答では,「家の中を這っていたが,伝い歩きできるようになった」,「膝の痛みが減って歩きやすくなった」「歩いているとき足が引っ掛からなくなった」などの改善を訴えた利用者は32名であった。マイナス要素を回答した利用者はいなかった。
【考察】軽度要介護高齢者は,短時間のリハビリ特化型のデイサービスを利用することにより,平均値でBBSが2.3点,FRTは2.3cm,10m最速歩行は2.3秒,TUGは1.5秒改善し,運動機能が向上した。BBSの下位項目では,つぎ足や後ろを見る立位バランス能力と,段差踏み換えや360度回転の一瞬片脚になるバランス能力が向上した。今回の対象者には以前から1日単位の通所施設を利用していた利用者も含まれており,個人に適した運動を短時間で提供するリハビリ特化型デイサービスを新規に利用しはじめたことにより運動機能が向上し,歩行に関する改善を実感されていた。一方で,運動機能は向上しているものの主観的に向上を感じられない利用者も18名おり,より実感しやすい評価尺度を導入する必要性がある。健常高齢者がフィットネスなどの運動により健康年齢を延長させているように,軽度要介護高齢者にとってリハビリ特化型デイサービスが新たに運動機能を向上させ,生活の質を向上させる機会になりえると考える。
【理学療法学研究としての意義】運動機能の維持向上を主に目指すことを求める軽度要介護高齢者への啓蒙に役立つ。理学療法士が管理運営するリハビリ特化型デイサービスを利用する軽度要介護高齢者の運動機能データの変化が蓄積できる。