[0966] 橈骨遠位端骨折術後の運動方向別関節可動域の改善率の比較
キーワード:橈骨遠位端骨折, ダーツスロー・モーション, oppositeダーツスロー・モーション
【はじめに,目的】近年,手関節の機能的な運動方向としてダーツスロー・モーション(以下DTM)とDTMに直交するopposite DTMが注目されている。我々は昨年の本大会にて,ADL能力との関係を調査し,DTM面ROMとopposite DTM面ROMが重要であると報告した。また,橈骨遠位端骨折後はDTM面ROMの改善が他のROMより早く,おおよそ術後3か月で回復することを報告した。今回は橈骨遠位端骨折後にADL能力が回復した症例において,DTM面やopposite DTM面のROMの改善率を調査し,運動方向によりROMの回復が異なるかを明らかにすることとした。
【方法】対象は,橈骨遠位端骨折後症例12名,平均年齢64.7±9.7歳,男性4名,女性8名であった。骨折型はAO分類type A 3例,typeB 1例,TypeC 8例であり,治療方法は12例とも掌側プレートであった。術後1年以上経過している症例とし,評価時期は受傷後から平均14.3±4.2ヵ月後であった。ADL能力の回復の指標として,健常成人におけるDASHスコアの平均点が10.10点や,13.0点と報告されていることから,本研究ではDASHスコアが10点以下の症例を対象とした。評価項目は掌背屈,橈尺屈,DTM面,opposite DTM面のROMとし,それぞれ二回ずつ測定し,患側の値を健側の値で除し,健側との比率を求めた。DTM面ROM,opposite DTM面ROMは開発した専用のゴニオメーターで測定した。DTM面ROMは前腕回内45°の肢位で測定し,opposite DTM面ROMは前腕回外45°の肢位にて測定した。統計学的解析は掌背屈,橈尺屈,DTM面,opposite DTM面のROMの患健比を,反復測定一元配置分散分析にて比較した。多重比較にはTukeyの方法を用いた。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は研究倫理委員会の承認(H21-15)を得て行った。被験者に対し研究の説明を行い,同意を得られた者のみデータを採用した。
【結果】DASHスコア2.8±3.8点,掌背屈0.89±0.09%,橈尺屈0.83±0.17%,DTM面ROM0.91±0.06%,opposite DTM面ROM0.80±0.11%であった。多重比較の結果,DTM面ROMとopposite DTM面ROMに有意差が認められた。その他のでは有意差が認められなかった。
【考察】橈骨遠位端骨折後のADL能力が回復した症例において,DTM面ROMとopposite DTM面ROMの患健比に有意差が認められた。橈骨遠位端骨折後ではADL能力に制限がなくてもopposite DTM面ROMの改善が少ないと示された。DTM面の運動は手根中央関節の運動が中心であり,橈骨手根関節の動きは少なくなるため,骨折部にストレスをかけずに手を動かすことができるといわれている。opposite DTMはDTMに直行しており,橈骨手根関節の動きが中心となる。よって,opposite DTM面ROMの改善率が低いことから,橈骨遠位端骨折後は橈骨手根関節のROMの改善が少ないのではないかと示唆された。また,鏡視所見から橈骨手根関節内に隔壁形成が生じて関節拘縮が発生することが報告されている。つまり,橈骨遠位端骨折後は手根中央関節より橈骨手根関節に障害が生じると考えられるため,opposite DTMの運動は困難であると考えられる。よって,DTMの運動でADLにあまり不自由をきたさないといわれていることから,DTM面ROMはopposite DTM面ROMより安全に行え,ADLでも頻回に使用するため,有意に改善していたと考えられる。また,掌背屈と橈尺屈はDTM面,opposite DTM面ROMと有意差は認められなかった。掌背屈と橈尺屈は,手根中央関節と橈骨手根関節の組み合わされた動きである。そのため,手根中央関節の動きが中心のDTMと橈骨手根関節の動きが中心であるopposite DTMの両方のROMと関係しており,有意差が生じなかったと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】橈骨遠位端骨折後は,DTM面ROMに比べopposite DTM面ROMの改善が低いことが示された。DASHスコアは患側だけのADL能力を評価しているわけではなく,opposite DTM面ROMもADLに重要である。よって,早期からopposite DTM面のROMにも着目して理学療法を実施し,opposite DTM面ROMの改善率を増加させる必要があると考えられる。
【方法】対象は,橈骨遠位端骨折後症例12名,平均年齢64.7±9.7歳,男性4名,女性8名であった。骨折型はAO分類type A 3例,typeB 1例,TypeC 8例であり,治療方法は12例とも掌側プレートであった。術後1年以上経過している症例とし,評価時期は受傷後から平均14.3±4.2ヵ月後であった。ADL能力の回復の指標として,健常成人におけるDASHスコアの平均点が10.10点や,13.0点と報告されていることから,本研究ではDASHスコアが10点以下の症例を対象とした。評価項目は掌背屈,橈尺屈,DTM面,opposite DTM面のROMとし,それぞれ二回ずつ測定し,患側の値を健側の値で除し,健側との比率を求めた。DTM面ROM,opposite DTM面ROMは開発した専用のゴニオメーターで測定した。DTM面ROMは前腕回内45°の肢位で測定し,opposite DTM面ROMは前腕回外45°の肢位にて測定した。統計学的解析は掌背屈,橈尺屈,DTM面,opposite DTM面のROMの患健比を,反復測定一元配置分散分析にて比較した。多重比較にはTukeyの方法を用いた。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は研究倫理委員会の承認(H21-15)を得て行った。被験者に対し研究の説明を行い,同意を得られた者のみデータを採用した。
【結果】DASHスコア2.8±3.8点,掌背屈0.89±0.09%,橈尺屈0.83±0.17%,DTM面ROM0.91±0.06%,opposite DTM面ROM0.80±0.11%であった。多重比較の結果,DTM面ROMとopposite DTM面ROMに有意差が認められた。その他のでは有意差が認められなかった。
【考察】橈骨遠位端骨折後のADL能力が回復した症例において,DTM面ROMとopposite DTM面ROMの患健比に有意差が認められた。橈骨遠位端骨折後ではADL能力に制限がなくてもopposite DTM面ROMの改善が少ないと示された。DTM面の運動は手根中央関節の運動が中心であり,橈骨手根関節の動きは少なくなるため,骨折部にストレスをかけずに手を動かすことができるといわれている。opposite DTMはDTMに直行しており,橈骨手根関節の動きが中心となる。よって,opposite DTM面ROMの改善率が低いことから,橈骨遠位端骨折後は橈骨手根関節のROMの改善が少ないのではないかと示唆された。また,鏡視所見から橈骨手根関節内に隔壁形成が生じて関節拘縮が発生することが報告されている。つまり,橈骨遠位端骨折後は手根中央関節より橈骨手根関節に障害が生じると考えられるため,opposite DTMの運動は困難であると考えられる。よって,DTMの運動でADLにあまり不自由をきたさないといわれていることから,DTM面ROMはopposite DTM面ROMより安全に行え,ADLでも頻回に使用するため,有意に改善していたと考えられる。また,掌背屈と橈尺屈はDTM面,opposite DTM面ROMと有意差は認められなかった。掌背屈と橈尺屈は,手根中央関節と橈骨手根関節の組み合わされた動きである。そのため,手根中央関節の動きが中心のDTMと橈骨手根関節の動きが中心であるopposite DTMの両方のROMと関係しており,有意差が生じなかったと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】橈骨遠位端骨折後は,DTM面ROMに比べopposite DTM面ROMの改善が低いことが示された。DASHスコアは患側だけのADL能力を評価しているわけではなく,opposite DTM面ROMもADLに重要である。よって,早期からopposite DTM面のROMにも着目して理学療法を実施し,opposite DTM面ROMの改善率を増加させる必要があると考えられる。