[0981] 変形性股関節症患者のCT画像を用いた筋断面積とCT値の評価
キーワード：変形性股関節症, CT画像, 筋断面積
【はじめに，目的】
変形性股関節症（股OA）患者は,疼痛により日常生活に支障をきたし,活動量が低下する。先行研究では,OA側の下肢は非活動的となることから,廃用性の筋萎縮につながると報告がある。
筋萎縮の評価法にはCTやMRI画像を用いた直接的な計測方法があるが,その中でCT画像は筋断面積とCT値を計測することが可能である。CT値は筋内の脂肪や線維組織といった非収縮組織が増大した場合にはその値が低下し,筋の質を評価することが可能である。このことからCT画像による筋の評価は,量的質的に評価することが可能であり,理学療法の評価法として有用であると考えられる。
CT画像における筋の計測方法は,選択したスライス部位で筋の周囲をマウスで囲み算出したトレース法が用いられる。しかし,この計測方法についての報告は少なく信頼性が十分にある評価であるかは不明である。
本研究の目的はCT画像を用いた筋断面積とCT値の計測について検者内信頼性を検討し,理学療法の評価法として有用であるか検討することである。
【方法】
対象は股OAにて初回THAを目的に当院へ入院した女性20名40肢（平均年齢62歳）である。筋断面積とCT値の計測は,2人の検者が大腿四頭筋,中殿筋,大殿筋をコンピューター画像上でトレース法にて計測した。使用するCT画像は,大腿四頭筋は,左右それぞれの膝蓋骨上から大腿骨長軸方向10cmに最も近いスライス,中殿筋と大殿筋は左右それぞれの上前腸骨棘の高さのスライスとし計3回計測を行った。
検者内信頼性の検討は,計測された筋断面積（mm2）とCT値（Hounsfield unit：HU）の1回目の値と3回の平均値を使用し,級内相関係数（Intraclass correlation coefficient；ICC）（1，1）とICC（1，3）を求め検討した。また,範囲制約性の検討として計測した1回目の値と3回の平均値の標準誤差（standard error：SE）を求めた。
【倫理的配慮，説明と同意】
当院倫理委員会の承認を受け実施した。個人情報法およびプライバシーの保護に関してはヘルシンキ宣言に基づき十分配慮し行った。
【結果】
大腿四頭筋の筋断面積は1回目の計測が3353.2±102.7mm2,3回の計測の平均値が3361±101.4mm2,ICC（1，1）は0.99,ICC（1，3）は0.99であり,CT値は1回目の計測が47.6±1.1HU,3回の計測の平均が47.4±1.1HU,ICC（1，1）は0.99,ICC（1，3）は0.99であった。中殿筋の筋断面積は1回目の計測が2176.7±66.3mm2,3回の計測の平均値が2172.3±64.6mm2,ICC（1，1）は0.98,ICC（1，3）は0.99であり,CT値は1回目の計測が25.1±2.3HU,3回の計測の平均値が25.3±2.2HU,ICC（1，1）は0.99,ICC（1，3）は0.99であった。大殿筋の筋断面積は1回目の計測が2506.3±113.2mm2,3回の計測の平均値が2509.1±113.2mm2,ICC（1，1）は0.99,ICC（1，3）は0.99であり,CT値は1回目の計測は11.8±2.4HU,3回の計測の平均値が11.8±2.4HU,ICC（1，1）は0.97,ICC（1，3）は0.99であった。
【考察】
本研究の結果,CT画像を利用した筋断面積とCT値の計測の検者内信頼性は,大腿四頭筋,中殿筋,大殿筋伴にICC（1，1）と（1，3）はICC＞0.9と高値を示した。ICCの数値は0～1の範囲をとり,1に近づくほど信頼性は高い。ICC（1，1）と（1，3）がどちらも高値な場合には,1人の検者が1回測定すれば十分であるとされている。このことから,CT画像を用いた筋断面積とCT値の計測は1人の患者に対して1人の検者が計測を行えば,1回でも十分に信頼性が高いことが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
股OA患者の理学療法において筋の状態を正しく評価することは重要である。本研究より股OA患者のCT画像を用いた大腿四頭筋,中殿筋,大殿筋の筋断面積とCT値の計測は検者内信頼性が高いことが示された。このことからCT画像を用いた筋断面積とCT値の計測は理学療法の評価法として有用であると考えられる。
変形性股関節症（股OA）患者は,疼痛により日常生活に支障をきたし,活動量が低下する。先行研究では,OA側の下肢は非活動的となることから,廃用性の筋萎縮につながると報告がある。
筋萎縮の評価法にはCTやMRI画像を用いた直接的な計測方法があるが,その中でCT画像は筋断面積とCT値を計測することが可能である。CT値は筋内の脂肪や線維組織といった非収縮組織が増大した場合にはその値が低下し,筋の質を評価することが可能である。このことからCT画像による筋の評価は,量的質的に評価することが可能であり,理学療法の評価法として有用であると考えられる。
CT画像における筋の計測方法は,選択したスライス部位で筋の周囲をマウスで囲み算出したトレース法が用いられる。しかし,この計測方法についての報告は少なく信頼性が十分にある評価であるかは不明である。
本研究の目的はCT画像を用いた筋断面積とCT値の計測について検者内信頼性を検討し,理学療法の評価法として有用であるか検討することである。
【方法】
対象は股OAにて初回THAを目的に当院へ入院した女性20名40肢（平均年齢62歳）である。筋断面積とCT値の計測は,2人の検者が大腿四頭筋,中殿筋,大殿筋をコンピューター画像上でトレース法にて計測した。使用するCT画像は,大腿四頭筋は,左右それぞれの膝蓋骨上から大腿骨長軸方向10cmに最も近いスライス,中殿筋と大殿筋は左右それぞれの上前腸骨棘の高さのスライスとし計3回計測を行った。
検者内信頼性の検討は,計測された筋断面積（mm2）とCT値（Hounsfield unit：HU）の1回目の値と3回の平均値を使用し,級内相関係数（Intraclass correlation coefficient；ICC）（1，1）とICC（1，3）を求め検討した。また,範囲制約性の検討として計測した1回目の値と3回の平均値の標準誤差（standard error：SE）を求めた。
【倫理的配慮，説明と同意】
当院倫理委員会の承認を受け実施した。個人情報法およびプライバシーの保護に関してはヘルシンキ宣言に基づき十分配慮し行った。
【結果】
大腿四頭筋の筋断面積は1回目の計測が3353.2±102.7mm2,3回の計測の平均値が3361±101.4mm2,ICC（1，1）は0.99,ICC（1，3）は0.99であり,CT値は1回目の計測が47.6±1.1HU,3回の計測の平均が47.4±1.1HU,ICC（1，1）は0.99,ICC（1，3）は0.99であった。中殿筋の筋断面積は1回目の計測が2176.7±66.3mm2,3回の計測の平均値が2172.3±64.6mm2,ICC（1，1）は0.98,ICC（1，3）は0.99であり,CT値は1回目の計測が25.1±2.3HU,3回の計測の平均値が25.3±2.2HU,ICC（1，1）は0.99,ICC（1，3）は0.99であった。大殿筋の筋断面積は1回目の計測が2506.3±113.2mm2,3回の計測の平均値が2509.1±113.2mm2,ICC（1，1）は0.99,ICC（1，3）は0.99であり,CT値は1回目の計測は11.8±2.4HU,3回の計測の平均値が11.8±2.4HU,ICC（1，1）は0.97,ICC（1，3）は0.99であった。
【考察】
本研究の結果,CT画像を利用した筋断面積とCT値の計測の検者内信頼性は,大腿四頭筋,中殿筋,大殿筋伴にICC（1，1）と（1，3）はICC＞0.9と高値を示した。ICCの数値は0～1の範囲をとり,1に近づくほど信頼性は高い。ICC（1，1）と（1，3）がどちらも高値な場合には,1人の検者が1回測定すれば十分であるとされている。このことから,CT画像を用いた筋断面積とCT値の計測は1人の患者に対して1人の検者が計測を行えば,1回でも十分に信頼性が高いことが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
股OA患者の理学療法において筋の状態を正しく評価することは重要である。本研究より股OA患者のCT画像を用いた大腿四頭筋,中殿筋,大殿筋の筋断面積とCT値の計測は検者内信頼性が高いことが示された。このことからCT画像を用いた筋断面積とCT値の計測は理学療法の評価法として有用であると考えられる。