[1004] ソフトボールチームに所属する小学生の投能力と身体機能の関連
キーワード:ソフトボールチーム, 投能力, メディカルチェック
【はじめに,目的】
SSF笹川スポーツ財団(2006)の報告によれば,ソフトボール人口は,560万人を超え屋外競技において,サッカー・野球に続く人気競技といえる。その人気の一方で,障害予防の取り組みから見ると,少年ソフトボールのメディカルチェックの普及は,指導者不足も含め遅れていることが安易に推測される。しかし,競技特性から見ると,ソフトボールは野球と比べ,使用球は大きく塁間が短いため捕球から投げるまで俊敏性が要求され,投能力の負担が大きいと考えられる。
そこで今回,ソフトボールチームに所属する小学生の投能力を測定し,身体機能との関連性を検討したので報告する。
【方法】
対象は,明石市内のソフトボールチームに所属する小学生20名(男性18名,女性2名),平均年齢9.6±2歳,身長133.2±12.3cm,体重30.4±8kgとした。
測定項目は,投能力として遠投距離,投球速度,身体機能の指標として関節可動域測定,筋力検査,Spine Scapula Distance(以下SSD),柔軟性を測定した。
具体的な方法は,投能力は遠投距離,投球速度を測定した。遠投距離は,ソフトボール2号を使用して投擲を2回行った。投球速度はメーカー(SPEED STER,Bushnell社)を使用し,5m先に設置した防球ネットに向けてオーバースローの全力投球5球行った。
関節可動域測定は,肩関節内旋(2nd)・外旋(2nd),外転,水平内転,肘関節屈曲・伸展・回内・回外,体幹回旋,股関節内旋・外旋の角度を測定した。股関節回旋可動域は腹臥位で測定した。原テストのタイトネス評価をもとに,肩甲上腕関節の外転角度をcombined abduction test(以下CAT),肩甲上腕関節での水平内転はhorizontal flexion test(以下HFT)の方法で角度を測定した。SSDは,脊椎から肩甲骨内側縁の距離を計測した。
筋力検査は,徒手筋力計(μTasF1,ANIMA社)を使用し,肩関節外旋・内旋・外転・肩甲帯下制内転を各2回ずつ測定した。肩関節内外旋筋力の測定は,知念らの方法で,ベルト使用下で行った。握力は,立位で握力計を体幹に触れさせないで握り2回ずつ行った。
柔軟性はFinger floor distance(以下FFD)を行った。いずれの検査も最大値を記録した。
統計処理は,SPSS11Jを用い,相関係数の検定はPearsonの検定,各検査の投球側と非投球側の比較には対応のあるT検定で比較した。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象には本研究の趣旨を説明し,ヘルシンキ宣言に基づく論理的配慮を十分に行い,実施した。
【結果】
投能力と身長,年齢,体重に相関r=0.80~0.89(p<0.01),投能力とすべての筋力において相関r=0.67~0.92(p<0.01)がみられた。関節可動域では,遠投距離とCATに相関r=0.40(p<0.05),HFTに負の相関r=-0.53(p<0.05)がみられた。投球速度とCATに相関r=0.41(p<0.05),HFTに負の相関r=-0.51(p<0.05)がみられた。投能力と,FFDには相関はみられなかった。
各検査の投球側と非投球側との差を比較した検討では,SSDは投球側が低値(p<0.05)であった。関節可動域測定では,肩関節内旋の投球側が顕著に低値(p<0.01)で,股関節では非投球側が顕著に低値(p<0.01)であった。筋力は,肩甲帯下制で投球側に高い値(p<0.05)を認めた。
【考察】
本研究の結果,投能力と筋力,年齢,身長,体重に高い相関があった。投球速度は,年齢経過(7~18歳)に伴い増加するという報告や,筋力との間に相関が認められたという先行研究と同様の結果であった。
また投球側と非投球側の検討では,SSDの投球側が内転位であった。投球障害肩の肩甲骨は外側上方の偏位が多いと報告されており,投能力とのつながりがみられなかった。関節可動域は投球側の内旋角度が減少していた。肩関節外旋筋群は投球の減速期からフォロースルー期にかけて遠心性収縮し疲労が生じやすいとされている。投球数が増えると肩関節後方構成体の負担が増大し緊張が高くなり,制限を引き起こしていることが推測された。
非投球側の股関節内旋制限は,骨盤回旋運動を制限し,代償的に体幹回旋運動や肩関節水平屈曲運動を強めて肩関節過度な外旋運動を誘発するといわれており,今後アプローチする必要性が再認識された。
【理学療法学研究としての意義】
今回の研究結果から小学生ソフトボールチームの投能力と身体機能の関連性が確認された。今後,メディカルチェックを継続し,自主練習の指導を行うことで,障害予防につなげていく。
SSF笹川スポーツ財団(2006)の報告によれば,ソフトボール人口は,560万人を超え屋外競技において,サッカー・野球に続く人気競技といえる。その人気の一方で,障害予防の取り組みから見ると,少年ソフトボールのメディカルチェックの普及は,指導者不足も含め遅れていることが安易に推測される。しかし,競技特性から見ると,ソフトボールは野球と比べ,使用球は大きく塁間が短いため捕球から投げるまで俊敏性が要求され,投能力の負担が大きいと考えられる。
そこで今回,ソフトボールチームに所属する小学生の投能力を測定し,身体機能との関連性を検討したので報告する。
【方法】
対象は,明石市内のソフトボールチームに所属する小学生20名(男性18名,女性2名),平均年齢9.6±2歳,身長133.2±12.3cm,体重30.4±8kgとした。
測定項目は,投能力として遠投距離,投球速度,身体機能の指標として関節可動域測定,筋力検査,Spine Scapula Distance(以下SSD),柔軟性を測定した。
具体的な方法は,投能力は遠投距離,投球速度を測定した。遠投距離は,ソフトボール2号を使用して投擲を2回行った。投球速度はメーカー(SPEED STER,Bushnell社)を使用し,5m先に設置した防球ネットに向けてオーバースローの全力投球5球行った。
関節可動域測定は,肩関節内旋(2nd)・外旋(2nd),外転,水平内転,肘関節屈曲・伸展・回内・回外,体幹回旋,股関節内旋・外旋の角度を測定した。股関節回旋可動域は腹臥位で測定した。原テストのタイトネス評価をもとに,肩甲上腕関節の外転角度をcombined abduction test(以下CAT),肩甲上腕関節での水平内転はhorizontal flexion test(以下HFT)の方法で角度を測定した。SSDは,脊椎から肩甲骨内側縁の距離を計測した。
筋力検査は,徒手筋力計(μTasF1,ANIMA社)を使用し,肩関節外旋・内旋・外転・肩甲帯下制内転を各2回ずつ測定した。肩関節内外旋筋力の測定は,知念らの方法で,ベルト使用下で行った。握力は,立位で握力計を体幹に触れさせないで握り2回ずつ行った。
柔軟性はFinger floor distance(以下FFD)を行った。いずれの検査も最大値を記録した。
統計処理は,SPSS11Jを用い,相関係数の検定はPearsonの検定,各検査の投球側と非投球側の比較には対応のあるT検定で比較した。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象には本研究の趣旨を説明し,ヘルシンキ宣言に基づく論理的配慮を十分に行い,実施した。
【結果】
投能力と身長,年齢,体重に相関r=0.80~0.89(p<0.01),投能力とすべての筋力において相関r=0.67~0.92(p<0.01)がみられた。関節可動域では,遠投距離とCATに相関r=0.40(p<0.05),HFTに負の相関r=-0.53(p<0.05)がみられた。投球速度とCATに相関r=0.41(p<0.05),HFTに負の相関r=-0.51(p<0.05)がみられた。投能力と,FFDには相関はみられなかった。
各検査の投球側と非投球側との差を比較した検討では,SSDは投球側が低値(p<0.05)であった。関節可動域測定では,肩関節内旋の投球側が顕著に低値(p<0.01)で,股関節では非投球側が顕著に低値(p<0.01)であった。筋力は,肩甲帯下制で投球側に高い値(p<0.05)を認めた。
【考察】
本研究の結果,投能力と筋力,年齢,身長,体重に高い相関があった。投球速度は,年齢経過(7~18歳)に伴い増加するという報告や,筋力との間に相関が認められたという先行研究と同様の結果であった。
また投球側と非投球側の検討では,SSDの投球側が内転位であった。投球障害肩の肩甲骨は外側上方の偏位が多いと報告されており,投能力とのつながりがみられなかった。関節可動域は投球側の内旋角度が減少していた。肩関節外旋筋群は投球の減速期からフォロースルー期にかけて遠心性収縮し疲労が生じやすいとされている。投球数が増えると肩関節後方構成体の負担が増大し緊張が高くなり,制限を引き起こしていることが推測された。
非投球側の股関節内旋制限は,骨盤回旋運動を制限し,代償的に体幹回旋運動や肩関節水平屈曲運動を強めて肩関節過度な外旋運動を誘発するといわれており,今後アプローチする必要性が再認識された。
【理学療法学研究としての意義】
今回の研究結果から小学生ソフトボールチームの投能力と身体機能の関連性が確認された。今後,メディカルチェックを継続し,自主練習の指導を行うことで,障害予防につなげていく。