[1020] 遠隔システムによる在宅者に対する運動指導のための運動評価項目の検討
Keywords:高齢者, 粗大運動機能評価, 筋力評価
【はじめに,目的】我々理学療法士は高齢者の運動機能の維持・向上のため,種々の取り組みを行っている。衣笠らは,低体力高齢者に6ヶ月間の運動指導を行うことで歩行能力の向上が見られたが,直接的な運動指導を中止したらその効果は3ヶ月持続しなかったことから,教室では運動するが自宅では積極的に運動しないことが問題であると提起している。このように様々な教室が実施されている一方で,その教室への不参加者の問題もある。吉田は,教室参加者と不参加者の膝伸展筋力と最大歩行速度を検討し,男女とも,不参加者は参加者に比べ身体機能が低いことを報告している。以上のことから,身体機能の低下している教室不参加者への運動指導が必要であると考えられる。そこで今回我々は,在宅での運動介入・指導のために,Webによる通信システムを用いて即時的に運動評価・指導を行う遠隔計測システムによる運動評価項目について検討を行ったので報告する。
【方法】対象は,高齢者59名(男性:26名,平均年齢73.8±3.3歳/女性:33名,平均年齢74.3±7.3歳)および若年者81名(男性:44名,平均年齢20.9±0.9歳/女性:37名,平均年齢20.6±1.0歳)とした。運動の計測項目は,椅子からの立ち上がり時の腸骨上昇最大速度と膝関節伸展最大角速度,つま先立ち回数,8の字歩行,ファンクショナルリーチ,豆運び成功回数,連続上腕屈伸回数とした。椅子からの立ち上がりは,下腿長に合わせた高さの椅子から1m前のランプの点灯を合図に素早く立ち上がりを行わせた。つま先立ち回数は自然立位において,10秒間の間素早くつま先立ちを繰り返し行わせその回数を測定した。どちらの動作も,Corega社製ネットワークカメラCG-WLNCPTGLおよび動画キャプチャーソフトNC-Monitorを用いて計測した。その他の項目は,重松等の方法に沿って実施した。得られた結果から,多母集団構造方程式モデリング(多母集団SEM)を用いて運動計測予測モデルを検討した。モデルの設定にあたり,連続上腕屈伸とつま先立ち回数という2つの観測変数から1つの潜在変数を導き「筋力」と呼び,8の字歩行とファンクショナルリーチという観測変数からまた別の潜在変数を導き「巧緻性」として扱うことにし,「筋力」が「巧緻性」を予測するというモデルを想定した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は独)国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会にて承認されており,対象者へは本研究の主旨を説明し,同意を得た。
【結果】SEM解析により得られた運動計測予測モデルにおける高齢・若年両群のデータとモデルは,χ2(2)=.433,p=.805,GFI=.998,AGFI=.984,CFI=1.000,RMSEA=.000と,適合が良いという結果であり,潜在変数間のパスは高齢群と若年群とで有意な差がなかった(z=-.247,ns.)。運動計測モデルでは,高齢者(β=.80,p<.01)も若年者(β=.94,p<.01)も同様に,連続上腕屈伸回数とつま先立ち回数という「筋力」が,8の字歩行とファンクショナルリーチという「巧緻性」をよく予測しているという結果を示していた。
【考察】今回我々は,在宅で実施可能な遠隔計測システムを模擬した運動評価方法を検討した。通信型の運動評価では,在宅で実施可能である反面,情報量が限られるという問題があるため,安全,簡便で効率的な評価と指導の実施が求められている。今回実施した,筋力を表すつま先立ちと連続上腕屈伸は,移動を伴わずカメラの前で安全に実施できることから,遠隔による運動機能評価実施に適していると考えられる。また,その評価結果が椅子から立ち上がってコーンを回って座る動作を繰り返す8の字歩行と,倒れないようにバランスを取りながら前方へ手を伸ばすファンクショナルリーチという,巧みな動作を予測することが確認された。今回の結果から,遠隔計測システムによる運動評価項目として,移動を伴わず安全に実施可能な評価手段であり,筋力を示す代表値であるつま先立ち,連側上腕屈伸が,移動能力・バランス能力を含む巧みな運動能力を評価する運動課題として適当であることが確認された。これにより,移動能力を含む運動機能の変化を遠隔システムにて安全,簡便で効率的に評価することが可能となると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】積極的に教室へ参加しない方や参加したくてもできない方に対し,安全,簡便に適切な運動評価と指導が行え,運動教室終了後でも自宅での運動継続状況を把握し,継続的な運動指導を実施するプロトコル開発の見通しを得た。
【方法】対象は,高齢者59名(男性:26名,平均年齢73.8±3.3歳/女性:33名,平均年齢74.3±7.3歳)および若年者81名(男性:44名,平均年齢20.9±0.9歳/女性:37名,平均年齢20.6±1.0歳)とした。運動の計測項目は,椅子からの立ち上がり時の腸骨上昇最大速度と膝関節伸展最大角速度,つま先立ち回数,8の字歩行,ファンクショナルリーチ,豆運び成功回数,連続上腕屈伸回数とした。椅子からの立ち上がりは,下腿長に合わせた高さの椅子から1m前のランプの点灯を合図に素早く立ち上がりを行わせた。つま先立ち回数は自然立位において,10秒間の間素早くつま先立ちを繰り返し行わせその回数を測定した。どちらの動作も,Corega社製ネットワークカメラCG-WLNCPTGLおよび動画キャプチャーソフトNC-Monitorを用いて計測した。その他の項目は,重松等の方法に沿って実施した。得られた結果から,多母集団構造方程式モデリング(多母集団SEM)を用いて運動計測予測モデルを検討した。モデルの設定にあたり,連続上腕屈伸とつま先立ち回数という2つの観測変数から1つの潜在変数を導き「筋力」と呼び,8の字歩行とファンクショナルリーチという観測変数からまた別の潜在変数を導き「巧緻性」として扱うことにし,「筋力」が「巧緻性」を予測するというモデルを想定した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は独)国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会にて承認されており,対象者へは本研究の主旨を説明し,同意を得た。
【結果】SEM解析により得られた運動計測予測モデルにおける高齢・若年両群のデータとモデルは,χ2(2)=.433,p=.805,GFI=.998,AGFI=.984,CFI=1.000,RMSEA=.000と,適合が良いという結果であり,潜在変数間のパスは高齢群と若年群とで有意な差がなかった(z=-.247,ns.)。運動計測モデルでは,高齢者(β=.80,p<.01)も若年者(β=.94,p<.01)も同様に,連続上腕屈伸回数とつま先立ち回数という「筋力」が,8の字歩行とファンクショナルリーチという「巧緻性」をよく予測しているという結果を示していた。
【考察】今回我々は,在宅で実施可能な遠隔計測システムを模擬した運動評価方法を検討した。通信型の運動評価では,在宅で実施可能である反面,情報量が限られるという問題があるため,安全,簡便で効率的な評価と指導の実施が求められている。今回実施した,筋力を表すつま先立ちと連続上腕屈伸は,移動を伴わずカメラの前で安全に実施できることから,遠隔による運動機能評価実施に適していると考えられる。また,その評価結果が椅子から立ち上がってコーンを回って座る動作を繰り返す8の字歩行と,倒れないようにバランスを取りながら前方へ手を伸ばすファンクショナルリーチという,巧みな動作を予測することが確認された。今回の結果から,遠隔計測システムによる運動評価項目として,移動を伴わず安全に実施可能な評価手段であり,筋力を示す代表値であるつま先立ち,連側上腕屈伸が,移動能力・バランス能力を含む巧みな運動能力を評価する運動課題として適当であることが確認された。これにより,移動能力を含む運動機能の変化を遠隔システムにて安全,簡便で効率的に評価することが可能となると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】積極的に教室へ参加しない方や参加したくてもできない方に対し,安全,簡便に適切な運動評価と指導が行え,運動教室終了後でも自宅での運動継続状況を把握し,継続的な運動指導を実施するプロトコル開発の見通しを得た。