[1055] 極低出生体重児における修正3ヵ月の行動と発達予後の関係
キーワード:乳児早期, 行動, 発達
【目的】早産・低出生体重児の発達予後は芳しくなく,本邦における2003~2007年出生の極低出生体重児(1500g未満出生)の3歳時発達予後は,脳性麻痺8.2%,精神運動発達遅滞16.0%であった(河野ら,2013)。新生児期から早産・低出生体重児に理学療法士らが介入し,自発運動(General Movements;GMs)評価の発達評価を導入する機会が増えている。GMs評価は発達予後予測に有効である(Prechtl HFR et al,1990/1997)が,GMs評価では発達障害の障害別の予後予測は困難である。そこで我々は,極低出生体重児における新生児期の各行動を観察し,5歳6ヵ月時の発達との関係を検討し,第48回日本理学療法学術大会で報告した。新生児期の行動から正常・脳性麻痺・その他の発達障害を予測できる可能性を示した。今回,修正3ヵ月頃の乳児早期の各行動を観察し,5歳6ヵ月時の発達との関係を検討した。
【方法】対象は2002年7月から2007年11月に当院へ入院した極低出生体重児416名中,修正49週0日から修正60週6日(修正3ヵ月頃:乳児早期)にGMs評価を行い,5歳6ヵ月検診を受診した78名とした。同時期のGMs評価は入院中のGMs評価でPoor Repertoire GMsと判定された児が対象となった。対象児の性別は男児28名・女児50名,平均在胎週数は28週1±22日(23週0日~36週1日),平均出生体重は940±298g(492~1498g)であった。乳児早期の発達評価では,自発運動をビデオ録画し,細分化した各行動の有無を3名の理学療法士が観察した。自発運動のビデオ録画では,覚醒睡眠レベル(state)3・4の児を約10分間録画し,最も活発に動いている1-2分間を選定した。観察した行動は,早産・極低出生体重児でよく観察される安定化・ストレス行動,Dubowitz評価の異常徴候等から53パターンとした。各行動で片方または両側,1分間のうち計30秒以上,2回以上観察されるといった観察基準を設けた。5歳6ヵ月検診では,新生児科医師の診察と知能検査(WISC-IIIまたは田中ビネー)を実施し,発達予後が確認された。発達障害リスク児は神経科医師に紹介された。知能検査の結果から知能指数80以上を正常,70から79を境界,69以下を遅滞とした。知能検査の結果も踏まえ,発達予後は正常(N),境界・遅滞(MR),広汎性発達障害(PDD),脳性麻痺(CP)とした。本研究はRetrospective studyで,二項ロジスティック回帰分析を用い,危険率5%以下を統計学的有意とし,各発達予後に関係ある行動を検定した。
【倫理的配慮】本研究は当院の倫理委員会承認(25-1)のもと実施した。対象児の保護者にはフォローアップについての説明および情報の取り扱いについて,紙面および口頭にて説明し同意を得て実施した。
【結果】対象児の発達予後は,N35名,MR19名,PDD16名,CP8名であった。発達予後別の平均在胎週数は,Nで28週5±17日,MRで28週0±31日,PDDで27週4±19日,CPで26週4±18日,平均体重は,Nで1037±281g,MRで819±288g,PDDで911±273g,CPで862±333gであった。乳児早期の各行動は,Nでは頭部回旋(p<0.001),頭部正中位保持(p=0.003),上肢屈曲位での前腕回内外(p=0.015),上肢伸展位での前腕回内外(p=0.014),手関節掌背屈(p=0.040),手関節回旋(p<0.001),下肢屈曲拳上位(p=0.021),下肢屈曲拳上(p=0.006),下肢屈曲位での足関節底背屈(p=0.014),下肢伸展位での足関節底背屈(p=0.012),下肢屈曲位での股関節内外旋(p=0.008),足趾分離屈伸(p<0.001),手をしゃぶる(p=0.006),服をつかむ(p=0.010)が有意に観察された。MRでは有意に観察された行動パターンはなかった。PDDではATNR(p=0.045),母指内転位(p=0.013),足趾把握位(p=0.022)が有意に観察された。CPでは頸部伸展位(p=0.016),全身反り返り(p=0.016),ATNR(p<0.001),全身力む(p=0.003),下肢伸展位での足関節底屈位(p<0.001),母趾背屈位(p=0.006),足趾把握位(p=0.009),下肢のキッキング反復(p=0.007),1肢振戦(p=0.026)が有意に観察された。
【考察】極低出生体重児における修正3ヵ月頃の乳児早期の行動と発達予後の関係性が認められた。乳児早期のNは正中位指向・末梢の分離運動,PDDは反射残存・末梢緊張,CPは反射残存・行動反復・振戦・全身緊張が観察されやすく,MRは行動に主たる特徴がなかった。この時期は正常・各発達障害が判別できる可能性が示された。
【理学療法学研究としての意義】新生児・乳児早期の理学療法は対象児の将来像が不明確なまま介入していることが多い。乳児早期の行動から発達予後を予測でき,促したい行動が明確になることで,より適切な支援が行える。
【方法】対象は2002年7月から2007年11月に当院へ入院した極低出生体重児416名中,修正49週0日から修正60週6日(修正3ヵ月頃:乳児早期)にGMs評価を行い,5歳6ヵ月検診を受診した78名とした。同時期のGMs評価は入院中のGMs評価でPoor Repertoire GMsと判定された児が対象となった。対象児の性別は男児28名・女児50名,平均在胎週数は28週1±22日(23週0日~36週1日),平均出生体重は940±298g(492~1498g)であった。乳児早期の発達評価では,自発運動をビデオ録画し,細分化した各行動の有無を3名の理学療法士が観察した。自発運動のビデオ録画では,覚醒睡眠レベル(state)3・4の児を約10分間録画し,最も活発に動いている1-2分間を選定した。観察した行動は,早産・極低出生体重児でよく観察される安定化・ストレス行動,Dubowitz評価の異常徴候等から53パターンとした。各行動で片方または両側,1分間のうち計30秒以上,2回以上観察されるといった観察基準を設けた。5歳6ヵ月検診では,新生児科医師の診察と知能検査(WISC-IIIまたは田中ビネー)を実施し,発達予後が確認された。発達障害リスク児は神経科医師に紹介された。知能検査の結果から知能指数80以上を正常,70から79を境界,69以下を遅滞とした。知能検査の結果も踏まえ,発達予後は正常(N),境界・遅滞(MR),広汎性発達障害(PDD),脳性麻痺(CP)とした。本研究はRetrospective studyで,二項ロジスティック回帰分析を用い,危険率5%以下を統計学的有意とし,各発達予後に関係ある行動を検定した。
【倫理的配慮】本研究は当院の倫理委員会承認(25-1)のもと実施した。対象児の保護者にはフォローアップについての説明および情報の取り扱いについて,紙面および口頭にて説明し同意を得て実施した。
【結果】対象児の発達予後は,N35名,MR19名,PDD16名,CP8名であった。発達予後別の平均在胎週数は,Nで28週5±17日,MRで28週0±31日,PDDで27週4±19日,CPで26週4±18日,平均体重は,Nで1037±281g,MRで819±288g,PDDで911±273g,CPで862±333gであった。乳児早期の各行動は,Nでは頭部回旋(p<0.001),頭部正中位保持(p=0.003),上肢屈曲位での前腕回内外(p=0.015),上肢伸展位での前腕回内外(p=0.014),手関節掌背屈(p=0.040),手関節回旋(p<0.001),下肢屈曲拳上位(p=0.021),下肢屈曲拳上(p=0.006),下肢屈曲位での足関節底背屈(p=0.014),下肢伸展位での足関節底背屈(p=0.012),下肢屈曲位での股関節内外旋(p=0.008),足趾分離屈伸(p<0.001),手をしゃぶる(p=0.006),服をつかむ(p=0.010)が有意に観察された。MRでは有意に観察された行動パターンはなかった。PDDではATNR(p=0.045),母指内転位(p=0.013),足趾把握位(p=0.022)が有意に観察された。CPでは頸部伸展位(p=0.016),全身反り返り(p=0.016),ATNR(p<0.001),全身力む(p=0.003),下肢伸展位での足関節底屈位(p<0.001),母趾背屈位(p=0.006),足趾把握位(p=0.009),下肢のキッキング反復(p=0.007),1肢振戦(p=0.026)が有意に観察された。
【考察】極低出生体重児における修正3ヵ月頃の乳児早期の行動と発達予後の関係性が認められた。乳児早期のNは正中位指向・末梢の分離運動,PDDは反射残存・末梢緊張,CPは反射残存・行動反復・振戦・全身緊張が観察されやすく,MRは行動に主たる特徴がなかった。この時期は正常・各発達障害が判別できる可能性が示された。
【理学療法学研究としての意義】新生児・乳児早期の理学療法は対象児の将来像が不明確なまま介入していることが多い。乳児早期の行動から発達予後を予測でき,促したい行動が明確になることで,より適切な支援が行える。