[1099] 座位FRT測定条件による体格指標の影響と筋出力特性の検討
Keywords:座位FRT, 体格指標, 筋電図
【はじめに,目的】座位FRTは上肢の前方リーチによる支持基底面内での体重心制御能を評価するもので,その有用性は先行研究において報告されているが,身長や上肢長などの体格から受ける影響については言及されていない。今回,先行研究の測定条件として用いられている足底接地(接地),足底非接地(非接地)の2つの測定条件下での体格の影響と測定条件間の筋出力特性を筋電図により検討したので報告する。
【方法】<対象>整形外科的疾患を有さない右利きの健常成人男性10名で,平均年齢は23.1±3.6歳であった。<体格指標測定>身長,上肢長,大腿長および座高長(肩峰から座面までの長さ)を測定した。<座位前方リーチ距離測定>台面の高低が調節可能な斜面台上で体幹正中位,股,膝関節90°屈曲位で端坐位となり,測定肢として選択した右上肢を肩関節90°屈曲位,肘関節伸展,前腕および手関節中間位で手指を伸展させ,高さ調整が可能なサイドテーブルを第3指遠位端の高さと一致させた。テーブル上にはメジャーを置き,開始の合図によりできる限り上肢を前方に伸ばすように指示し,前方リーチ距離(リーチ距離)を測定した。測定は接地,非接地の2条件で行い,開始から終了までは5秒以内とした。測定はそれぞれ3回行い,3回の平均値を算出した。また,各測定条件でのリーチ距離の再現性を検討するため1週間後に同様なリーチ方法にて測定した。<筋電図測定>筋活動電位の取り込みは表面電極を用いた筋電計(Noraxon社製マイオシステム1200)を使用し,サンプリング周波数は1000Hzとした。測定筋は左右の脊柱起立筋,右内側広筋および右腓腹筋内側頭で,被験者間の筋活動量の比較を行うため,5秒間それぞれの測定筋に対して等尺性最大随意収縮を行わせ,最大となる1秒間あたりの筋活動電位を最大随意収縮(MVC)として算出した。また,リーチ距離測定の開始から終了までの測定筋筋活動から測定区間内で最大となる1秒間あたりの筋活動電位を抽出し,MVCを基に正規化して%MVCを求め,それぞれ3回の平均値を算出した。<統計学的解析>接地と非接地のリーチ距離および各%MVCの比較は対応のあるt検定を用い,接地と非接地それぞれのリーチ距離と身長,上肢長,大腿長,座高長および各%MVCとの関連性はPeasonの相関係数を用いた。また,リーチ距離の再現性は級内相関係数(ICC)使用して分析した。統計ソフトはSPSSを使用し,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者には研究の趣旨と内容,得られたデーターは研究以外の目的に使用しないことなど個人情報の保護に留意することを説明し,同意を得た。
【結果】リーチ距離は接地(47.5±5.0cm)が非接地(40.8±5.4cm)と比較して有意に長く(P<0.05),測定筋の%MVCは左右の脊柱起立筋においてのみ接地(右24.5±11.4% 左25.0±10.6%)が非接地(右18.5±11.6% 左20.3±10.3%)と比較して有意に大きいことが示された(P<0.05)。測定条件によるリーチ距離と身長,上肢長,大腿長,座高長との関連性は,非接地は身長および座高長と相関が認められたが(それぞれr=0.84 r=0.71 P<0.05),接地では相関が認められなかった。また,リーチ距離と各測定筋の%MVCは接地および非接地ともに相関が認められなかった。各測定条件によるリーチ距離の再現性を示すICCは接地,非接地それぞれ0.78(sem2.3)0.92(sem1.6)で非接地が高かった。
【考察】今回,それぞれの測定条件でのリーチ距離は接地が有意に長いことが示されたが,非接地と比較して接地は支持基底面が拡大されることにより安定性の向上が図られてリーチ動作での体幹前傾が増大した結果と考えられ,体幹前傾に対して体幹を安定させる作用として働く左右脊柱起立筋の活動量が接地において非接地より高かったことからも伺える。また,リーチ距離と体格指標との関連性において,身長と座高長は非接地と相関が認められたが接地とでは相関が無く,接地でのリーチ距離は今回採用した指標とは異なる要因から影響を受ける可能性がある。足部での支持を有する接地条件は支持基底面が広いことにより安定性の向上が図られ,リーチ動作戦略に多様性が生じて体格指標との関連性が無かったと考えられる。一方,非接地は不安定な条件下でのリーチ動作となり,動作戦略の限定化が生じたため体格指標との関連性が示されたと推測され,限定された動作戦略は非接地の再現性の高さにも反映されていると考える。
【理学療法学研究としての意義】姿勢制御能評価から予後を予測するには,より妥当性および信頼性の高い評価指標の使用が望まれる。今回の検討では座位FRTの非接地では体格指数による正規化の必要性が示され,評価指標としての精度向上に寄与する。
【方法】<対象>整形外科的疾患を有さない右利きの健常成人男性10名で,平均年齢は23.1±3.6歳であった。<体格指標測定>身長,上肢長,大腿長および座高長(肩峰から座面までの長さ)を測定した。<座位前方リーチ距離測定>台面の高低が調節可能な斜面台上で体幹正中位,股,膝関節90°屈曲位で端坐位となり,測定肢として選択した右上肢を肩関節90°屈曲位,肘関節伸展,前腕および手関節中間位で手指を伸展させ,高さ調整が可能なサイドテーブルを第3指遠位端の高さと一致させた。テーブル上にはメジャーを置き,開始の合図によりできる限り上肢を前方に伸ばすように指示し,前方リーチ距離(リーチ距離)を測定した。測定は接地,非接地の2条件で行い,開始から終了までは5秒以内とした。測定はそれぞれ3回行い,3回の平均値を算出した。また,各測定条件でのリーチ距離の再現性を検討するため1週間後に同様なリーチ方法にて測定した。<筋電図測定>筋活動電位の取り込みは表面電極を用いた筋電計(Noraxon社製マイオシステム1200)を使用し,サンプリング周波数は1000Hzとした。測定筋は左右の脊柱起立筋,右内側広筋および右腓腹筋内側頭で,被験者間の筋活動量の比較を行うため,5秒間それぞれの測定筋に対して等尺性最大随意収縮を行わせ,最大となる1秒間あたりの筋活動電位を最大随意収縮(MVC)として算出した。また,リーチ距離測定の開始から終了までの測定筋筋活動から測定区間内で最大となる1秒間あたりの筋活動電位を抽出し,MVCを基に正規化して%MVCを求め,それぞれ3回の平均値を算出した。<統計学的解析>接地と非接地のリーチ距離および各%MVCの比較は対応のあるt検定を用い,接地と非接地それぞれのリーチ距離と身長,上肢長,大腿長,座高長および各%MVCとの関連性はPeasonの相関係数を用いた。また,リーチ距離の再現性は級内相関係数(ICC)使用して分析した。統計ソフトはSPSSを使用し,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者には研究の趣旨と内容,得られたデーターは研究以外の目的に使用しないことなど個人情報の保護に留意することを説明し,同意を得た。
【結果】リーチ距離は接地(47.5±5.0cm)が非接地(40.8±5.4cm)と比較して有意に長く(P<0.05),測定筋の%MVCは左右の脊柱起立筋においてのみ接地(右24.5±11.4% 左25.0±10.6%)が非接地(右18.5±11.6% 左20.3±10.3%)と比較して有意に大きいことが示された(P<0.05)。測定条件によるリーチ距離と身長,上肢長,大腿長,座高長との関連性は,非接地は身長および座高長と相関が認められたが(それぞれr=0.84 r=0.71 P<0.05),接地では相関が認められなかった。また,リーチ距離と各測定筋の%MVCは接地および非接地ともに相関が認められなかった。各測定条件によるリーチ距離の再現性を示すICCは接地,非接地それぞれ0.78(sem2.3)0.92(sem1.6)で非接地が高かった。
【考察】今回,それぞれの測定条件でのリーチ距離は接地が有意に長いことが示されたが,非接地と比較して接地は支持基底面が拡大されることにより安定性の向上が図られてリーチ動作での体幹前傾が増大した結果と考えられ,体幹前傾に対して体幹を安定させる作用として働く左右脊柱起立筋の活動量が接地において非接地より高かったことからも伺える。また,リーチ距離と体格指標との関連性において,身長と座高長は非接地と相関が認められたが接地とでは相関が無く,接地でのリーチ距離は今回採用した指標とは異なる要因から影響を受ける可能性がある。足部での支持を有する接地条件は支持基底面が広いことにより安定性の向上が図られ,リーチ動作戦略に多様性が生じて体格指標との関連性が無かったと考えられる。一方,非接地は不安定な条件下でのリーチ動作となり,動作戦略の限定化が生じたため体格指標との関連性が示されたと推測され,限定された動作戦略は非接地の再現性の高さにも反映されていると考える。
【理学療法学研究としての意義】姿勢制御能評価から予後を予測するには,より妥当性および信頼性の高い評価指標の使用が望まれる。今回の検討では座位FRTの非接地では体格指数による正規化の必要性が示され,評価指標としての精度向上に寄与する。